ふと耳に入った懐かしいメルモの歌から「いしぶみ」を思い出し
そのついでというわけじゃないけど、
子どもの頃好きだった、今も印象深く記憶に残っている本を
何冊か思い出してみた。
「ゆかいなどろぼうたち」(トールビョールン・ エグネール著 学習研究社)
ノルウエーの作家が書いた、カルデモンメという架空の街の物語。
ロバが曳く荷車。お菓子が切符の路面電車。
どろぼうたちにすら気を使う呑気なおまわりさん。
歌や音楽に包まれた街。
カスペル、イェスペル、ヨーナタンという3人のどろぼうの名前ですら
今もはっきり覚えているほど大好きな本だった。
北欧で書かれたにもかかわらず、陽気で明るい物語。
3人のどろぼうたちの家政婦として盗まれてきたおばさんが
結果として3人に指示を出し、いつしか更生させているという面白さ。
何度も何度も読み返したものだ。
「たのしいムーミン一家」(トーベ・ヤンソン著 講談社)
おなじみのムーミンだが、よく知られるアニメのムーミンとは違い
原作のムーミントロールたちの不思議な物語。
どこか静謐でおどろおどろしく、秘密めいたムーミン谷で
ムーミントロールの一家やスナフキン、スニフたちが
子ども向けの本にもかかわらず人生を語る。
知らない世界に引き込まれるようなこの雰囲気にハマり
シリーズはほとんど読んだ気がする。
「誰も知らない小さな国」(佐藤さとる著 講談社)
これまた不思議な世界を描いた本。
大人たちが暮らす日常の生活の片隅、裏側に存在するコロボックルの世界が
妙にリアルに感じられ、それ以来カエルをじっくり観察したものだ。
コロボックルとはアイヌの伝説に出てくる小人の名だが
もしかすると、だからこそのリアリティだったのかもしれない。
このシリーズもほとんど読んだはず。
当時父から
「そういえば、10cmぐらいの小さい人が走っていくのを
花巻の街で見たって話を聞いたことがあるぞ」
と(笑いながら)言われたこともリアルに感じた理由のひとつ。
この本が初めて世に出たのは1959年とのことだが、
当時はまだ家の中にも社会にも「闇」が存在したと思うので
私が読んだ1970年ごろよりもっとリアリティがあったのだろうと思う。
「ノンちゃん雲に乗る」(石井桃子著 福音館書店)
この本も繰り返し繰り返し読んだ。
「『いい子』ってみんなから言われる」というノンちゃんに対して
「そりゃちょっと危ない」という白いヒゲの雲の上の爺さん。
今考えてみるとなかなかのセリフだが
当時まだ10歳ぐらいだった私にもぼんやりそれが理解できた。
お母さんとお兄さんに置いて行かれたノンちゃんの悲しみもよくわかったし
ノンちゃんの生活の環境も身近に感じられた。
今になって、このお話が戦前に書かれたと知ってびっくり。
昭和40年代までは、戦前からの価値観や生活が残ってたんだねぇ。
考えてみれば、日本人の価値観や生活、まちの形が大きく変化したのは
やっぱりバブル期だった気がするよ。