真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「大阪お天気娘 半熟美尻コテ返し!」(2017/制作:加藤映像工房/提供:オーピー映画/監督:加藤義一/脚本:後藤大輔/撮影監督:創優和/編集:有馬潜/録音:小林徹哉/音楽:大場一魅/助監督:江尻大/監督助手:岡元太/撮影助手:山田弘樹/照明助手:小松麻美/スチール:本田あきら/録音所:シネキャビン/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:神咲詩織・里見瑤子・早瀬ありす・那波隆史・小滝正大・柳東史・大潮八朗汰・牧村耕次)。
 制作の加藤映像工房クレジットが上方に逃げるや、切りイカのもんじや焼きレシピ動画が飛び込んで来る。明けてスカイツリーを遠目に覗く隅田川、主演女優が如何にも上京したて風情で、「東京か、何や間抜けな街やなあ」と紋切型の憎まれ口を一吹き。舌の根乾かぬ内に、「間抜けは私か・・・・」と独り言ちた天満南(神咲)が、欄干に上半身を埋めてタイトル・イン。レシピ動画が後々の関西風広島風各お好み含め、過去に覚えがあるのかこれが普通によく出来てゐる。最後マヨネーズで一面真白にするのは、個人的には激越に辟易する悪手ではあるのだけれど。
 休業中のもんじや焼き屋「万きゅう」、床に臥せる店主の万鉄五郎(牧村)を、息子嫁のマチ子(里見)が口述筆記、息子については遺影も完スルーされる。さういふ関係に至る顛末は清々しくスッ飛ばした上で、二人は至極日常的な流れで義理近親相姦に及び、住み込み店員の、坂井八郎(小滝)が覗く。粉物の修行時代、大阪と広島に落胤があるとかいふ鉄五郎が、その子なり孫に「万きゅう」を継がせるといひだしたのに、自分に継がせるとした口約束を反故にされた八郎が血相を変へ思はず鉄五郎の居室に乱入。クロスカウンター顔射が双方向に誤爆するのは、実にピンク映画的なシークエンス。隅田川ほとりで、亡くしたか失くしたマチ子の娘に関する伏線を蒔きつつ、ほとぼりを冷ますマチ子と八郎の前に、大阪で鉄五郎が生ませた子の孫を名乗る天満南(神咲)が現れる。
 配役残り柳東史は、南に大阪を捨てさせる一因を担ふ不倫相手・武部彰。ホテルの一室より半歩たりとて外に出ない、作中唯一の純然たる絡み要員。那波隆史は、鉄五郎が南のお好み焼きを実食してゐる超絶のタイミングで「万きゅう」に到着する、広島からやつて来た自称鉄五郎の息子・呉昌造。変名臭を爆裂させる大潮八朗汰は、呉の往きと帰りにさして印象的にでもなく交錯する労務者風の男。呉に話を戻すと、広島弁自体がへべれけな以前に、普通に喋らせるデフォルトで正体不明の訛のある那波隆史に、方言を使はせるのは自殺行為だといい加減気づいたらどうなのか。早瀬ありすは、南が呉の宿に捌けた隙に、ぶぶ漬けで「万きゅう」を急襲するフロム京都の清水桃子。主がリタイアした「万きゅう」の敷居を、続々と各地のストレンジャーが上手い具合に跨ぐ方便に関しては、マチ子によるSNS拡散の一点突破で片付けられる。ところで神咲詩織は、ともに二年前で脚本は当方ボーカル(=小松公典)の小山悟単独第一作「ドM卒業 さよなら、ご主人様」(主演:佐山愛)・第二作「果てなき欲望 監禁シェアハウス」(主演)に続くピンク第三戦、加藤組次々作へとキャリア継続中。早瀬ありすは「桃木屋旅館騒動記」(2014/監督・脚本・編集:城定夫=城定秀夫/主演:西野翔)を覚えてゐなかつたが、今作を観ても思ひださなかつた。
 2007年第四作「浪花ノーパン娘 -我慢でけへん-」(脚本:岡輝男/主演:岡本優希)の如く関西ロケに出張るものかと思ひきや、舞台をもんじや焼き屋に設定し東京に留まる加藤義一2017年第一作。深澤浩子は三本で諦めたのか、前作に引き続き後藤大輔脚本となる割に、次作以降は性懲りもなく筆鬼一名義の鎌田一利と組んでゐたりもする。竹洞哲也も竹洞哲也なら、加藤義一も加藤義一でこの辺りどうにも厳しい。
 映画の中身に話を戻すと、一応後藤大輔らしい周到な力技が決まりはするものの、賑々しく大団円が完成するほどのカタルシスには遠い。鉄の裁断で鮮やかに退場処理したものかと思はせた三番手が、八郎の救済込みで美味しいところをカッ浚つて行くまさかの復活劇が作劇上唯一の見所。にしても、所詮は枝葉に過ぎぬことは論を俟つまい。プラスへの色気が芳しくない方向に転んでか、竹洞哲也なり加藤義一に中途半端に、あるいは中途半端な物語に拘泥する代償として、濡れ場さへもが疎かとなり万事休する傾向が否めない。田中康文は移籍組として一旦等閑視するにせよ、森山茂雄も完全に沈黙し、小山悟は機会を与へられず、江尻大に至つてはデビューすらしてゐない。本来ならば生え抜きの次代エース候補である筈にも関らず、仲良く燻る加藤義一と竹洞哲也を、外様の城定秀夫と山内大輔が遥か後方にブッ千切つて行く図式は如何ともし難い。いや別に、荒木太郎か国沢実がこの期に天下を獲つて呉れて全然構はないんだぜ。


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コメント
 
 
 
Unknown (はる)
2017-11-03 02:40:11
確かに94年に見たら切なくなりそう
しかし男優陣スパっとなんてすごいな
いい肉の付き方がセクシー!
 
 
 
ん? (ドロップアウト@管理人)
2017-11-03 10:34:01
 ・・・これは、タマキューに関してのコメですかね?
 
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