12ヶ月齢のホルスタイン育成牛が、凍ったパドックで怪我をして、その痕が化膿して治らない。
X線撮影をしたら、腐骨があって、その周りが骨柩になってしまっていた。
こうなると手術して腐骨を取り出さないと治らない。
GGEにキシラジンとケタミンを混ぜたトリプルドリップをしている。
気管挿管しているので嘔吐による誤嚥の心配はないが、反芻胃を持つ牛の手術は手っ取り早く終わらせたい。
全身麻酔も浅く維持したいので、局所麻酔も併用する。
珍しいことにこの牛は、2箇所に骨柩ができていた。
手分けしてそれぞれ腐骨(血行を失って真っ白)を摘出し、周囲の贅骨を削り、骨柩の中をきれいにする。
x線画像で、
中足骨近位背側の骨柩。
遠位外側の骨柩。
骨柩を横から透かすように見ると骨皮質の中に浮いているように見えるし、
正面から見ると、腐骨の周りに吸収像があり、その周りに骨増勢があるのがわかる。
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こちらは、近位部の腐骨と骨柩を横から透かすように撮ったX線画像。
掘るべき場所を確認するために、鉗子を入れて撮影している。
腐骨を見つけるのに苦労することもある。
贅骨に取り囲まれているからだ。
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遠位部の腐骨を取り出し終えたところ。
近位部の腐骨はまだ残っている。
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近位部も遠位部も腐骨を摘出したところ。
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骨柩症は牛の方が馬より多い。
しかし、馬でもあって、そのときは牛での経験が役に立つように思う。
複数の種類の動物を扱う獣医師の利点であり、醍醐味かもしれない。
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私達の地域は馬の生産地なのでX線装置があり、X線撮影する習慣ができている。
しかし、肉牛や酪農地帯ではこのような骨柩、腐骨の症例はどうなっているのだろう。
化膿が続き、跛行が続きながら放置されていたりするのだろうか・・・・・
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今日は、1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。
黒毛和種子牛の中足骨の骨柩症。
今回紹介した症例とは別!
午後、2歳育成馬の声嚢声帯切除。
夕方、1歳馬の癒着疝痛の開腹手術。
前年度は診療所でも1例手術し治癒したようです。
X線撮影も比較的早期に実施しますし、検査に積極的な獣医、農家が多いと感じています。
さすがに化膿が続き、跛行が続きながら放置する獣医はいないと思ってますが。。。
私の診療経験では残念ながら、放置されている牛もしばしば見かけます。
診療依頼があったときは既に悪化し、廃用がらみの敗戦投手の場合があります。
X線撮影の頻度は上がっていると思いますが
日高地区の足元にも及ばないでしょう・・・
腐骨除去は私には経験がありません。
運動不足、過密、滑走転倒、牛床の汚染、と
牛の四肢は以前にも増して傷んでいるはずなので
何とかしなければならないのですけど・・・
全国のNOSAI獣医師が集まる講習会で尋ねたら、X線撮影装置がある診療所が半分くらい、よくX線撮影する獣医師は2-3割でした。
腐骨、骨柩はX線撮影しないと診断や部位の特定ができないので、7-8割の地区ではどうしているんだろうと思ったしだいです。
化膿していても、跛行が続いても、放っておくとどうなるんだろう?・・・という純粋に獣医学的興味はさておいて、たぶん完治はありえず、こじけて廃用か自家淘汰かなと思っています。
獣医さんを呼んで治療してもらっても治らなくて、そのうちあきらめて・・・