真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「レンタル女子大生 肉欲延滞中」(2017/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/撮影監督:創優和/録音:山口勉/編集:目見田健/音楽:與語一平/整音:高島良太/助監督:江尻大/監督助手:市原博文/照明助手:小松麻美/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:彩城ゆりな・酒井あずさ・櫻井拓也・イワヤケンジ・森羅万象・吉田俊大・友田彩也香)。照明助手の小松麻美が、地味に竹洞哲也2014年第一作「痴漢電車 いけない夢旅行」(脚本:小松公典/主演:辰巳ゆい)ぶりの中復帰。
 拍子抜けするくらゐアッサリしたタイトル開巻、居酒屋にて、何某かの撮影中。カメラを向けられる側の中岡有希(彩城)に、仕事終りの五島幸一(イワヤ)が合流、愛称テルこと池田輝雄の話から始まる。同じゼミ生で就職活動に爆死し大絶賛引きこもるテル(櫻井)を、何気に想ひを寄せぬでもない有希が案じて訪ねる。別に下級生で問題はないが、有希の進路に関しては等閑視される。何だかんだの末、社会に必要とされないのならひとまづ個人からと、有希はサイト登録制の緩い何でも屋「自分レンタル」にテルを誘ふ。製薬会社部長の五島は、あるいは五島も、自分レンタルを介したテルとの出会ひを通して、自らも自分レンタルを始めた口。ところでしかも役職つきが、その会社は副業を認めてゐるのか。おひとりさまウェディングが趣味のOL・新倉美和子(友田)に新郎役で呼ばれて以来、気に入られ重用されるテルが、美和子に入れ揚げる様子に有希はやきもきする。
 配役残り、自分レンタルのイントロダクションに背中だけ見せるのは当方ボーカル当人の小松公典。酒井あずさは、五島の妻・蓮。闇雲に重い役所で、普段はあまりでなく意識させない端正さを際立たせる森羅万象は、起承転結の転部要を担ふ自分レンタル顧客・福田治郎。吉田俊大は、テルを撃墜し有希を内心喜ばせる、美和子の恋人・陣内貴志。その他、右手から彩城ゆりなを抜いた居酒屋の奥に見切れる客が二組。中盤の周磨要と東京JOEには辿り着けるとして、序盤の異常に美人の二人連れが激しく判らない。あと、クライマックスにヒムセルフで飛び込んで来るのは阿部真也。
 “レンタル”の文言から脊髄で折り返して想起した、山内大輔2006年第三作「レンタルお姉さん 欲望家政婦」(主演:姫川りな)には特にも何も全く掠りもしなかつた、竹洞哲也2017年第一作。「サイコウノバカヤロウ」とかいふ仮題ばりにダサいタイトルで、OPP+ver.も公開されてゐる。外堀から埋めて行くと主演の彩城ゆりなは、松岡邦彦のデジエク第五弾「女と女のラブゲーム 男達を犯せ!」(2014/脚本:今西守/主演:水希杏)と、渡邊元嗣2015年第三作「愛Robot したたる淫行知能」(脚本:山崎浩治)に続くピンク三戦目。入れ替り立ち替り時々のAVアイドルが通り過ぎて行つてゐるやうにも見えて、案外息が長い人もゐれば、途方もなく長い人もゐたりするのが、歴史の名に値するだけの年月を積み重ねた量産型娯楽映画たる、ピンク映画の面白さ。
 それは、さて措き。終始撮影中の何某かの正体が、ピシャッと撮影者込みでラストに明らかとなる構成は酌める。今年は薔薇族や伊豆映画にまで出まくる櫻井拓也は昔日の―あへて断じるならば“戦犯”―久保田泰也の完全上位互換で、俳優部にも穴はない。画期的な濡れ場の僅かさに関しては、オーピーが初めからプラスありきで考へてゐる以上、最早一観客風情がどうかういふてもせんない、にせよ。一応有希起点のテルとのラブ・ストーリーといふ全篇を貫く主軸、覚束なさを加味するとチュ軸もなくはないとはいへ、最後まで観通してみると、退屈はしないばかりの尺が淡々と過ぎて行く始終には、呆れるほどの疑問も残らない。女の裸がなければ、強固な物語も燃えるやうなエモーションも、挙句にツッコミ処さへない。どうしたものか、どうしたいのか。本当に日本一短い手紙で猛然と一撃必殺を狙ひに来て現に見事モノにしてみせた、気概なり体力はもうこのコンビには残されてゐないのであらうか。


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