風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

鬼灯

2013-10-31 | 風屋日記



月隠れ 鬼灯照らす 夜道哉


※写真は知人からの借り物です。
 あまりにもいい写真だったので
 お願いして使わせてもらいました。
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ジャズの思い出

2013-10-30 | 音楽
高校2年の時期だと
授業終了と同時に同級生のほとんどが部活へ行く。
少なくともウチの高校は、というか周囲の仲間たちはそうだった。
みんなそれぞれ運動部でも文化部でも。
そうでなければ生徒会や応援団幹部などの活動をしていた。
そんな中、ワタシはひとりでいつもの本屋へ出掛ける。

最後には文庫本の1冊や2冊は買って帰るのだが、
到着最初の目的はレコードコーナー。
好きだったニューミュージック系のアーティストのアルバムを眺める。
元はっぴいえんどの方々、シュガーベイブの方々、
デビューしたばかりの庄野真代さん、渡辺真知子さん。
そして勉強し始めたばかりのJAZZレコードも1枚1枚見ていく。
(「吹奏楽部に入れば良かったかな」と思ったのもこの頃 笑)
マイルス、パーカー、コルトレーン、エバンス、パウエル・・・
チャーリー・ミンガスやセロニアス・モンクにも興味があった。
が、当時のLPレコードは2200円。高校生の1ヶ月分の小遣いだ。
そんなに買えるわけじゃない。
ってことで、たまに店でかけてもらうこともあるけれど
まずはジャケットを眺め、アルバムタイトルや曲名を覚えた。
あとでラジオか何かで流れた時に理解するため。
初めて買ったのはマイルスの「My Funny Valentine」だったな。

そのうちにJAZZ喫茶に出入りするようになり、曲も実際に聴いて
自分の好みもわかってくる。
最初はキバってモダンジャズやビーバップなども聴いていたが
あまりにも難解で(音楽というより哲学や科学)すぐ諦めた。
傾倒していったのはボーカルものやトリオの4ビート。
高3の頃は秋吉敏子のラグタイムなどもよく聴いた。
ケニー・バレルやジム・ホールのギター(特に「アランフェス」)、
ビル・エバンスのピアノ、ミルト・ジャクソンのビブラホン。
ボーカルではエラ・フィッツジェラルドにロバータ・フラック。
そしてビー・ホリデイ。
ビリーの「Left Alone」が聴きたくて探したけれど見つけられず
仕方が無いので、歌ではないけれど
ビリーのバックを務めていたマル・ウォルドロンを買った。
後に邦画「キャバレー」に使われて流行った曲。
NHK-FMで深夜に放送していた「クロスオーバー11」で
フュージョンを知ったのも高3の頃だったろうか。
それとももっと早い時期だったろうか。
いずれにせよ聴くのは家族が寝静まった深夜、
自分のラジカセでイヤホンしながらカセットテープだった。


大学へ入ると同時に自分のステレオを入手。
高校時代とほぼ同じジャンルを聴きつつ
徐々にフュージョンの方へと移っていった。
クルセイダーズ、スタッフ、ウェザー・リポート・・・
ちょうどCMの影響もあって渡辺貞夫さんや日野皓正さんが
一般的にも流行り始めた頃で
朝の目覚めはタイマーでかかる「カリフォルニアシャワー」だった(笑)
そして夜はぼんやりとマル・ウォルドロンやジム・ホール。
暗い・・・(^^;
そのうちにラリー・カールトンやリー・リトナー、
グローバー・ワシントンJr、シャカタクが流行り、
フュージョンの世界も特別な1ジャンルに括られることもなくなって、
ごく一般的なものになっていった。
ジャズでもあり、ロックでもあり、ソウルでもあり、ポップスでもあり・・・
まぁだから「フュージョン」と言うんだろうけどね。
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静かな 焔

2013-10-29 | 


静かな 焔

各(ひと)つの 木に
各(ひと)つの 影
木 は
しづかな ほのほ

    (八木重吉)
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ある爺さんの呟き

2013-10-28 | 散歩


戦争が終わったってぇ
天皇さまがラジオで言ったってんじゃねぇか。
年端もいかねぇうちから
海軍の修理工場で工兵見習いやってたおれぁ
それ聞いたとたんに腰抜かしちまった。
このまま工兵んなって、てめぇが直した軍艦で
しこたま暴れ回ってもらおう。
よしんば戦争が終わっても(もちろん勝ってだ)、
機関いじくれるようになってりゃ
そのウデでおまんまが食えるてぇ算段だった。
それがおめぇ、ウデ磨く前に戦争に負けたってんだ。
腰のひとつやふたつ抜かしたって不思議はあるめぇ。

