以前、印刷会社にいた頃から感じていたことだが、
例えば観光系パンフレットひとつ取ってみても
自治体の観光系部門、まちづくり系部門、移住定住担当課、
そして農業系部門や観光協会、商工団体など
多方面から少しずつ内容的にかぶっている媒体が発行されがちだ。
タテ割り施策、タテ割り予算の弊害かとは思うが
マクロで見るといかにも無駄に見えてしまう。
インフォメーション、プロモーションがマネジメントされていない。
しかもどの自治体もパンフレットやリーフレットなどほぼ紙媒体で、
聞くと「役所や駅の窓口に置いてます」というところもある。
それらはほぼ市外、県外の人向けのものなので
駅や役所に置いていてもあまり意味がないと思うのだが・・・。
内容的にも、決まった観光地、自然などの景色、特産物などなど
コンテンツが違うだけで、全国どこの自治体も金太郎飴のよう。
確かにここにしかないものはいろいろあるだろうが
自然も、景色も、食べ物も、全国それぞれそこなりのものがある。
市外、県外の人たちのニーズを把握することなく
自分たちがPRしたいことを一方的にアピールしているに過ぎない。
残念ながらそれは電波や雑誌など
旧来型の一方通行メディアと同じで、現代的ではない。
一方webのほうについても、内容的には同じこと。
厳しい言い方をすると、
作っただけで満足してしまい独善的な自治体が散見される。
webは便利だが、能動的にアクセスしようと思っている人がいないと
単なるお飾りになってしまう危険性がある。
本を購入する場面に例えてみると
具体的に欲しい本がある場合はネットで買うのも便利だが
知らなかった本とは書店に行かないと出会えない。
紙もwebもいいが、それぞれのメディアの特徴を生かし
より効果的なインフォメーション、プロモーションが必要だ。
じゃあどうすれば良いのか。
行政や公共団体からの発信は表現のプロに任せるのが一番。
伝えたい情報、やりたい施策、ターゲットなどを
例えばクリエイティブディレクター(CD)などに伝え
最も効果のある伝達方法(複数のメディアを組み合わせるなど)で
最も効果のある表現で発信することが必要かと思う。
行政マンはオールマイティである必要がない。
餅は餅屋。
それによって予算効率の良い発信ができるのなら市民にもメリットがある。
webやパンフだけでなく、もしかしたらそれは書籍かもしれないし
あるいは電子ブックや映画になるのかもしれない。
おそらくそういう発想は行政や公共団体からは出てこない。
CDだって個人である必要はない。
第3セクターや行政に近い信頼できる民間団体などに
インフォメーションセンターやプロモーションセンターなど
発信機能を持たせることも良いだろう。
発信情報をオーソライズし、マネジメントした上で作戦を考え
外注を使ってメディア化できれば良いのではないだろうか。
最近は各地に
防災対応を兼ねた地域FMやケーブルTVがある自治体が増えているが、
そこはすでに電波というメディアをひとつ持っている。
(ラジオアプリも普及して全国どこでも聴取できるようになっている)
そこにインフォメーションセンター機能を持たせることにより
それらの会社の経営健全化にもつながるのではないか?
(会社側ではCDをひとり〜ふたり雇用or業務委託すれば良い)
ところで印刷会社時代に経験したこと。
ある自治体で、毎月の広報印刷業者を年度毎に入札で決めていた。
ある年、経営が苦しかった印刷会社が、どうしても受注が欲しくて、
前年の契約金額の半額で入れ落札した。
当然のことながらその金額のままで受注を継続することができない。
前年の落札金額を見た他の業者たちは、翌年の入札を辞退した。
参加は前年受注の1社のみ。
しかも前年の金額よりも高い金額で札を入れざるを得ない。
予算は前年実績で決められたらしく、大騒ぎとなった。
業者側からみれば、適正金額を無視した契約に問題がある。
まぁ入札あるあるだ。
こんなことも、インフォメーションセンター化すれば
一定の予算内で作戦を考えることができるので、破綻がない。
それでも予算効率の良い発信ができるので、予算は少なくて済むだろう。
私の本業は、いわばそんなCD的な仕事。
実際に花巻まち散歩マガジンMachicocoだって
FM(マチココスタイル)とweb(まきまき花巻)とを利用し
メディアミックスで雑誌の発行を続けている。
こんなところに書かず、
こっそりどこかの自治体にこういう方法を提案して、
自分で請け負ってしまえば良いのだろうが(笑)
正直言って、この立場から見ていて黙っていられなくなったのだ。
これはどこか特定の自治体に向けた提言ではない。
全国どこでもいえることだから。