真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「離婚妻狂乱 本能のまま快感」(1996『本番熟女 淫ら舞ひ』の2009年旧作改題版/企画・製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/監督:大門通/脚本:木村正/プロデューサー:伍代俊介/撮影:原田清一/照明:斉藤久晃/編集:金子尚樹 ㈲フィルムクラフト/助監督:田中正茂・加藤義一/製作担当:真弓学/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学/監督助手:依田拓也/撮影助手:橋本彩子/照明助手:山崎満/ヘアメイク:大塚春江/スチール:本田あきら/出演:さの朝香・小川真実・林由美香・田原政人・久須美欽一・杉本まこと・太田始)。
 開巻即座に、ラブホテルにて睦み合ふ男女。といつて、恋人同士でなければ不倫の逢瀬でも何でもない。二人は同僚で、しかも驚く勿れこれでも仕事中。エログロ誌『ラブ・ジュース』編集者の飯村貴子(さの)と同じく杉田悟(田原)が、鬼編集長の勝呂幸太(久須美)に命ぜられエロ企画を十本纏め上げるために、悪戦奮闘もとい苦闘してゐたのだ。何て職場だ、といふか何と底の抜けたゴキゲンさなのか。とはいへ企画は全く纏まらず、くたびれた貴子に杉田がどさくさ紛れに求婚するが、度の過ぎた淫乱が原因で前夫に逃げられた貴子は二の足を踏む。仕方なく二人が編集部に戻つてみたところ、こちらも編集者の小谷有紀(林)が勝呂にドヤされ泣いてゐる。人気マンガ家・葉山直樹の原稿を取つて来るのに失敗したのが、勝呂の叱責の原因であつた。破天荒に高圧的な勝呂はその場で有紀に馘を宣告すると、返す刀で貴子を葉山の新担当に指名。ひとまづ貴子が葉山の下へ向かつてみると、今度は男と義姉が痴情を縺れさせてゐた。当然のことながら状況を呑み込めず目を丸くする貴子に対し、抱き合つてゐた男と女がスッと体を離すと、二人の体の間に空いた空間に机に就いた葉山先生(杉本)登場。正味な話、画面上は兎も角実際の貴子の視点からは既に葉山の姿が視界に入つてゐておかしくはないのかも知れないが、この葉山ファースト・カットはそれなりに手堅い。義姉役こと葉山のマネージャー・園田美里(小川)が、事態を把握しきれない貴子に説明する。出来るか、といふ話でしかないといへばないのだが。男は『月刊エロス』編集者の酒井純一(太田)で、二人は葉山のイマジネーションを膨らませる助けになるべく、寸劇を繰り広げてゐたとかいふ寸法。何処からツッコめばいいのか判らないので、次段にて後述する。初日は手ブラで貴子が編集部へ戻ると、大胆も遥か斜め上に通り越し最早滅茶苦茶に、部内で勝呂が有紀を後ろから激しく突いてゐた。有紀を編集者として馘にした代りに、奴隷にしたといふのだ、サイケデリックな色の茸でも食べ食べ脚本書いてゐたのかよ。再び目を白黒させる貴子に、勝呂は明後日の高みから出鱈目な条件を突きつける。葉山の原稿を取つて来れなければ、お前も奴隷だ。売り言葉に買ひ言葉で原稿獲得に成功した場合、編集長の座と勝呂を奴隷にする条件を引き出したとはいへ、これといつた勝算も貴子にはない。貴子は再婚を餌としてちらつかせた杉田を唯一の味方に、葉山攻略に燃える。
 企画立案の要と称して編集者同士でセックスしたかと思へば、マンガ家のところへ原稿を貰ひに行くとマネージャーと他誌の編集者がシチュエーション・プレイ。絵に描いた封建君主のやうな暴君編集長は、馘にした女性編集者を自らの性奴隷に。サイエンスこそないものの殆どSF感覚の、まるで全く別個の異世界での出来事を描いた物語のやうだ。馬鹿馬鹿しい、といふか観客を小馬鹿にしたかの如き一作ではあるのだが、全盛期のいかりや長介ばりにパワフルに憎たらしい久須美欽一に、田村正和の物真似をしてゐる人風味の滑稽なエキセントリックさを振り撒く杉本まこと。それに恐らくは確信犯的かとも思はれる、シチュエーション・プレイ時の大時代的な昼メロ感覚の演出とでアクセントを巧みにつけると、馬鹿馬鹿しい物語を馬鹿馬鹿しいまゝに、それでも一欠片の淀みも迷ひもなく振り抜いた様はある意味鮮やか。主人公の立身出世、あるいは暴力的に虐げる支配者との立場の逆転といふ、娯楽に於けるプリミティブな定番も何気に果たされてある。結局、貴子の対葉山の戦略が、策として十全に練られてゐない辺りは一段落ちるが、純粋なナンセンスを実はといふか矢張りといふべきか、それはそれとしての堅牢さで軽やかに形にした、現代風の艶笑譚である。観ようが観まいが別に困らないが、観れば案外面白い。締めではないがメイン・イベントの、貴子のVS.葉山戦を締め括る“ドピュー!”(原稿作成者不明)も、下らなさの極みながら地味に捨て難い。

 クレジットは特になかつたものの、自信半分勇気半分を以て断言する。今作主演女優のアフレコは、吉行由実がアテてゐる。


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