風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

「昭和ちびっこ未来画報〜ぼくらの21世紀」

2023-12-16 | 読書

こんな本を見つけて即買い😁
1950年〜1970年ごろの子ども向け雑誌などに掲載された
(その時想像した)未来予想図が載っている。
「復興には50年かかる」と言われた戦災からは
1950年代にはもう驚異的なスピードで復興し
1960年ごろからの高度経済成長によって
「昨日より今日、今日より明日が豊かになる」と皆が思い
「未来」の夢を見る時代だった。
本書にはその「未来」がたくさん詰まっている。

1950年代から60年代前半ぐらいまで
「未来」は復興後の世界だった。
みんながロケットを背負って自由に空を飛ぶ姿は笑えるが
一方でヘリコプターや立体交差が未来の姿というところには
当時いかに戦前からの暮らしが続いていたが窺われる。
この当時はテレビや自家用車、冷蔵庫すら高嶺の花だった。

驚いたのは1960年後半から1970年前半にかけて。
このページを担当した編集者やイラストレーターは
実用化されていない、当時最先端のテクノロジーを調べ
それらが実用化された姿を描いている。
モノレール、動く歩道、放送衛星(BS、CS)、
ファクシミリ、携帯電話、壁掛けテレビ、ロボット手術、
そして太陽電池にインターネット。
その頃からITや液晶技術が研究されていたんだねぇ。

1970年の大阪万博でも未来の技術が紹介されている。
私も子どもの頃驚いた(といっても行ってないから本で見た)
自動で風呂に入れる「人間洗濯機」は
現在介護用入浴システムに生かされているのだという。
狭い自宅の中でプライバシーを作り出すカプセルルームは
今カプセルホテルになってるよねぇ。

驚くのは「コンピューターライフ(1969年)」というページ。
絵とともに書いてある文を抜粋してみよう。
「いまから20年後、きみたちが、社会人として、働いている時代、
 コンピューターは、生活から切り離せなくなっているだろう。
 きみの健康も、きょうのドライブコースも、
 そして今晩の献立さえも、すべてコンピューターが教えてくれる。
 子どもたちも、学校へいかずに、家庭のコンピューターで
 勉強すればいいだろう。
 家庭のすべてが、コンピューター中心の
 未来世界(コンピュートピア)が、実現するのだ」
そしてそのページの端には
「テレビ電話も実現!きみの家で使えるのも近い」と

笑ったのはその続きにある「コンピューター学校」。
もちろんオンライン学習について描かれているのだが、
みんなわざわざ学校へ行って、ひとり1台のPCを使っている。
ところが右端の子はどうやらロボットによって立たされ😁
一番後ろの子はよそ見をしていたらしく
見張りのロボットに頭をコツンと叩かれている🤣
科学の未来は予測できても
人権の考え方の進化までは予測できなかったと見える。

本書では未来のエネルギーを原子力としているが
最後には未来の人類が滅びる姿。
その原因が・・・
「気候の変化」「気温の変化」「伝染病の流行」
そして「第3次世界大戦」(1968年のページ)
科学の進展だけではなく、
滅びゆく人類の姿までその通り描かれつつあると思うのは
ネガティブな考え方すぎるだろうか。
子どもたちは、いつから未来に夢を描かなくなったろう。
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「小さなトロールと大きな洪水」

2023-11-29 | 読書

フィンランドの作家&画家のトーベ・ヤンソンによる
ムーミンシリーズの、実は最初の物語がこれ。
1945年にたった48ページの小冊子として出版されたものの
本屋さんに置いてもらえず、新聞スタンドなどで売られたとのこと。
そういう経緯もあって2作目の「ムーミン谷の彗星」が
シリーズ1作目と思われてきたのだそうだ。
そして3作目が「たのしいムーミン一家」となる。

子どもの頃からムーミンが好きだった。
でも好きだったのはアニメの可愛らしいムーミンではない。
どこか不思議で神秘的でおどろおどろしい、
暗い森とムーミン谷の物語に魅了されたのだ。
アニメに通じる可愛い物語は
「たのしいムーミン一家」あたりからになるだろうか。
その変遷について、今回の読書と解説などを読んで
「そうだったのか」と得心した。