まぁしょうがねぇから、それからあちこちで稼いださぁ。
中途半端に海軍を放り出されたオレだ。
最初は丁稚みてぇなとこからだわな。
それでもやっぱり慣れた機械、
しかも蒸気機関やボイラーには関わっていきてぇ。
ちいせぇ町工場がこの辺りにゃたくさんあったから
まぁ需要もそれなりにあったってこった。
そのうちいっぱしの仕事ができるようになってきた。
でけぇメーカーの機械も扱えるようになる。
朝鮮戦争の好景気が後押しした。
てめぇの会社っつーても店みてぇなもんだがな、
一国一城の主にようやくなれたってわけさ。
高度経済成長の頃もしゃかりきに稼いだもんだ。

それがおめぇ、倅は勤め人になるって家を出ちまった。
娘もなんとかいうシャレたとこにマンション買って
ダンナと子どもでよろしくやってらぁ。
脇目もふらずに食わせて学校出した子どもらが
誰も店継がねぇってのは、別に構わんがちと寂しいな。
しょうがねぇから身を切るようにして建てたこの家と店、
同じように古びた嬶ァと2人で守っていかぁ。
バカ言っちゃいけねぇ。
まだまだ若けぇもんにゃウデぁ負けねぇ。
え?もうそんな技術いらねぇ時代だって?
知ったこっちゃねぇや。
オレぁオレができることをするだけでぃ。
心配してくれてありがとよ。

・・・と、
その爺さんは手の甲で鼻を啜りながら店に入って行った。

    ☆      ☆      ☆

すみません。すべてこの写真から想像したフィクションです。
でも、そんな経歴の元、確かな技術とプライド持った
こんな爺さんがここに住んでいるような気がするのです。
隅田公園そばにて。
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隅田公園

2013-10-27 | 散歩
関東大震災からの復興計画により
「震災復興公園」として整備された隅田公園は広い。
隅田川を挟んで浅草側、向島側に並ぶ桜並木は
徳川吉宗によって植えられ、
江戸時代から花見のメッカで知られる景勝地。
それに加えて旧水戸藩邸の庭園が加わったからだ。
で、本所吾妻橋から言問橋までをぶらぶら
水戸藩邸跡~牛島神社を散歩してきた。



まずは北十間川の橋を渡る。
川のこの先は隅田川。
右の岸にある高架線は東武スカイツリー線(旧伊勢崎線)だ。
高架をまたぐ鉄柱が見えるあたりに
かつては隅田公園駅があったと何かで見たことがある。
東武浅草や業平橋(現スカイツリー駅)との間があまりに近すぎ
廃止になった(駅舎は空襲で焼失)と聞いた。
浅草とは確かに直線距離なら近いけど
隅田川を挟んでいて不便だから
現存していれば便利だったと思うなぁ。



水戸藩庭園の池ではアヒルや鴨が一休み中



紅葉が始まりそうな中、鷺ものんびり羽を休めていた。





言問橋の橋柱。
黒ずんでいるのは昭和20年3月10日の
東京大空襲の際に焼け焦げた痕と焼け死んだ人々の脂と聞いた。
浅草側、向島側の両方からの避難民が橋上にぎゅうぎゅう詰めになり
その荷物や衣服に火がついて大勢の方々が亡くなったとのこと。
鎮魂の橋。
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浅草より

2013-10-26 | 散歩


この風景は、浅草エキミセ屋上からの眺め。
エキミセといっても馴染みが薄いかも知れないが
東武鉄道浅草駅と一体となった
松屋といえばわかる人が増えると思う。
デパート閉店後エキミセというショッピングビルに
最近生まれ変わった。
浅草といえばシンボルのような時計塔も
屋上に登れば裏側から見ることができる。



エキミセの6階は和の店が軒を連ねる。
絣や藍染、和の器など
見ているだけでとても楽しい。
全国にショッピングビルは多くあるけど、
こんな風にテーマを絞るのもアイデアではある。
また来てみよう。
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「石仏」

2013-10-25 | 音楽
山の奥の 道のはずれの 小さな石の仏
何百年も昔から 時の流れを じっと見ていた
子供死なせた 母親が 涙で固めて 作ったか
戦で死んだ 男の為に 戦 うらんで 作ったか

女を犯した 哀れな男が やむにやまれず 作ったか
生きてる事の 悲しみを 背負いきれずに 作ったか
だけどこれは どこかのお金持ちが
作った物ではないだろう

いく度か 季節の移り変りの中で
喜びを分かちあってきただろう
雪に埋もれ 雨風にうたれ
悲しみを 分かちあってきただろう
だから こんなにしっかりと 目を閉じている

いく度か 季節の移り変りの中で
喜びを分かちあってきただろう
雪に埋もれ 雨風にうたれ
悲しみを 分かちあってきただろう
だから こんなにしっかりと 目を閉じている
            (詞・曲 河島英五)
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待望の盛岡ライブ

