いぶろぐ

3割打者の凡打率は7割。そんなブログ。

テレビを消してみませんか

2007-06-02 02:25:08 | 似非哲学の部屋
僕は仕事柄、
「ゴールデンタイム」と呼ばれる時間帯にテレビを観ることがない。
特に「バラエティ」と呼ばれるものはほとんど観ない。
せいぜいが夜中のニュース、映画、あとはスポーツくらいだ。
そのせいで世の中の流行り廃り、今人気のドラマ・芸能人、
売れているアーティスト、
そういったものの情報に触れる機会がない。
たまに生徒達にその手の話題をふられても、
まーったく知らないことが多い。
テレビが全て、の年代でもあるだろう彼らには、
よく言って世捨て人、悪く言えば時代遅れのおっさん、
まあそんな風に映っているかもしれないが(笑)。

でもそれを僕が気にしているかと言えばもちろんそんなこともなく、
不自由しているということもない。
たまの休日、テレビをつけてみるとその浅はかさにぞっとする。
ドラマはストーリーに深みも味わいもなく、
演者も不勉強・技量不足でまさに学芸会のそれ。
お笑いは「ギャグ」と呼ばれるワンフレーズを判で押したようにくり返し、
「ここで笑え、さもなくばお前が悪い」
と言わんばかりのお仕着せがましいテンションだけのコンパ芸。
そして出演者の表現力の乏しさを補うために、
「感動」や「笑い」を強要するかのような、
押しつけがましいテロップの洪水が押し寄せるのだ。

民放は視聴率がすべてであって、
音楽はセールスが全てであって、
芸能人は露出の多寡が全てであって、
そこに理念なんかない。
いたずらに消耗をくり返すだけで、
もはや完全に行き場を見失っている。
ひとつ売れると雨後の竹の子のごとくコピーがあふれ、
その中で注目を集めるために、
「最後の天才登場」「かつてない感動」「9割が涙」
「芸能界の裏事情大暴露」「大物ゲストが激怒」などなど、
刺激的な語感だけで中身のまるでないキャッチコピーが踊る。
中身の乏しさとは裏腹に、
ドラゴンボールの敵キャラよろしく、
(俺はあいつの千倍強い、そのまた千倍強いよこいつみたいな)
ハッタリはどんどんインフレを起こし、
視聴者の方も感覚は麻痺していく。
そうして鈍りきった視聴者にさらに訴える、
より刺激の強い、偏った、ちぐはぐなパッチワーク番組を作っていく。
得てして、下世話で、下品で、大げさだ。

理想を追った結果、それが評価されて金銭や名誉を獲得するのではなく、
最初から金銭と名誉のみが目的になってしまっているから、
文化と呼ぶべきものが生まれないのだ。
楽しければいい、面白ければいい、お手軽に泣ければいい、
しかもなるべく頭は使いたくない、
わかりやすく呑み込みやすく、しかもあとでもたれない、
おかゆのようなエンターテイメントを。
まるで赤ん坊だ。
もちろん、そういうものがあったっていい。
中身のつまった、しっかりとした咀嚼が必要な、
頭を使うようなモノばかりじゃ息苦しい。
肩の力を抜いて何も考えずに楽しめるようなものは必要だろう。
でもそれしかないというのは問題じゃないか?
それしか支持されないんだから仕方ないってのか?
売れるものがよいものだという極論こそが資本主義の要諦だが、
それが無批判にまかり通るのはどうかと思う。
無節操な数字の追求の結果、
テレビはバカのためのものになっているし、
テレビしか話題に出来ないヤツは、バカだ。
僕と話の合わない連中は大概がこの部類だ。
テレビと流行ものしか話題にならない空間というのが苦痛でねえ…。
それが深夜のスタジオだったりするとさらに増幅されてねえ…(笑)。
寡黙な俺、想像つく?(笑)

ふと気づく。
このテレビの有り様はそのまま、
「大人」が眉をひそめる「現代の若者」像と一致する。
軽率で、軽薄で、刹那主義で、快楽主義で、身勝手で、無責任。
一言で言えばモラルのなさ、だ。
そういうものを求める社会がテレビを生んだのか、
テレビがそういう社会を作ったのか、
卵と鶏だ。

テレビは、消そう。

思い切って離れてしまえば、色んなモノが見えてくる。
テレビの紡ぎ出す共同幻想に、
如何に世の中が踊らされているかも解る。
テレビの提供するものが世の中のスタンダードである、
そんな錯覚からも自由になれる。
ジャンプを読まなくても、ファミコンに関心がなくても、
クラスの中で独特の存在感があればやっていけた。
もちろんそれには強さが必要だが。
安易な流行モノや共通の話題に頼らない、
自分なりのスタンスを築こう。
本当に価値のあるモノなのかどうか、
周囲も権威も気にせずに、自分の耳目で確かめよう。
北野武が松本人志が河瀬直美が、本当に天才なのかどうか。
カンヌによる権威づけとテレビによる虚飾の前に、
異論を立てることすら許されない閉塞した文化社会はイヤだ。

こんな重くてカタい主張が大きな支持を得られるとは思ってもないが、
ここまで読んでくれたあなたなら、解ってもらえるような気もする。
そんな少数の共感を呼べたなら、書いた甲斐があるってもんだ。
Comments (2)
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