いぶろぐ

3割打者の凡打率は7割。そんなブログ。

あずき逝く

2020-01-13 00:15:11 | 超・いぶたろう日記

あれは僕がまだバンドマンだった頃のことです。
2005年の5月だったと記憶しています。
ツアー先の大阪でGWのイベントライブ日程を消化し、
その後プライベートで旅行を楽しむ…はずが、
なぜか吸い込まれるように立ち寄ってしまったペットショップ、
その名もいまはなき梅田『わんわんらんど』。

店頭にいたのは三匹の仔犬たち。
そのうちの二匹がそれぞれに猛アピールしてくる中で、
僕の目を引いたのはどこか遠慮がちに
隅っこでこちらをじっと見ていた一頭の雌犬。
マルチーズとミニチュアダックスのミックス、独特の胴長短足フォルム、
真っ白な毛にほんの少しあずき色が雑じった彼女に僕は魅入られてしまいました。

時給いくらのバイトを掛け持ち、
貧乏バンドマンだった僕にはとても手が届かないはずの金額。
しかしあろうことかカードで購入即決。
当時バイト勤務だった塾で仕事ぶりを認められ、
初めて「ボーナス」が貰えることになっていたのを当て込んで、
なんと全額を注ぎ込んでしまったのでした。

…普通旅先で犬買わないよねえ(笑)。
帰りの新幹線では名前をどうしようか、『ボーナス』にしたろうか、などと悩み、ともかく運命的な出会いを果たしたのでした。

それからの15年弱は、
もう語り尽くせないほどの楽しい思い出で彩られています。
バンドを辞めて塾屋になり、やがて結婚し、前職を離れ、独立し…
人生のどの場面でもあずきの存在に慰められ、励まされ、
喜びも悲しみも分かち合ってきました。
あちこち連れ歩くのも楽しかった。
膨大な数の写真がそれらを物語っています。

とにかく人懐こくて、僕のことも大好きで、
いつでもどこでも抱っこをせがむし、家の中でもついて回るし、
風呂に入れば脱衣所で必ず待っているし、
ソファーに座れば必ず前足でチョイチョイと「膝に載せて」アピール、
布団に入れば潜り込んでくるし、
果てはトイレの中にまで追いかけてくる始末。
出勤の時はきまって行くな行くな私も連れてけと吠えまくられ、
ズボンの裾を引っ張られ、玄関まで先回りしてもう大変。
帰宅すると玄関先まで飛び出してきて、
しゃがんだ僕の膝に飛び乗って顔中ベロベロ舐めまわされてもう大変。
トイレもちゃんとするし、お腹空いたら餌皿くわえて催促しにくるし、
散歩にリードも要らないし、もう何もかもパーフェクト、
僕にとって最高に理想の犬でした。

僕もまたあずきをベタベタに可愛がっており、もう家に帰るとデレデレでした。
子供の居なかった僕らには大袈裟でなく、
まるで実の娘のような存在だったでしょう。
この15年を語るのに、
先に亡くなったミルコとこの小豆を抜きにすることはできません。
まごうことなき家族でした。

そんなあずきとも、とうとうお別れの日が来てしまいました。
本日午前0時15分、あずきは14歳9ヶ月15日で旅立ってしまいました。
僕と妻に見守られながらの、安らかな最期でした。

以前から肺と心臓に持病があり、
ここ2年ほどは投薬でコントロールしている状況だったのですが、
とうとう腎不全を発症してしまい、手の施しようもありませんでした。

5年前に子宮内膜症と乳腺ガンを患い、瀕死のところから劇的な回復。
2年前にも腫瘍が肺に転移、
肺の6分の1を切り取る大手術を経て、またも奇跡の生還。
飼い主の不徳で様々な大病を患いましたが、
ここまで本当によく頑張ってくれました。

今回はもうさすがに手術に堪える体力もなく、
また切除しようもない病状なので、あきらめざるを得ません。
うすうす覚悟もできていました。
ただ、僕が仕事で不在の時にひとり寂しく逝ってしまうなんてことがないといいなあ…と願っていました。
そんな僕の気持ちを推し量ったかのように、
あずきはこの繁忙期のここしかないという休日に、
ゆっくりと丸一日時間をかけてお別れをしてくれました。

最期がまた実にあずきらしい健気ぶりで泣かされました。
緩和ケアの病院から帰り、少し苦痛も和らいだように見えるものの、
意識は混濁、おそらく今夜がヤマだろうと覚悟を決めました。
ベッドを整えて、久々に一緒に寝てやることにしました。
やがて僕が息子を風呂に入れる時間になり、

「おいあずき、まだ逝くんじゃないぞ、いまちょっと風呂入ってくるからな、出るまで待ってろよ、今夜は一緒に寝てやるからな」

と耳打ちしました。
犬は飼い主のタイミングを見ていて、
帰りを待ってから逝くもの、
ふと目を離した数分のうちにそっと逝くもの、いろいろ居るようです。
あずきは僕の言うことは本当によく聞くので、念を押していったのです。

風呂から出て様子を見に行ったところ、フシュッと鼻を鳴らし、
よかった、まだ生きてる…と安堵した直後のことです。
さっきと同じように耳元で、

「おいあずき、ちゃんと待っててくれたな、ありがとうな、エライぞ、一緒に寝ような。もう無理して起きてなくてもいいんだぞ、おやすみあずき」

と声をかけている途中、大きく二回呼吸をしたかと思うと、
そのまま静かになりました。
すぐにそれは察せられました。
あずきは言いつけ通りに僕をギリギリまで待ち、
そして僕の声を待って逝ったのです。
本当に愛娘あずきらしい、忠実で健気な最期でした。

ミルコの時もそうでしたが、
犬とはいえ10年以上も家族同然で過ごしてきましたから、
大変辛いものがありますね。
愛犬が2匹とも旅立ってしまい、寂しい限りです。
でも親類や友人たちにもとても可愛がってもらって、
みんなに愛されて、ミルコもあずきも本当に幸せだったと思います。

そしていま、愛息がいてくれることが、
ものすごく大きな支えになっていると感じます。
あずきを喪って悲しいこと、寂しいことには変わりありませんが、
愛息という眩しいほどに明るい灯火がひとつあるお陰で、
家の中が真っ暗にならずに済んでいます。
ようやく苦しみから解放されて楽になれたねと、
いつかまたどこかで会おうねと、前向きな気持ちで送ってやれると思います。

長い長い記事になってしまいました。
こうして文字にすることで少し落ち着けた気もします。
読んでくださった方、ありがとうございます。

写真は先月の20日にトリミングのあと撮ってもらったものです。
本当に可愛らしい犬でした。
まさかここからひと月も経たずにお別れとは。儚いものです。
明日の火曜日に荼毘に付すことになりました。
精一杯明るく、感謝を込めて送ってやります。
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