2013-10-24 | 音楽

友人であるJAZZシンガー
MICCOこと下村瑞枝さんの盛岡ライブが
来月ようやく実現することになった。
初めての凱旋ライブ。
ムードたっぷりの彼女の優しい声と美しさで
素晴らしい時間が過ごせること請け合い。
地元で有名な及川浄司カルテットが
今回彼女の初サポートというのも興味深い。
この機会をお見逃しなく。
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「海賊と呼ばれた男」

2013-10-23 | 読書
 

本屋大賞にも選ばれ、
各界、たくさんの読者に絶賛されている
今も続くベストセラーの小説。
小説といいながら、
登場人物の名を変えたノンフィクションらしい。

「らしい」と書いたのは
上巻の半分まで読んで読むのを止めたから。
ごめんなさい。ここまででもうお腹いっぱい。
もういいや。
茶道具蒐集家としても知られた出光佐三氏の評伝だから
多少は期待していたのだけれども、
この作家に書かせたことが間違いだったのか
それとももともと構想の段階からこんな感じだったのか。
途中で飽きてしまった。こんなことは初めてだ。

これがまったくのフィクションだったら
もしかしたらもっと読めるかも知れないと思いつつ
・・・でもやっぱり読むに耐えない(^^;

読んでどう感じたか、どこがダメだったか、
どういうところが合わなかったのかについては
あえて書かないでおく。
それは読者ひとりひとりが感じることだから。
でもね、この作品に靡く人たちがマジョリティになったら
それはそれでコワい社会だと思うよ。

「海賊と呼ばれた男」百田尚樹:著 講談社
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すすき

2013-10-22 | 生活の風景


秋の野の尾花が末の生ひ靡き心は妹に寄りにけるかも

(秋野尾花末生靡心妹依鴨:柿本人麻呂)
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命どぅ宝

2013-10-21 | 音楽


私たちの人生や社会は
大切なものを忘れているのではないか。
金に支配され、
溢れんばかりの情報に振り回され、
人に勝った負けたをモノサシにして、
本当に大事なものを蔑ろにしているのではないか。
命や地球やささやかな幸せやゆっくり生きる人生を
いつの間にか忘れてしまったのではないか。
そんな根源的なことを問いかけつつ
泣き笑いしながら楽しめるのがまーちゃんバンド。
西表島出身のまーちゃんが
肩の力を抜き、ユルユルの感じで魂の歌を歌う。
カッコなんかつけずに。テクニックなんか用いずに。

バンドで全国を回りつつ
モンゴルの砂漠に木を植え、人と人とを交流させ、
普段は外で思い切り遊べない福島の子たちを
自分の古里である西表島に連れてきて
海や野でのびのびと遊ばせるまーちゃん。
「砂漠に木を植えると3年で草原も戻るんですよ」
「日中関係なんて個々人には関係ない。
仲良くなった同士でミサイル撃ち合うと思う?」
「海も空も地球のもの。人間が好きにしていいわけがない」
「沖縄の基地は人を殺すためのものだからいらない。
人を助けるための基地ならいくらあってもいいけど」
その通りだ。

そして、個人的には
こんなバンドがしたかった。
ネイティブで、シンプルで、暖かいコーラスがあって
聴く人の心を揺さぶるバンド。
それには自分がしっかりとした考えを
持ち続けなければならないんだけど。

タイトルは彼らのテーマ。
「命(ぬち)どぅ宝」
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結婚式

2013-10-20 | 生活の風景


おめでとう^_^
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芋の子汁

2013-10-19 | 生活の風景


今シーズン初芋の子汁を堪能。
里芋のことを岩手では芋の子と言うが
よく知られる山形の芋煮とはちょっと違うようだ。
我が家のデフォルトは豚肉を使った味噌仕立て。
大根、人参、牛蒡にシメジなどとともに芋の子を入れる。
北上市の二子地区で採れるものが代表格だが
(今日の芋の子汁は二子の芋だよ~という言い方をする)
特に粘りの強い芋の子が入ったものは絶品。
芋が口の中で溶けていく。
作ったばかりより2日目、3日目の方が味が滲みるし、
大勢で大量に作るのも楽しく美味しい。

豚肉&味噌仕立ての他に
あっさり系の鶏肉&醤油仕立てもあるが、どちらもgood。
芋の子汁を食べるといつも
「あ~岩手県人で良かった」と幸せな気持ちになる。
秋の代表的岩手料理だ。
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「プラットホーム」

2013-10-18 | 音楽


あの頃は 夢の向こうに見えて
音の隙間を流れていく
そっと そっと 追いかける
空の果て 世界の向こう側
そんな場所で 出会えるときが
きっと きっと やってくる

