真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「未亡人下宿 和服でハメ狂ひ」(1997『未亡人下宿 熱いあへぎ』の2007年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:岡輝男・榎本敏郎/企画:福俵満/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/スチール:津田一郎/録音:シネキャビン/現像:東映化学/協力:獅子プロダクション/出演:田口あゆみ・悠木あずみ・森下ゆうき・樹かず・池島ゆたか)。
 大手ゼネコン社員の近藤啓介(樹)が、社長の娘でもある真理子(森下)と開巻即座の熱い一発をキメる。野心家の近藤は真理子攻略に加へ、贈賄絡みの危ない橋も渡つてゐた。真理子との結婚の約束を取りつけ、将来の栄光を確信したのも束の間、近藤は半年間の支社出向を命ぜられる。支社の用意した住まひは、未亡人管理人の相馬(田口)が、一人娘の千草(悠木)と切り盛りする下宿屋であつた。
 近藤を迎へ入れる支社長(池島)含め、張り巡らされた謀略を十重二十重に想起させる序盤は充実してゐる。とはいへ、終盤まで引つ張ることなく真相の蓋は中盤で開いてしまふゆゑ、以降は濡れ場で間を繋がうとはするものの、若干以上に映画が求心力を失つた感は否めない。未亡人管理人に扮する田口あゆみは、女系家族の家長が堂々とサマになる貫禄のハマリ役。地味に演技派の悠木あずみも、処女の恥らひと同時にひたむきな情熱さとを好演。首から上は些か十年前にしても古臭くアクの強い森下ゆうきではあるが、太目への境界を徳俵一杯で踏み止まる肢体には充実感が溢れる。若い野心家で、序に色男の樹かず、含みを持たせた笑みを浮かべさせれば天下一品の池島ゆたか、何れも磐石。出演陣に全く不足は見られないだけに、構成の不備が惜しい一作ではある。

 結局相馬家復興のために取り込まれてしまふ近藤ではあつたが、開き直つて再起を力強く誓ふ爽やかなラスト。天に雄叫びを上げる近藤と、頼もしく寄り添ふ千草、の姿を大胆な仰角で捉へると、二人の姿を二階のベランダから布団を干しながら温かく見守る田口あゆみ、までをワン・ショットで押さへる。光線の塩梅がハチャメチャなのは惜しいが、ラスト・ショットとしてダイナミックな構図は完璧で惚れ惚れさせられる。

 付記< 回想に背中だけ登場する専務氏は、多分津田一郎


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