「小さなトロールと大きな洪水」の出版は1945年だから
書かれたのは恐らく第二次世界大戦中。
「ムーミン谷の彗星」が発表されたのは1946年だから
これもまた戦時中か、戦後だとしても直後に書かれたものだろう。
ムーミントロールとママが、行方不明のパパを探す旅の中で
たくさんの生き物が家をなくしたり、命からがら逃げたり
ムーミンたち自身も命の危険からやっとの思いで脱したりした末
ようやくパパを見つける「大きな洪水」は
まさしく一般の市民の戦時下での姿だ。
命の危機を伴う災害の物語である「彗星」もまた
突如として空からやってくる脅威の物語。
彗星はもしかしたら核兵器のメタファーなのかもしれない。
戦後処理の中で、当時の世界は東西冷戦前夜だった。

そして「たのしいムーミン一家」は1948年の発表。
もうムーミンたちを命の危機は襲わない。
明日が今日より明るいものとして描かれたりしている。
とはいえ、棲む森や谷は相変わらずおどろおどろしい雰囲気。
現代社会からは無くなってしまった「闇」がそこにある。
「闇」は見えないからこそ想像力につながる。
ムーミントロールの物語の魅力はそこにあるんだろうなぁ。

ところで、本書を改めて読んで気づいたけど
トロールたちってイメージよりはるかに小さかったんだね😅
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「滴る音をかぞえて」

2023-11-22 | 読書

詩人と知り合ったのは2005年。
ネットを通じてだった。
繊細な言葉を選んでブログを書いている人に興味を持った。
東京出張時や、その後の単身赴任時に何度か会っては
当時の彼女が抱えた複雑な境遇の話を聞き、
思想や思考、詩などの文芸作品について共感し合った。
とはいえ、その頃の彼女は不安定な立ち位置にあり、
どこか保護者のような気持ちもあった。
その後彼女は仕事を得、よき伴侶とともにいる。
最後に会ったのは東京にいた頃だったから10年以上前かな。

その彼女が詩集「あらゆる日も夜も」を出したのは2018年。
どうやら私のことも思い出してくれたらしく
思いがけず1冊送ってもらったのだが、
その詩集で第29回日本詩人クラブ新人賞を受賞した由。
すでに母となっていたが、以前と変わらない敏感な感受性。
繊細で、どこか危うさすら内包する言葉たち。

そして今回2冊目の詩集を出したとのことで、
また送ってもらった。
今度は新たな命を生み出した輝きでいっぱいだった。
そして育っていく子への慈愛の目。
いい人生を送れているな。
良かった😊

「滴る音をかぞえて」川井麻希:著 土曜美術社出版販売

 
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「言語の本質〜ことばはどう生まれ、進化したか」

2023-11-19 | 読書

コレ、意外に面白かったわけですよ。
もっと堅苦しくて学問的なのかなーと思っていたら
あまりこれまで触れられてこなかったアプローチで腑に落ちる。
主にオノマトペを切り口に、様々な実験も。
例えば割と前半の導入的に書かれていた実験結果。


このふたつの絵に「マルマ」と「タケテ」という名前の
どちらがイメージに合うかの実験だったが
丸い形と尖った形を音の印象に置き換えてみると
どんな言語を話している人たちでも似た傾向を示すとか
すごく面白い。
こういう切り口からだんだんその論旨が進む。
「へぇー」という言葉ががちょくちょく口から出てくる。

ところで、本文中に例として取り上げられる言語が
パスタサ・ケチュア語(南米)とかバスク語(スペイン)とか
カンベラ語(インドネシア)、バヤ語(中央アフリカ)、
ルバ語(コンゴ)、ニュルニュル語(西オーストラリア)とか
とてもマニアックなものが取り上げられていて萌える😁
言語名もまるでオノマトペみたい。

ということで、実はまだ読んでいる最中。
ちょっと仕事が混んでいて、なかなか進まないんだけどね😅

「言語の本質〜ことばはどう生まれ、進化したか」
今井むつみ・秋田喜美:著 中公新書


 
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向島の懐かしい店

2023-11-06 | 読書
大学時代に別冊マーガレットを読んでいたことはあるが
(くらもちふさこや槇村さとるが好きだったので)
大人むけの漫画雑誌を買ったのは初めてだ。
変なジジイだと思われそうで😅
なんだかドキドキしながら本屋でレジに持っていった。


