真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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行きつけのお店のブログ、下戸なのに。しかも閉めたんだけどね
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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誰にでもイヤラシイ秘密がある
や行
/
2019年02月26日
「
誰にでもイヤラシイ秘密がある
」(2018/制作:オフィス吉行/提供:オーピー映画/脚本・監督:吉行由実/撮影:藍河兼一/録音:大塚学/音楽:柿崎圭祐/編集:中野貴雄/助監督:江尻大/整音:西山秀明/効果:うみねこ音響/グラフィック:竹内雅乃/タイトル:佐藤京介/スチール:本田あきら/監督助手:井上卓馬、他一名/撮影助手:赤羽一真、他一名/ポストプロダクション:スノビッシュプロダクツ/仕上げ:東映ラボ・テック/協力:南長崎エリート/出演:一ノ瀬恋・桐島美奈子・吉岡沙華・可児正光・安藤ヒロキオ・白石雅彦・国沢実・Gregory Tuichin・Sergey Viasov・吉行由実・KAZUMI・東京JOE・中村勝則・松島政一・郡司将史・鎌田一利・山本宗介)。出演者中、Gregory TuichinとSergey Viasovに、KAZUMIから鎌田一利までは本篇クレジットのみ、クレジット戦終盤に力尽きる。
尺を優雅に費やすおヨーロッパ映画風のオープニング・クレジットはさて措き、七時過ぎに武井典子(一ノ瀬)が目覚めると、ベッドの隣に夫の姿はなかつた。別室で寝てゐた青年実業家で毎晩帰りの遅い明夫(山本)を起こし、手作りジャムの瓶が卓に並ぶ、如何にもインスタ映えしさうな朝食。噛み合はないか擦れ違ふ会話の末に、明夫が漫然と出社してタイトル・イン。典子がこの若さ―別に疑はしくない公称二十三歳―でレスを拗らせる一方、後述する成瀬の典子に対する呼称が山下である点をみるに、結構最近離婚した母の春江(吉行)は典子の高校担任であつた森川(国沢)と、甚だ残念ながら劇中絡みにまでは至らないまゝに濃厚な関係を謳歌する。自宅ヨガからの、春江の電話に遮られるワンマンショーを経て、外出した典子は開店前のバー「アモーレ」店内、ママの佐伯理恵(桐島)と楠田慎吾(安藤)が乳繰り合ふのを窓ガラス越しに目撃、その場は仰天して立ち去る。葛城ユキ系のKAZUMIがインストラクターのヨガ教室(ほかに女子二名と男子一名が生徒に見切れる)にて、典子は理恵と改めてミーツ。こんなそんなで「アモーレ」に遊びに行つた典子は、取引先(鎌田一利と松島政一か郡司将史)と来店した、高校時代の同級生・成瀬健二(可児)と再会する。当時、典子と成瀬君は一度だけキスまでならしたことがあつた。そんな最中、理恵が楠田のシンガポール長期出張に同行するゆゑ、その間典子がアモーレを任される大飛躍、もとい格好となる。
配役残り、暗がりで引くと内藤忠司にしか見えない東京JOEは、典子アモーレ初来店時のカウンター客。郡司将史か松島政一は、典子が任されたアモーレ、セカンドまでの撮影部×EJDらと賑はふカウンター要員、もう一人誰かゐる。吉岡沙華はアフターかビフォアか知らんけど、客とアモーレをよく使ふデリヘル嬢・リンリン、中村勝則がリンリンの客。Gregory Tuichinと、ex.
黒蛇会
のSergey Viasovは、何時も二人連れでアモーレに来る陽気な外国人・マイクとテリー、正直どつちがどつちかは特定不能。そして中村勝則でも三人目の国沢実でもなく、吉岡沙華を介錯する白石雅彦が、リンリンがアモーレに連れて来る矢張り客の山下にして、春江と別れた典子父。疑似、あるいは方便“パパ”と飲みに来たリンリンの前で、リアル娘である典子が「パパ!?」と目を丸くするのと、山下に続きリンリンが連れて来た森川先生も、元教へ子達と対面し壮絶な爆死を遂げる一連は笑かせる。
一ノ瀬恋が耳馴染のない名前の割に見覚えはあると思つてゐたら、まゝある所属事務所移籍に伴ひ改名した、二作前の2017年第一作「
股間の純真 ポロリとつながる
」主演のex.あゆな虹恋であつた吉行由実2018年一本きり作。三年もの御無沙汰といふことは、新婚当初からなのかよとしか思へない不自然な若妻が、華麗か豪快なマッチポンプも交へお盛んな―主に中高年の―周囲に振り回される。直截なところ、物語自体は全く以て何てことない今作の特徴は、2015年第二作「
お昼の猥談 若妻の異常な性体験
」の甘美よもう一度と挑んだ、吉行由実ならではの女子トークピンク。尤も、離婚事由が性格でなく、あくまで性―生活―の不一致と良江の口からこの期に聞かされた典子が、「親の性生活なんて知りたくないはよ」とキュートに臍を曲げてみせるカットは瑞々しいものの、流石に相手が吉行由実か桐島美奈子となると、奥田咲と羽月希の、あの二人がしかも全裸で、キャイキャイ普通にスイーツに舌鼓を打つ奇跡のシークエンスには些かならず遠い。かといつて吉岡沙華(a.k.a.春野ゆりか・中山あゆか、らしい)では、馬面以前に口跡が覚束なく論外。女子トークピンクとしては不発気味にせよ、ビリング頭と二番手・三番手が、各々三回・二回・一回の本濡れ場をこなす教科書的な構成はスマートの極み。見かけ通りでは詰まらない、秘密があるからこそ輝けると、森川先生との交際を典子に告白した良江が公開題も珍しく即したテーマをサラッと開陳するのは、とかく公開題がへべれけである例が多いピンク映画にあつてはさりげなく光り、武井夫婦が燻らせる火種も、幾分以上の力技込みで諸々万事回収なり解消してみせる。グッドルッキングな男優部にヒロインがお姫様のやうに扱はれるハーレクインな濡れ場は、それはそれでデジタルのクリアさにより親和する吉行由実の持ち味ないし真骨頂。ワーギャー騒ぐには値しないともいへ、綺麗な綺麗な一作である。
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