真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「好色家族 狐と狸」(昭和47/製作:日活株式会社/監督:田中登/脚本:宮下教雄/企画:三浦朗/撮影:安藤庄平/美術:山本陽一/録音:高橋三郎/照明:松下文雄/編集:鈴木晄/音楽:奥沢散策/助監督:海野義幸/色彩計測:田村輝行/現像:東洋現像所/製作進行:斉藤英宣/出演:田中真理・原英美・小森道子・堺美紀子・しまさより・高山千草・山口明美・木島一郎・大月幹太・久松洪介・長弘・甲斐康二・織田俊彦・影山英俊・近江大介・庄司三郎・玉井謙介/刺青:河野光揚)。出演者中、しまさよりと長弘に織田俊彦、近江大介以降は本篇クレジットのみ。クレジットはスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 開巻は無駄に判り辛いが黒い帽子からカメラがティルト・ダウンした先は、脂汗を流す堺美紀子。医師(織田)の胃潰瘍とする診断をガンだと頑として真に受けない宝田ユメ(堺)は、医者が口を割らぬのならと看護婦(不明)を詰問。ユメのどうかした勢ひとちらつかせるダイヤの指輪の誘惑に負け、看護婦はあと三日の命と白状する。続けて現れたユメの長女・クラ子(高山)に、ここが放置される最大のツッコミ処なのだが織田医師はあと三日の旨をサクッと告知。クラ子がすは遺産と安心屋不動産を営む夫・古田(甲斐)と出撃しようとしてゐるところに、旦那が草鞋を脱ぐ組の若い衆・ヤスオ(庄司)を連れ買物中のユメ次女・カネ子(小森)が通りがかる。古田が口を滑らし事態を知つたカネ子が、高飛び中につき不在の夫の弟分・高森(木島)とすはすはしてゐるのを見た三女のカネ子(原)も、ヤスオを締め上げ争奪戦に参戦。一方、風呂場に卓袱台を浮かべ情夫の畑山(大月)と花札中の、カネ子とは二卵性双生児の四女・ギン子(山口)もギン子で、カネ子経由のパラノーマルなチャンネルで騒動を察知。ギン子がかうしちやゐられないと卓袱台を引つ繰り返すと、宝田邸を目指し急ぐ安心屋不動産社用車にタイトル・イン。
 配役残り田中真理は、五人姉妹のうち唯一ユメと暮らす五女・タマ子。影山英俊が、ガッパヘッドだ何だとキッチュな小物で煩はしいヴィレバンみたいな部屋に、タマ子が堂々と連れ込む同級生の新川君、多分二人は大学生か。久松洪介は、実はキンギン姉妹の父親でもある、宝田邸使用人・山野貫太郎。ユメはいはゆる愛人業で4/5人父親の違ふ五姉妹を産み、慰謝料を元手に財を成したとかいふ寸法。玉井謙介は、道路予定地の買収に宝田邸を日参する東京高速公団職員。そして小見山玉樹が、玉井謙介の連れとしてクレジットレスで飛び込んで来る。飛び込んで来る瞬間の、コミタマ!感が堪らない。長弘は、九州からナシをつけに舞ひ戻つて来た、カネ子の夫にして高森兄貴分。長弘が連れて来るwith赤子の九州妻と冒頭織田医院の看護婦のどちらが、しまさよりなのか辿り着けないのが今の当サイトの限界。近江大介は、“あと三日”の三日目金曜日の朝、宝田邸を訪ねる警察官。
 田中登昭和47年デビュー年、全五作中第四作。母親の今際の間際?に、欲の皮を突つ張らせ急遽駆けつけた姉達とその同伴者と、ヒロインが対立する騒々しいホームドラマ。濡れ場の種で適宜目移りしつつああだかうだワーワー姦しいばかりの始終は、かといつて魅力的な展開にも欠き、特段も何も面白くも何ともない。ユメと貫太郎絡みのエモーションも匂はすだけさんざ匂はせておいて挙句綺麗に不発で、何時壊れたのかそして壊れたことの意味も見つけ難い、キン子の瓶底メガネの件なんぞそんなところに落ちてゐる帽子共々まるで意味不明。コミタマなり庄司三郎、日活が誇る脇役部―この辺りには流石に、ピンクが辛うじて対抗し得るのは新田栄が自ら誇る超絶ステルス性能くらゐか―のイイ感じの仕事ぶりのほかこれといつた見所も見当たらず、ところで、あるいはそもそも。田中登に話を戻すと、この御仁、満足に量産してたのは二年目までで、改めて調べてみると通算でも僅か二十五本ぽつちしか撮つてゐないのね。シネフィル~ゥ♪受けがいいのか何だか知らないけれど、量産型娯楽映画作家としては全然ヒヨッ子どころかピヨッ子ではないか。


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