何でそんな思いまでしてこの本を買ったかというと
なんと東京の友人の店がモデルになった漫画が載ったと聞き。


「40歳からのハローワーク」という、
毎号読み切りの作品だそうだ。


おぉー❗️東京は墨田区向島のNINE LIVES❗️
アコースティックライブバーだけど、
東京単身赴任時代の我が家のダイニングがわりでもあった。
週の半分はここでご飯を食べ、飲み、語り、笑い、歌ったものだ。
岩手に戻る時には貸切にし、送別会代わりの
「隅田川フォークジャンボリー」もここで行ってくれた。
私の東京時代の前半はりっきーさんとおゆうさんのKOTOBUKI、
後半はこの店が生活の中心だった。


ヒロキちゃんやsuzuちゃんも❗️
店内の描写もまったく本物の店内そのままで😅
何だかとてもうれしいなぁ。
ここんとこ、とんとご無沙汰ばかりだし
何よりもアルコールが飲めなくなってしまったけれど
でもまた無性に行きたくなってしまった。
この雑誌は保存版。

ストーリーを知りたい人は
雑誌「エレガンスイブ」12月号をお買い求めください。
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「修羅街輓歌」

2023-10-20 | 読書
  序 歌

忌わしい憶い出よ、
去れ! そしてむかしの
憐みの感情と
ゆたかな心よ、
返って来い!
  今日は日曜日
  椽側には陽が当る。
  ――もういっぺん母親に連れられて
  祭の日には風船玉が買ってもらいたい、
  空は青く、すべてのものはまぶしくかがやかしかった……
     忌わしい憶い出よ、
     去れ!
        去れ去れ!

(中略)

  Ⅳ

いといと淡き今日の日は
雨蕭々と降り洒ぎ
水より淡き空気にて
林の香りすなりけり。
げに秋深き今日の日は
石の響きの如くなり。
思い出だにもあらぬがに
まして夢などあるべきか。
まことや我は石のごと
影の如くは生きてきぬ……
呼ばんとするに言葉なく
空の如くははてもなし。
それよかなしきわが心
いわれもなくて拳)する
誰をか責むることかある?
せつなきことのかぎりなり。

       (中原中也)



高校時代から憧れにも似た感情を抱いている詩人。
その青春の一幕が身につまされるものだったり
故郷が自分のルーツでもある山口だったり
作品ばかりではない親近感を(勝手に)抱いてきた。

そしてこの詩。
生前発表された詩集2冊のうちの1冊「山羊の歌」は
はじめ「修羅街輓歌」というタイトルになる予定だったとのこと。
ここに、明らかに宮沢賢治の影響が見て取れる。
「序歌」というのも「春と修羅」の「序」みたいだ。
中也は草野心平や高村光太郎などと並び
早い時期から賢治を評価した人。
そういうところからもますます親近感を覚えるのだ。
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「沙林 偽りの王国」上下

2023-10-14 | 読書


東大文学部を出たのちに、TBS勤務を経て九州大医学部へ・・・
医師と作家というとんでもないキャリアを持つ著者の作品は
閉鎖病棟、受精、エンブリオ、千日紅の恋人、インターセックス、
蝿の帝国〜軍医たちの黙示録と読んできた。
綿密な下調べとエビデンス、精神科医らしい心理描写など
どの作品も読み応えがある。
しかもテーマがほぼ社会性を帯びて重い。
一瞬ノンフィクションかと思えるようなリアリティもある。
これらは決してエンタメとして読んではいけないと思う。

さて本作。
これまたリアルにいたと思われる医師の視点から
オウム真理教事件の全貌を、特にサリン事件を軸に描く。
科学的な分析は、残念ながら文系頭には理解が難しかったけれど
戦争で毒ガスを使われた歴史は興味深く読んだ。
また松本サリン事件から地下鉄サリン事件に至る警察の失態も
縦割り組織の弊害と看破して追及している。
(解説を書いているのがそのトップだった国松元警察庁長官)
当時テレビや新聞、雑誌記事などで断片的に知った事実が
医師と警察、マスコミとのやり取りの裏側まで克明に書かれており
30年近く経ってから総括してもらった感じ。

