もう亡くなってしまったM.LeBlanc先生が2009年にReproduction of Domestic Animal誌に馬の子宮内膜炎についての論説を書いておられる。
全文は手に入れていないが、Pub Medから要約だけを読んでも新しい情報や考え方が含まれていて興味深い。
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Clinical and subclical endometritis in the mare: both threats to fertility.
雌馬の臨床的あるいは潜在的子宮内膜炎:どちらも繁殖性をおびやかす
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雌馬の繁殖障害の大きな原因となる子宮内膜炎は、細菌、精子、そして分娩後の炎症性浸出物の排泄の失敗から起こり、しばしば診断されていない。
生殖器の解剖学的問題、子宮筋層の収縮の問題、リンパ液の排泄の問題、粘膜繊毛上皮の排泄活動の問題、子宮頚管機能の問題、加えて脈管の変性、そして数年越しの炎症が子宮内膜炎への感受性の下地となる。
診断は子宮内の貯留液、膣炎、悪露、発情周期の短縮、子宮内の細胞の炎症所見、子宮検体の細菌培養陽性に基いて行われる。
しかし、潜在的な症例ではこれらの徴候は陰性かもしれない。
古典的な、見つけ易いstreptococcusによる子宮内膜炎では、刺激性の分泌亢進、水っぽい好中球豊富な滲出液が起こる。
対照的に、バイオフィルムの形成、粘りの強い滲出物、限局的な感染は潜在的な子宮内膜炎の特徴であり、通常はグラム陰性菌、真菌、staphylococcusによって引き起こされる。
潜在的な子宮内膜炎の徴候には、超音波画像診断での、交配後の過剰な水腫や子宮内膜縁の間の白い線がある。
加えて、子宮の生検組織、あるいは少量の子宮灌流液の培養が、グラム陰性細菌の検出では、スワブより倍ほど検出感度がある。
一方、子宮内膜炎の検査では、子宮の細胞学検査は培養の倍の感度がある。
子宮の生検は、潜んでいる炎症性の、そして、子宮の血管の弾性線維の破断のような退行性の変化を探り当てるかもしれない。
一方、子宮内視鏡検査は、超音波画像診断では観ることができない病巣に焦点を当てることができる。
潜在的な子宮内膜炎を持った繁殖雌馬は非繁殖期に超音波による注意深いモニタリングを必要とする。
非繁殖期の子宮洗浄、オキシトシン、子宮内抗生物質注入のような伝統的な治療に加える処置としては、交配前1時間の子宮洗浄、carbetocin、子宮頚管弛緩剤、抗生剤全身投与、子宮内へのキレート投与(EDTA-Tris)、粘液溶解剤(DMSO、kerosene、N-acetylcysteine)、副腎皮質ステロイド(prednisolone、dexamethasone)、免疫調整剤(Mycobacterium phleiそしてPropionibacterium acnes細胞壁抽出物)が挙げられる。
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症状のはっきりした臨床的な子宮内膜炎だけでなく、サブクリニカルな潜在性の子宮内膜炎も不受胎や不妊につながっている。
それを調べるには従来行われてきた子宮頚管粘液の細胞診や細菌培養では不充分で、子宮灌流液の細胞診や培養、あるいは子宮内膜のバイオプシーが必要かもしれない。
処置としても、子宮内への抗生物質投与だけではなく、新たな方法が模索されている。
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さて、あとは雑談。
子宮内に入れる薬剤として挙げられているkeroseneとは灯油のことだ。
灯油は刺激性がある。
飲むとひどい下痢を起こす。
・・・って飲んだことがあるのか?
実はある。
大学山岳部員だった頃、長期の冬山縦走登山のために秋に荷揚げ登山をして縦走路にデポ(食糧や燃料の貯え)をした。
金属製の缶の中に、漏れないようにポリタンクにいれた灯油や、米などの食糧を入れておいた。
冬に数日がかりで日高山脈の稜線まで登り、竹ざおに付けた小さな旗を目印にデポ缶を雪の中から掘り出した。
ところが、気温の変化でポリタンク内の圧が変わったせいか、デポ缶の中は灯油臭かった。
ビニル袋にしっかり入れていた米にも灯油の匂いがついていた。
しかし、その米を食べないと登山を続けられない。
雪を溶かした水で炊いた米はそうひどい匂いではなく食べられそうだった。
で、その夜、私はひどい下痢。
冬山ではトイレに行きたくなってもそう簡単ではない。
冬用シュラフの口はしっかり縛って閉じているし、その上にシュラフカヴァーがかかっているし、冬山では登山靴を履かないとテントから出れないし、
冬用テントの入り口は紐でしっかり縛ってあるし、外はマイナス10℃の世界だし、稜線では風が吹きすさんでいる。
水下痢だった;笑。
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私の下痢は1日で治まった。
登山を続け、カムイエクウチカウシ岳(クマが転がり落ちるところという意味)に登頂した。
3人パーティーのうちもう一人は体調回復せず、頂上アタックはできなかった。
あとの一人は下痢もしなかった。
kerosene経口投与による腸炎実験発症と個体差を体感した獣医学的経験だった;笑。
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何してる?
秋を探してるのサ
全文は手に入れていないが、Pub Medから要約だけを読んでも新しい情報や考え方が含まれていて興味深い。
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Clinical and subclical endometritis in the mare: both threats to fertility.
