真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ホスト狂ひ 渇かない蜜汁」(2006/制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/撮影:長谷川卓也/編集:酒井正次/音楽:大場一魅/助監督:田中康文/監督助手:中川大資・玉垣絢子/撮影助手:松澤直徹・成田源/スチール:津田一郎/録音:シネキャビン/現像:東映ラボ・テック/協力:六本木キネマムーン・キネマ工房/挿入曲:『インスタントヌードル』・『新宿』・『焼鳥』作詞・作曲・歌:ナマグサボーイズ 『ブギウギ的』・『フランク永井風に』作詞・作曲・歌:大場一魅/出演:日高ゆりあ・三上夕希・結衣・野村貴浩・竹本泰志・本多菊次朗・池島ゆたか・水原香菜恵・山ノ手ぐり子・河村栞・春咲いつか・白井里佳・狩野千秋・木の実葉・吉原杏・アヤコ・有賀祐樹・津田篤・山名和俊・菊池透・佐藤光政・中田伸也・しょういち・神戸顕一・たんぽぽおさむ)。出演者中、山ノ手ぐり子と白井里佳に、吉原杏から神戸顕一までは本篇クレジットのみ。
 女達が吸ひ寄せられるホストクラブ、LAKE MOON。アミ(日高)を中心にNO.1ホスト・タクヤ(野村)の誕生日を祝ふ馬鹿騒ぎを余所に、この道三十年のキャリアを誇る中年ホスト・シュウ(たんぽぽおさむ、オーピー初参戦か)は、静かに客の相手を務める。この際ハッキリいふが、野村貴浩は映画に出る前に歯を治せ。若いホストに溺れ人生を踏み外しかける主人公、一人一人の客と心でも体でも正対するやう心掛ける熟練ホスト、熟練ホストに支へられ後押しされて、それぞれの幸せへと歩んで行く女達。類型的、といつてしまへば実も蓋もないが、夜の街を舞台とした正攻法の人間ドラマである。
 三上夕希は、シュウの客・恵子。医者である夫・名倉(本多)との間に子供が出来ない悩みを、シュウにストレートに打ち明ける。結衣は、客であると同時にシュウに関する記事を書いた、編集者のみずき。仕事仕事に追はれる内に、何時しか“負け犬”と称される齢に差しかゝつた旨を自嘲するみずきに対し、シュウは一人一人の、ひとつひとつの人生の掛け替へのなさを説く。さういふ百程の害もない代りに一欠片の利も無論ない説法を無用の長物と、あるいはより直截には糞の足しにもならぬと一刀に斬つて捨てるのは容易くもあるが、ひとまづはさて措く。二人の女優といふよりは、たんぽぽおさむがメインのシュウのパートは、真心を旨として、ひたむきに生きる男のドラマとしてそれなり以上によく出来てゐるからである。
 対して、本来ならば看板を堂々と背負はねばならない筈のアミのパートが、如何せん弱い。アミはタクヤに貢ぐ金のために、商社勤めのOLは辞めデリヘル嬢に身を落とす。結婚し実家の旅館業を継いで貰ふことまで勝手に夢想するに至り、徐々に重たくなつて来たタクヤからは疎んじられ、最終的にアミは新しい客らの前でこつ酷く愚弄される。絶望したアミは、タクヤに凶刃を振りかざす。展開のステレオタイプぶりに関してはプログラム・ピクチャーはそのくらゐ判り易くてちやうどいい、と思はなくもないので通り過ぎるが、肝心の、アミがそこにまで到達せねばならなかつた弱さ、あるいは闇のやうな部分が全く描かれてゐない。現代のデフォルト、といはれてしまへばさうであるやうに納得せぬでもないが、そこは矢張り、些かならず外堀の埋めに欠くところではなからうか。
 河村栞・木の実葉(ex.麻生みゅう)・春咲いつか、そして本職は国王の妃ではない方の女王様で序に最重量級の狩野千秋は、ホストクラブの客要員。千秋女王様が、アミを捨てたタクヤが選んだ次の客、あるいはカモである。強力に久し振りに見た河村栞は、全体的に階級を上げてゐるやうには見えなかつたが、首から上はパンパンに丸い。暫く―店に―来て呉れなかつたぢやない、その間は何をしてゐたのかといふホストからの問ひに対し、河村栞は答へて「異文化交流」。これは何程かの、事実に即してもゐるのか。木の実葉がじわじわと、ミドル級からヘビー級への階段を上りつつある点に関しては相変らず。池島ゆたかは夜の街でのシュウの盟友、とでもいつたポジションのホストクラブの社長。たんぽぽおさむとの―薔薇には非ず―絡みでは、大いなる大根ぶりを大発揮。役者としてのこの人のスペックは、自監督作で脇を固める際には若干下がるきらひもあるやうに映るのは気の所為か。繋ぎながらに、シュウに関しての積み上げを担ふ重要なシークエンスでもあるのだが。繰り返しになるが濡れ場は兎も角さういふ積み重ねといつたものが、アミに関しては欠けてゐる。竹本泰志は、デリヘル嬢に身をやつすアミの客・和彦。千秋女王様の手でも借りたのか、サディストの和彦がアミを責めるプレイは妙に充実してゐる。
 何時になつたら、あるいは何処で出て来るのかと最後まで待ち構へてゐた水原香菜恵は、最後の最後に出て来ると、クライマックスの美味しいところを殆ど丸々持つて行く早苗。木に竹を接いだ感も漂ふ幕引きではあるが、水原香菜恵といふ人は、この頃素晴らしく一線を跨いだ色気が出て来た。ここいらで何方か、水原香菜恵を主演に迎へての堂々とした大人のピンク映画に挑んでは貰へまいか、関根和美本気出せ。関根和美の映画に、かなえ時代からでも水原香菜恵が出てゐた覚えはないが。と思つてよくよく調べてみると、正にかなえ時代に一本出て来た、「喪服妻のよろめき」(2001)。未見なのか、矢張り覚えがない。

 その他ホスト、ホストクラブの客、更に隠しキャラで大勢登場。僅かに映画を観てゐてその人と知れたのは。横須賀正一が、“しょういち”名義でホスト。五代暁子の変名である山の手ぐり子と吉原杏は、ホストクラブの客。最早性懲りもなくとでもしかいひやうがない神戸顕一は、一戦交へた後のラブホにてアミと和彦が見るテレビの中に、「神戸印の白アンパン」のCMで登場。何故白アンパンなのかよく判らないが、CMが「熟女・人妻狩り」の中で使はれてゐたものと、同一か別のものかは忘れた。


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