もちろんこんな事件は2度と起こしてはいけないのだが
果たして教訓になっているのだろうかという疑問が湧いてきた。
特に下に引用した一節を読んだりすると。

「眠ろうとして床に就いたとき
 『宗教が倫理観を黒塗りにする』という命題に再び行きつく。
 第一次世界大戦で、フリッツ・ハーパーのような科学者たちが、
 専門知識を生かして毒ガスを製造したとき、
 彼らの頭を占めていたのは『国家』だろう。
 お国のため、母国の勝利のための毒ガス製造だったはずだ。
 そのとき、人を大量に殺傷していいのかという倫理観は、
 もうどこかに吹き飛んでいたはずだ」

「『週刊読売』は、
 こんな後手後手に回ってあたふたしている事態に対して、
 元東京地検特捜部長の河上和雄氏の談話を載せていた。
 河上氏は、オウム関連事件の一番の責任は政治家にあると断言し
 これまでどうして教組や教団幹部を
 国会で証人喚問しなかったのかと批判する。
 例えば証人喚問で、毒ガスを撒いたのは米軍だと言えば、
 それだけで偽証罪で告発できたはずだと悔しがる。
 それを政治家がしないのは、
 選挙の際に宗教団体のお世話にならなければならないからだ。
 宗教団体の票は手堅い」

特に後者の文章は
オウム事件が本当に総括されたのかと疑問に思わざるを得ない。
何も教訓になっていないのではないか?

「沙林 偽りの王国」上下 帚木蓬生:著 新潮文庫
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「花巻が燃えた日」

2023-10-03 | 読書

こんな本があるのをご存知だろうか。
昭和20(1945)年8月10日の花巻空襲の記録は
かつての花巻老人大学で出した「忘れまいあの日」があるが
本書は同書を参考にしながらも更につっこんで
同日の空襲で犠牲になった50人ほどの最期を記録している。
幼い子どもも、若い女性医師も、花巻電鉄の運転士も、
都会から疎開してきていて、
子どもを庇って犠牲になった若い母親も、
たまたま通りがかった汽車の乗客や軍人たちも、
その日、その瞬間に命を絶たれた。

ビートたけしさんは東日本大震災のことを
「2万人が犠牲になったひとつの事件ではなく、
 ひとりが犠牲になった2万件の事件」
と表現したが、
全国各都市同様、花巻の空襲もまた
ひとりが犠牲になった50件の事件なのだ。

「花巻が燃えた日」加藤昭雄:著 熊谷印刷出版部
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「一本の水平線」

2023-09-05 | 読書

20代の頃からだろうか、
もう何年も安西水丸さんのファンだ。
最初は確か村上春樹さんの本の挿画からその名を知った気がする。
そのうちに、安西水丸さんの本名「渡辺昇」が
「ノルウエイの森」の主人公「ワタナベノボル」だったと知った。
この辺の安西水丸さんと村上春樹さんの関係が面白い。

肩の力が抜けたようなのほほんとした線で
なおかつ色は鮮やかなイラスト。
最大限空間を生かした、まるで俳句のようなデザイン。
そして主戦場じゃなかったのだろうが、
意外にも情感たっぷりな小説。
どれをとっても、私を惹きつけてやまなかった。
何より、安西さんの本は安西さんご自身が装幀していて
これまた魅力たっぷり。
装幀だけでも手に取ってしまうほどだ。
↓ これが一番好きな安西さんの本の装幀。
紙質からして違っていて、身悶えするほど好きだ。



「一本の水平線」は短いエッセイとイラストの本。
先日、盛岡へ行った時にブックナードさんで買ったものだ。
とてもシンプルなエッセイ(というか、ほぼつぶやき)ながら
妙にそのひと言が心に残る。

