「悼む人」と同じ直木賞でも雰囲気がちがうものだねぇ。
昭和初期の風景や、当時の華族生活を面白く読んだ。
一応ミステリというカテゴリーらしいけど
本格的にミステリとして読むと肩透かしかもしれない。
でも本書タイトルにもなった短編最後の「鷺と雪」は
華族の楽天的な生活の中にも垣間見えてきた
開戦前夜の重苦しい雰囲気をうまく伝えていると思う。
解説の佳多山大地さんが
この物語の舞台となった当時の世相の一端を
下記のように書いている。
現代に照らし合わせてみて・・・背筋が一瞬凍った。
(昭和初期、江戸川乱歩「人間豹」に出てきた)
ニヤニヤとした笑い顔の「レビュー仮面」なるものが急に流行り出し、
当初は劇場の客が観劇するときだけ被っていたものが、
そのうち街頭にも進出し、
「銀座の夜」をそぞろ歩きする過半の人々が、
同じ笑いの表情に変わって行った。
電車の中も、地下鉄の中も、
同一表情の男女によってうずめられた」のである。
われらがベッキーさんの恐れた、
間もなく押し寄せてくる<時代>とは、
まさしく人が同じ表情でいないことには
弾き出されてしまう時代だった・・・
それぞれの仮面の下には、
千差万別の<素顔>があったはずだが。
「鷺と雪」北村薫 著 文春文庫
昭和初期の風景や、当時の華族生活を面白く読んだ。
一応ミステリというカテゴリーらしいけど
本格的にミステリとして読むと肩透かしかもしれない。
でも本書タイトルにもなった短編最後の「鷺と雪」は
華族の楽天的な生活の中にも垣間見えてきた
開戦前夜の重苦しい雰囲気をうまく伝えていると思う。
解説の佳多山大地さんが
この物語の舞台となった当時の世相の一端を
下記のように書いている。
現代に照らし合わせてみて・・・背筋が一瞬凍った。
(昭和初期、江戸川乱歩「人間豹」に出てきた)
ニヤニヤとした笑い顔の「レビュー仮面」なるものが急に流行り出し、
当初は劇場の客が観劇するときだけ被っていたものが、
そのうち街頭にも進出し、
「銀座の夜」をそぞろ歩きする過半の人々が、
同じ笑いの表情に変わって行った。
電車の中も、地下鉄の中も、
同一表情の男女によってうずめられた」のである。
われらがベッキーさんの恐れた、
間もなく押し寄せてくる<時代>とは、
まさしく人が同じ表情でいないことには
弾き出されてしまう時代だった・・・
それぞれの仮面の下には、
千差万別の<素顔>があったはずだが。
「鷺と雪」北村薫 著 文春文庫