雌馬の臨床的あるいは潜在的子宮内膜炎:どちらも繁殖性をおびやかす
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雌馬の繁殖障害の大きな原因となる子宮内膜炎は、細菌、精子、そして分娩後の炎症性浸出物の排泄の失敗から起こり、しばしば診断されていない。
生殖器の解剖学的問題、子宮筋層の収縮の問題、リンパ液の排泄の問題、粘膜繊毛上皮の排泄活動の問題、子宮頚管機能の問題、加えて脈管の変性、そして数年越しの炎症が子宮内膜炎への感受性の下地となる。
診断は子宮内の貯留液、膣炎、悪露、発情周期の短縮、子宮内の細胞の炎症所見、子宮検体の細菌培養陽性に基いて行われる。
しかし、潜在的な症例ではこれらの徴候は陰性かもしれない。
古典的な、見つけ易いstreptococcusによる子宮内膜炎では、刺激性の分泌亢進、水っぽい好中球豊富な滲出液が起こる。
対照的に、バイオフィルムの形成、粘りの強い滲出物、限局的な感染は潜在的な子宮内膜炎の特徴であり、通常はグラム陰性菌、真菌、staphylococcusによって引き起こされる。
潜在的な子宮内膜炎の徴候には、超音波画像診断での、交配後の過剰な水腫や子宮内膜縁の間の白い線がある。
加えて、子宮の生検組織、あるいは少量の子宮灌流液の培養が、グラム陰性細菌の検出では、スワブより倍ほど検出感度がある。
一方、子宮内膜炎の検査では、子宮の細胞学検査は培養の倍の感度がある。
子宮の生検は、潜んでいる炎症性の、そして、子宮の血管の弾性線維の破断のような退行性の変化を探り当てるかもしれない。
一方、子宮内視鏡検査は、超音波画像診断では観ることができない病巣に焦点を当てることができる。
潜在的な子宮内膜炎を持った繁殖雌馬は非繁殖期に超音波による注意深いモニタリングを必要とする。
非繁殖期の子宮洗浄、オキシトシン、子宮内抗生物質注入のような伝統的な治療に加える処置としては、交配前1時間の子宮洗浄、carbetocin、子宮頚管弛緩剤、抗生剤全身投与、子宮内へのキレート投与(EDTA-Tris)、粘液溶解剤(DMSO、kerosene、N-acetylcysteine)、副腎皮質ステロイド(prednisolone、dexamethasone)、免疫調整剤(Mycobacterium phleiそしてPropionibacterium acnes細胞壁抽出物)が挙げられる。
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症状のはっきりした臨床的な子宮内膜炎だけでなく、サブクリニカルな潜在性の子宮内膜炎も不受胎や不妊につながっている。
それを調べるには従来行われてきた子宮頚管粘液の細胞診や細菌培養では不充分で、子宮灌流液の細胞診や培養、あるいは子宮内膜のバイオプシーが必要かもしれない。
処置としても、子宮内への抗生物質投与だけではなく、新たな方法が模索されている。
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さて、あとは雑談。
子宮内に入れる薬剤として挙げられているkeroseneとは灯油のことだ。
灯油は刺激性がある。
飲むとひどい下痢を起こす。
・・・って飲んだことがあるのか?
実はある。
大学山岳部員だった頃、長期の冬山縦走登山のために秋に荷揚げ登山をして縦走路にデポ(食糧や燃料の貯え)をした。
金属製の缶の中に、漏れないようにポリタンクにいれた灯油や、米などの食糧を入れておいた。
冬に数日がかりで日高山脈の稜線まで登り、竹ざおに付けた小さな旗を目印にデポ缶を雪の中から掘り出した。
ところが、気温の変化でポリタンク内の圧が変わったせいか、デポ缶の中は灯油臭かった。
ビニル袋にしっかり入れていた米にも灯油の匂いがついていた。
しかし、その米を食べないと登山を続けられない。
雪を溶かした水で炊いた米はそうひどい匂いではなく食べられそうだった。
で、その夜、私はひどい下痢。
冬山ではトイレに行きたくなってもそう簡単ではない。
冬用シュラフの口はしっかり縛って閉じているし、その上にシュラフカヴァーがかかっているし、冬山では登山靴を履かないとテントから出れないし、
冬用テントの入り口は紐でしっかり縛ってあるし、外はマイナス10℃の世界だし、稜線では風が吹きすさんでいる。
水下痢だった;笑。
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私の下痢は1日で治まった。
登山を続け、カムイエクウチカウシ岳(クマが転がり落ちるところという意味)に登頂した。
3人パーティーのうちもう一人は体調回復せず、頂上アタックはできなかった。
あとの一人は下痢もしなかった。
kerosene経口投与による腸炎実験発症と個体差を体感した獣医学的経験だった;笑。
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何してる?
秋を探してるのサ
人体実験、とは言わないのですね。
オラ君が見つけた秋は、何ですか?
なんて、いろいろ考えながら読み進んでしましたが、「実はある。」で小休止いれました。あるんですか。
3名の重症度の差が何によるものなのかつきつめていただきたいくらい衝撃的でした。
治せない病気に、山に登りたい病も加えてほしいくらいです。
赤く色づいた葉より、ほかのワンコのオシッコの匂いなんでしょうね。動物ってハードボイルドです。
山に登りたい病は治らないでしょうね。でも山に登れなくなる病に負けて登れなくなるのでしょう。