「こんな風に生きたいと思っていることがある。
 絶景ではなく、車窓の風景のような人間でいたいということだ」

「一本の水平線」安西水丸:著 クレヴィス

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「国籍と遺書、兄への手紙〜ルーツを巡る旅の先に」

2023-08-28 | 読書

TBSテレビ日曜朝の「サンデーモーニング」コメンテータとしても
よく知られるフォトジャーナリスト安田菜津紀さんの著作。
父親の出自の秘密からルーツを辿っていくドキュメンタリーだ。
その過程でたくさんの人たちが手を差し伸べ
最後には知らなかった縁者たちとも交流できた物語。

実は昨年辺りから
ワタシも父親方のルーツをいろいろ調べている。
明治から大正、昭和の初めぐらいまでという時代は
現代のような単線のわかりやすい人生というわけではなく
驚くほどいろんなことがあって、人々の関係性がとても複雑だ。
それを把握している親戚や縁者の方々はもう鬼籍に入り
もしかしたら関係性について今一番詳しいのはワタシかもしれない。
それでもまだまだわからないことがたくさんある。
それをひとつひとつ調べ、解明したり推理したりして
データでまとめ、最終的には本にして残そうと考えている。
調べるのは面白いし、新たな事実がわかると嬉しい。
びっくりするようなことも出てくる。
最終的にいつできるかまだ見えないけれど
この機会に徹底的に調べられればと思っている。
昔を知る人たちがみんな年々歳をとっていくからね。

でも本書を読んで気づいたことがある。
調べて記録するだけでは自己満足で終わってしまう。
その過程で知り合った人々、出会った知らなかった親戚、縁者と
直接会って交流することこそ大事なのではないか?
本当はそれを最終目的にしなきゃ行けないんじゃないか?
ルーツ調べはこのまま続けながら
そのことについても引き続き考えていこうと思った。

「国籍と遺書、兄への手紙〜ルーツを巡る旅の先に」安田菜津紀:著
図書出版ヘウレーカ

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「世界でいちばん透きとおった物語」

2023-08-23 | 読書

とんでもない本を読んだ。
読了後は何も言葉が出てこない。
あんぐりと口を開けるしか無いほどの感嘆。

感想書こうとしても全てネタバレになるから
何も書けねーじゃねーか😅
とにかく最後の1行、1文字まで余さずすごい。
「衝撃のラスト」なーんてよくある帯文字だけど
本書ばかりはそんな紋切り型コピーじゃ足りない感じ。

もちろん一般の読者(特にミステリーファン)も
大いに驚き、夢中になる作品ではあるのだけど、
特に私のような仕事をしている人間にとって
「こんなことできるんだ💦」と
ある意味呆れるほどの驚愕を感じる。
まず読んでみて。話はそれからだ。
それしか言えねぇ😅

「世界でいちばん透きとおった物語」杉井光:著 新潮文庫😅
(最後の絵文字の理由は読めばわかる)

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至福の時

2023-08-20 | 読書

まだ1ページも読んでいない本を紹介するのは
初めてじゃないかな。

装幀買いという言葉はまだ生きているのだろうか。
話題の本をネットで買ったり、
インパクトある表紙デザインで目を引いたり
奇を衒ったレイアウトがポップなイメージを醸したり
電子書籍で読んだり、
そういう、イマドキの本の世界とはちょいと外れた
でも昔からある本の愛で方だ。

帯まで計算された端正な表紙デザイン、
凝ってセレクトされた紙の手触り、
見返しや花ぎれ、スピンまで細部への気遣い、
こだわって使われている書体、
本文の天、地、ノド、小口それぞれの絶妙なアキ、
見た目以上にズシリとくる存在感。
そういう造本すべてにワクワクするワタシは
「本の変態」とも言われた。

昨日、遅まきながら初めて
盛岡のインディペンデント書店として知られる
ブックナードさんに行ってみた。
こだわってセレクトされた本が山積みになっている。
内容はさまざまなのだか、
総じてどの本も装釘が素晴らしい。
内容など確認せずに装釘だけで買ってしまいそう。
こんな本たちに囲まれたい、
こういう本たちを手元に置いておきたいという
妙な衝動に駆られ、
大変なところに足を踏み入れた気がした😅
黙ってるとここの1/4ぐらいの本を買ってしまいそう。

改めて造本の大事さ、素敵さを再確認。
こんな本つくりたいなぁ。
写真の2冊の本をなぜ選んだかや感想は読んでから。
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「埋没した世界〜トランスジェンダーふたりの往復書簡〜」

