真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「黒犬と和服未亡人」(2003/製作:サカエ企画/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:岡輝男/企画:稲山悌二《エクセスフィルム》/撮影:千葉幸男/照明:高原賢一/編集:酒井正次/スチール:佐藤初太郎/助監督:加藤義一/音楽:レインボー・サウンド/監督助手:北村隆/撮影助手:池宮直弘/照明助手:古田茂浩/選曲効果:梅沢身知子/録音:シネキャビン/製作進行:阿佐ヶ谷兄弟舎/現像:東映ラボ・テック/出演:高岡愛・林由美香・酒井あずさ・風間今日子・本多菊次郎・中村英児・丘尚輝・キング ラブラドールレトリーバー牡2才・ガンモ ペキニーズ牝4才)。出演者中、本多菊次郎が旧版も「犬と後家さん ‐腰巻の中で‐」として再見した2010年新版ポスターにあつても本多菊次朗表記なのだが、本篇クレジット上はあくまで本多菊次郎。
 今や―ピンク映画では―新田栄を措いて殆ど撮る者もゐない獣姦もの、何か塗つてでもゐるのか、黒犬が乳首なり観音様をペロペロ舐め、ラストはとりあへず後背位で挿入、してゐる風に映るショットで締め括る。一言で片付けると要はさういふゲテモノといふ意味でのジャンク、もといジャンル・ムービーである。といふかそれ以前に、そもそもが新田栄―と岡輝男脚本―の映画につき、お話がどうかういふ訳でも特には勿論全く一切ない。起承転結を、形だけでもなぞつてあるだけ小林悟の映画よりはマシ、といふ程度の一作ではある、清々しく実も蓋もありやせんが。
 一応掻い摘んでおくと、田中江梨子(高岡)の夫・政人(本多)がある夜夫婦の営みを終へたのち、忘れてゐたと飼ひ犬・キング(犬セルフ)を散歩に連れて行つたところ事故死する。ピンク映画の未亡人モノといふジャンルに於ける邪魔者のといふより、カテゴリーを成立させるためには死んで貰はないと困る、配偶者の死に様といふのは輝かしいほどに呆気ない。今作も大抵の場合と同じく、急を報せる電話一本で事済まされる。尤も一般論としては、最速ないし最短距離のファースト・カットが、亡夫の遺影などといふ早業も決して珍しくない。寧ろ今回の本多菊次郎に関しては、死ぬ前に絡みのひとつも設けられた分、まだしもマシな部類とすらいへよう。夫の急死に際し、遺された江梨子ははてさてどうしたものか、さういふストーリーである、そんな御座なりな紹介ならすんな。
 配役残り、酒井あずさは政人の姉・かすみ。丘尚輝―補足しておくと、脚本の岡輝男と同一人物―は政人の弟・良人で、風間今日子が良人の妻・みずほ。江梨子がキングを連れ散歩に出たところ、出会つたガンモ(犬セルフ)の飼ひ主・笠原竜一が中村英児。江梨子は未亡人の癖に、二回目に出会つたタイミングで竜一と寝る。そこで、“癖に”といふのは間違つてゐるか、半年も経過してゐることだし。林由美香は竜一の妻・涼子、夫を犬に見立てた、ヌルいSMプレイを披露する。
 高岡愛が首から上は曲がり気味でもあれ、体はキレイな体をしてゐる。ただ声は、誰か別人がアテてゐるやうに聞こえた。佐々木基子―か吉行由実―のやうな気もするが、確証は持てない。因みに再び補足しておくと、ピンク映画といふのは、香港映画や東映スーパー戦隊シリーズと同じく、声は後からアテてゐる。いふまでもなく、その方が安く撮れるからである。元の女優―未満―が芝居が出来ないゆゑ、もしくはアフレコ時のスケジュールの都合等々の理由で、別人が声を吹き替へるアフレコならぬアテレコはまゝ行はれる。何の映画だつたか忘れてしまつたが、一本だけその時何が起こつたのか、途中で主演女優の声が変る映画を観た記憶も過去にはある。

 以下は再見時の付記<   開巻江梨子が同窓会から帰宅すると、政人は夜だといふのに庭を弄つてゐた。そこから二段構へで物語を締め括る大オチへの伏線の敷設具合には、良質な娯楽映画の丁寧さが垣間見えなくもない。ただ正直なところ、中盤かすみとみずほの百合濡れ場のあまりの長さに、途中で寝落ちたものでもあるが。風呂に湯を張る最中に政人事故の急報を受け、愕然とする江梨子の画からカット明けると、いきなり一年後などといふ超速は流石新田栄


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