真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
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本番授業 教へ子に、教室で/ex.DMM戦
あ行
/
2019年02月23日
「
本番授業 教へ子に、教室で
」(1996/企画・製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/監督:坂本太/脚本:有田琉人/プロデューサー:伍代俊介/撮影:創優和/照明:三浦方雄/編集:金子尚樹 ㈲フィルムクラフト/助監督:上田良津/製作担当:真弓学/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学/監督助手:加藤義一/撮影助手:井深武石・国松正義/照明助手:澤登晃/ヘアーメイク:大塚春江/スチール:本田あきら/出演:河村恵美子・林由美香・小川真実・野上正義・平賀勘一・大場政則)。
角度で意図的に隠したのか、絶妙に校名が読めない銘板。淡々と校舎の画を連ねクレジット起動、無人の教室にタイトル・イン。明けて本篇開巻を飾るのは、尺八を吹くウルットラどエロい尻のライン。ギアをトップのその先に一息で捻じ込む、坂本太のエクストリームが清しい。私立何処そこ高等学校(仮称)英語教師の町田美佐子(河村恵美子/吉行由美のアテレコ)が、恋人の同僚教師・平岡(平賀)を高めのホテルみたいにダダッ広い自室に連れ込んでの、灯りを消す点けるの攻防戦を繰り広げつつの絡み初戦。本来ならば見えなささうでギリッギリ見える絶妙な光量を保つてゐるものの、小屋の上映環境如何によつては、容易く漆黒に沈んでしまふにさうゐない。事後教師の仮面を被つた美佐子が生真面目すぎると、平岡が一応テーマらしきものを投げはする。明けたカットが、まさかの新幹線。緩やかにひかり号が減速する線路脇の坂道を、俳優部が下から歩いて来る形でのフレーム・イン。純然たる重量級通俗ポルノの中にも、つい油断してゐると掛け値なく映画的なショットを放り込んで来る辺り、フィルハ作の侮れないところ。卒業が危ふい不良生徒の補習に関し、学年主任から呼出を喰らつた美佐子は、数学教師の栗山真弓(林)に気が重い旨素直に打ち明ける。
配役残り小川真実が学年主任の宮川で、ペッタペタに撫でつけたオールバックに馬鹿デカい鼈甲―風―フレーム、妙にレトロなルックスに作り込んだガミさんが、宮川とズッブズブといふかグッチョングチョンとでもいふか、兎も角特濃な男女の仲にあるPTA会長・黒田。そして大場政則(ex.大場政則で田原政人)が、件の不良生徒・クラモト潤一、間抜け面で魔少年ぶりやがるのが猛烈に腹が立つ。その他は演出部の生徒要員さへ影ひとつ見切れない、ミニマム布陣。
国映ばかり見てるとシネフィルになるから、坂本太1996年第一作。ついでといつては語弊もあれ、ピンクに本番もへつたくれもない―極々稀にこともない―“本番授業”二部作第一作が、浜野佐知の1994年矢張りか偶々第一作「
本番授業 巨乳にぶつかけろ!
」(脚本:山崎邦紀/主演:君矢摩子)。シレッと平勘が皆勤を果たしてゐたりするのは、如何にも量産型娯楽映画らしい静かなファインプレー。
理事長の息子(潤一)とかいふステレオタイプなアンタッチャブルが、補習事業に託けて美人教師を手篭めにする。フランス書院ばりに類型的極まりない物語の中、潤一といふか要は大場政則が「上の口は嫌がつても、下の口は喜んでるぜ」の苔も枯れた常套句を繰り出すに至つては、凄え!坂本太は機軸なり意匠の新しさなんて求めてゐない、些末なオリジナリティー如き易々と放棄してみせたと、グルッと一周して感動した。反面、筆の根も乾かぬうちに全く逆の与太を吹くやうだが、一度目の強姦未遂を訴へた美佐子に対し、所謂マン臭を隠すための体罰行為とかいふ、潤一側からのへべれけな主張を全肯定する黒田と宮川は、二人がかりで美佐子の
観音様を見分しようとする
。世界観がアメイジングすぎて寧ろクラクラ来る、底の抜け倒したシークエンスを堂々と放つておいて、後に宮川が再度美沙子の籠絡を試みる件に際しては、“自分の殻”だの“聖職者といふ自意識”だの“本当の欲望”だのと、ペッラペラの方便を臆面もなく垂れてのけるのは坂本太の持ち味。そもそも、幾ら福笑ひのやうな面相をしてゐるからといつて、これではトメに配したにも関らず潤一が道化に過ぎなくなるリスクに一瞥だに呉れず、美佐子の開花を目し、平岡が宮川と通じてゐた超展開に突入するに及んで、流石に端から外れてゐた箍といへども挙句木端微塵。クライマックスは、並走する平岡V.S.宮川戦と、適当な空き部屋に黒板と机を置いただけの“特別教育室”に於ける、美佐子V.S.潤一戦。残り尺もいよいよ残り僅かなタイミング、何はともあれこのまゝヒロインの濡れ場で逃げきるものかと思ひきや、定石を破るどころか破壊する土壇場中の土壇場で、改めて平勘とオガマミが飛び込んで来る破天荒なクロスには素面で度肝を抜かれた。寧ろ、これで主演女優がエクセスライクの徒花―直截には毒花―を咲かせたならば、逆の意味で完成してゐたものを。頭頂部から顎までの距離は長くオッパイも小ぶりながら、男顔美人の範疇に辛うじて踏み止まる河村恵美子がしなやかな肢体を誇り、何よりこの人、煽情的に体をうねらせるアクションに長けてゐるのが、撮影部の助太刀も借りるとなほさら、ピンク映画にあつては圧倒的なアドバンテージ。女の裸に四の五のいはず滾るには申し分ない、鮮やかにして潔い一作である。
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