2023-08-03 | 読書

昨年4月から今年4月まで
週刊金曜日で月イチの連載を持っていた。
毎月ひとりの性的マイノリティの方から話を聞き、ルポしてきた。
タイトルは「さまざまなわたし〜性的指向と性自認のリアル」。
当事者を身近に感じたことがない人たちに
その人生や想いを伝え、多様な人たちが共生できる社会を願って。
ゲイやレズビアンの人、バイセクシャルの人もいた。
トランスジェンダーやアセクシュアル、ポリアモリーもいた。
もちろん、自らも学ぶ必要を痛感し続けていたので
性的マイノリティに関する本をたくさん読んだ。
その中で最も興味深く、深い学びにつながったのが
周司あきらさんの本だった。
今回紹介の本書も、周司さんの本ということで購入。

今回紹介する本書は哲学書だ。
人はなぜ存在するか、なぜ生きるか、どう生きるか・・・
そしてこの2人の、往復書簡だからこその心の深淵まで。
「トランスジェンダー」と言っても単純じゃない。
ひとりひとりのアイデンティティや思いや感性などがあり
簡単に第三者が語れることではない。
昨年から今年にかけて私が書いた記事が
いかに浅い取材と内容だったか猛省させられた。
できることならトランスジェンダーの方だけでもやり直したい。
最終回に書いた私自身のことも。
その時より私自身のことも少し明確になった気がする。
詳しくここでカミングアウトするつもりはないが
私もある意味トランスジェンダーなのかも知れない。
(よく言われるM t Fではない)
というより、結構な割合の方々が様々な形のトランスではないのか?

私は「LGBTQ+」という言葉は使わない。
LやGやBやTなど、カテゴリーに分ける意味がわからないから。
カテゴリーに分けるのは当事者じゃない人たちが理解しやすくするため。
つまり当事者たちの必要に迫られた結果じゃない。
しかも当事者とそうでない人たちとの間に線引きの使われがちだ。
第一、性は多様で、グラデーションで、分けられない。
その実態も本書を読めばよくわかる。
マジョリティと言われるシスジェンダーの方々も
このグラデーションの中に入る方々がいそうだ。
たぶん本書のページをめくる人はこれまでの認識が覆され、
新たな理解を得ることができると思う。

「シスでヘテロでモノアモリーな世界の人たちには
 私たちは『ややこしい』存在に見えるのかも知れません。
 でも私たちからしたら、
 ややこしいのはそっちの世界の人たちです。
 私たちは、ただ生きているだけなのにね。シンプルに」

「埋没した世界〜トランスジェンダーふたりの往復書簡〜」
五月あかり・周司あきら:著 明石書店

 
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「『若者の読書離れ』というウソ」

2023-07-26 | 読書

本書タイトルもさることながら
サブタイトルの
「中高生はどのくらい、どんな本を読んでいるのか」
に惹かれて購入。
先日取り上げた↓の本ともリンクして読んでみた。


大人が勝手に「読書離れ」「ラノベばかり」と決めつけ
嘆いてみせるという流れが昨今だったけれど
詳細なデータを駆使してその固定観念を覆してみせた。
まぁ、ゲームや漫画からの流れで本を手に取るという意味では
確かに大人達のイメージする読書のモチベーションの持ち方とは
ちょっと違うのかもしれないけれど
それでもいまだに太宰に人気があるというのは面白い。
私は基本的に
「漫画だろうが、図鑑だろうが、ラノベだろうが、
 その時に読みたいものを読めばいい。
 その習慣が大人になってもちゃんと身につき
 そのとき読みたいもの、必要なものを読むことにつながる。
 まったく本を開く習慣がない人は
 大人になって必要に迫られても手に取らない」
という考え方なので、こういうモチベーションの持ち方もOKだ。