あの時 あたしが選んだ道の端は
途切れて 見えなくなってしまっても

あなたを呼ぶそのために 歌い続ければ
隔てられた世界にも
二人のプラットホームは きっと現れる
そこでまた出会ってる

いつまでも 人は迷路のように
心の中に闇をもって
ぎゅっと ぎゅっと 抱きしめる

因果の川の流れに 押し出されてく
舞い上がる 木の葉のように切ない時

あなたを思い出したら ただそれだけでも
命がまた動き出す
あなたを呼ぶそのために 歌い続ければ
隔てられた世界にも きっと

二人のプラットホームは
どんな場所にでも現れる

あの頃は 夢の向こうに見えて
時の隙間を流れていく
ずっと ずっと 追いかける
   (詞・曲:Takeshi Kobayashi)



学生時代、営団地下鉄銀座線の車両は
こんな黄色い電車だった。
当時の地下鉄は夏でも冷房が入っておらず
駅のホームでも、電車に乗っていても汗だく。
窓を開けたって景色は見えず
ガーガー走る音だけが車内に充満していた。
景色も見えない、会話の声も聞こえない車内では
一緒に乗っている人の顔を見ているしか無い。

やがてどこかの駅から自分ひとりになる。
不思議なもので、
そうなるとそんな騒音も全く気にかからなくなる。
目を瞑り、つり革を掴み、
ひとりでじっと孤独を噛み締める。
カーブを曲がる時の
車輪とレールが擦れるキーキーいう音が
自分がひとりで行くべき場所へと運んでくれる。

この歌は浅田次郎さん原作の映画
「地下鉄(メトロ)に乗って」の主題歌。
歌詞はとても胸に沁みるけれど
2人で乗っていても、3~4人で乗っていても
それぞれ降りるべき駅は違うのではなかろうか。
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「アイ ウィットネス」を読んで

2013-10-17 | 読書

以前書いたこの本を読了。
最初に読んだ本については
キャパになれなかったカメラマン」や「レクイエム」で
2度にわたり感想を書いたが、
それに対して著者である平敷さんご自身から連絡をいただき、
更に本書を贈呈いただいたのだった。
恐縮しつつ、じっくりと読ませていただいた。

本書は「キャパになれなかったカメラマン」の続編みたいなもので
アメリカABCのカメラマンとして
南ベトナム崩壊後、ヨーロッパやアメリカに勤務しながら
中東、東欧、当時のソ連、米国内などを
カメラのレンズを通して見、取材してきた体験談。

自分が20代~40代の頃
仕事や生活に追われながらテレビや新聞で知った世界の事象が
実際にその場にいた方の目で裏側から語られる面白さ。
ニュースとしては報道されない真実や事実、風景。
「あぁ、やはり報道を通して知った気になっているのは間違いだ。
 実際に現場の空気や音や匂いを体験しなければ
 本当のことはわからない」と強く感じた。
今も続くイスラエルとPLOとの戦いも
遠く離れた日本でのんびり新聞の活字を拾い読むだけでは
きっと本質は見えてこない。
イスラエルの人々の思い、PLO戦士の思い、レバノンの人たちの思い、
それらが頁の中から手の温もりとともに感じ取れる。
独裁者として国を追われたフィリピンのマルコスの妻イメルダ夫人の
大量の靴のコレクションについては確かに当時TVや新聞で見たが
彼女が貧しい育ちで、幼い頃から靴に憧れていたことは知らなかった。
マルコスを追い落としたアキノ女史の足元がサンダルだったことも。

人間は一面的じゃない。
どんな人間でも残酷な面と、非情な面、優しい面、人間的な面を持つ。
そんなことも生身で接した平敷さんだからこそ描けたのだろう。
国連の元事務総長ワルトハイム氏のエピソードもそのひとつ。
報道だけで見ると「なんだ。元ナチだったのか」で終わるが
そのワルトハイム氏に対するオーストリアの人々の複雑な心境もまた
遠い日本では想像できなかったことだ。
本書は改めてそんなことにも気づかせてくれる。

そして会社の枠を越えた報道仲間たちとの友情。
戦場で、文字通り命をかけた仕事をしてきたからこその強い絆は
読んでいて羨ましくて仕方ない。
死線を越えてきたからこその絆だけ羨んでも仕方ないのだが、
グローバルの名の元にルール無しのタフな競争の中で
お互いを尊敬し合いつつ、競争を楽しんでさえいるように見える
(見えるだけ。実際は過酷な競争なのだろうけど)
彼らの仕事に強く惹かれたのは事実。
それは沢田教一さんや一ノ瀬泰造さんの本でも感じたことだった。
そしてそれらを知り、憧れた時、
すでにワタシは30代も終わりだった。

一番心がほっこりとし、
「人間も捨てたもんじゃないよな」と思ったエピソードは
ソ連のKGBとのやり取り。
面白い。

「アイ ウィットネス」平敷安常:著 講談社
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