小・中学生に人気の本には三大ニーズがあるという。
1 正負両方に感情を揺さぶる
2 思春期の自意識、反抗心、本音に訴える
3 読む前から得られる感情がわかり、読みやすい
そして人気の型も4つ挙げられている
①自意識+どんでん返し+真情爆発
②子どもが大人に勝つ
③デスゲーム、サバイバル、脱出ゲーム
④「余命もの(死亡確定ロマンス)と「死者との再会・交流」
要は4つの型が三大ニーズを満たすことが多いと。
これを見て笑ってしまった。
これって今に始まったことじゃないよね、昔からだ😁
私が子どもの頃好きだった「長靴下のピッピ」や「宝島」など
あるいはコロボックルものなども見事に当てはまる。

ところで著者はMBAを取得後に出版社で編集に携わり、
その独立してウェブカルチャーや子どもの文化を研究している
評論家、作家とのこと。
面白い経歴で、アプローチの仕方も独特だ。
なるほど本書も面白い。
ほんの一部を紹介したけれど、最初から最後まで納得。

「『若者の読書離れ』というウソ」飯田一史:著 平凡社新書

 
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「言語オタクが友だちに700日間語り続けて引きずり込んだ言語沼〜ゆる言語学ラジオ〜」

2023-07-20 | 読書

もしも人間の嗜好に遺伝というものがあるのなら
「言語好き」は間違いなく親父から私へ、そして長男へと
受け継がれてきた血だろうと思う。
親父は大学でフランス語を専攻するも英語の教免も取得。
(戦後すぐにフランス語ってとこがマニアック)
英語教員をしていたが、プライベートでも
とにかくフランス語や英語を使ってみたくて仕方ない人だった。
私が小学生の頃、京都に家族旅行をした時、
田舎では珍しい外国人の姿を多数見かけた親父は大興奮し
手当たり次第に声をかけ、とうとう家族と逸れて迷子になった🤣
宗教布教のために来日し、自転車で家々を回って歩いていた
アメリカの青年たちがこんな田舎にもいたのだが、
親父は彼らを歓迎して家に上げ、機関銃のように英語で話しかける
彼らはその間隙を縫って日本語で布教しようとするが
その隙すらなかなか与えない。
とうとう「もう来ません」と帰っていった😁

長男は小学生の頃からテレビのハングル語講座を見、
中学生の頃に神楽でタイに行ってからはタイ語にハマる。
高校2年夏休みには1ヶ月間タイへ短期留学し
大学の専攻も本当ならアジアの言語学の方へ行きたかったはず。
(残念ながら第2志望のアジア研究=文化人類学へ)
ラオス語、クメール語(カンボジアの言葉)、インドネシア語など
東南アジア国々で使われている言語はもちろん
ベルベル語(モロッコやアルジェリアで話されている言葉)や
ラーンナー語(昔タイにあったラーンナー王朝の言葉)まで
とにかく一般的にはマイナーな言語が好きらしい。

英語、フランス語という、割と汎用性の高い語学好きだった親父、
英語のほか、アジア圏で使われる言語が貴重な長男と比べ
私の場合は日本語(しかも方言)が専門なので
彼らに比べると残念ながら潰しが効かない😅
とはいえ、3代にわたって「オタク」と言えるほどの嗜好ではある。

前置きが長くなったが
言語の面白さを、どんなに熱っぽく話しても
果たして誰かに理解してもらえるのだろうかと思ったりする中で本書。
700日間語り続けなきゃいけないのかー💦
とはいえ、本書で取り上げられているのは主に日本語。
潰しが効かなくたって、役に立たなくたって、こんなに面白い。
普段母語として無意識のうちに使っている言葉が
こんなにも謎を孕んでいて、こんなにも複雑だということが
まぁ面白くって仕方ない。
「アニマシー(有生性)」とか「音象徴」とか「濁音減価」とか
知らん言葉が出てきて、それも納得の面白さだし
何より一番面白かったのは母音と子音の分析。
確かにねー、「うちなーぐち」には母音が3つしかないと言われるし。

ということで、
700日にわたって語り続ける根性がないので
私のここまでの説明と、表紙や帯のコピーで興味持った人は
是非読んでみてほしい。
たぶん思っている以上に面白いと思うよ。
あっという間に読み終えられるし。

「言語オタクが友だちに700日間語り続けて引きずり込んだ言語沼
 〜ゆる言語学ラジオ〜」
水野太貴・堀元見:著 あさ出版

 
コメント
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