【ヒトの知恵、サギの知恵】

【ヒトの知恵、サギの知恵】

 

(『電脳六義園通信所』アーカイブに加筆訂正した 2005 年 2 月 6 日の日記再掲)

早朝の清水、柳宮通り、大橋川沿いを自転車で走っていたら、凍えるような寒風の中、川の中にサギが立ってブルブル震えながら歩き回っているので、年老いて飢えたサギがよせばいいのに川の中に入って食べられる物でも探しているのだろうと思い、哀れさが胸に迫る。

哀れさが胸に迫ったりすると、以前ならタバコを取り出して火をつけ、苦い煙を吸い込んでは吐き出し一服したりしたのだけれど、タバコはやめてしまったので花粉症用のキャンディを取り出して舐める。強烈にメントールが効いているので鼻がスースー通り過ぎて薄ら寒く、やめておけばよかったなと後悔する。鼻づまりも防寒に役立つ事があるのだ。もしかするとそのために鼻水は出るのではないか。

咄嗟の判断はその時の心境によって勝手な解釈をしてしまうので危うい。川の中にいる哀れでブルブル震えている年老いたサギをしばらく見ていたら、年老いてなどおらずスッと差し出す足を強力モーターでも使っているかのように小刻みに震わせ、川底の小石や沈殿した枯れ葉に振動を伝え、驚いて飛び出す小魚を狙う精力的なサギだったのである。

足や胴体が激しく振動するのに首から上は全く動かず、差し出した震える足が着地し次の軸足となる瞬間振動は止まり、軸足が次の差し出す足に転じる途端に激しく振動を開始するさまは、工業用ロボットのように精密な連携をするので感心する。

そして人間の目には見えないけれど、首が一瞬伸び、鋭いくちばしが水面に突き立てられるたびに、10 センチ足らずの小魚がくわえられているのであり、哀れなサギに見えて実は知恵ある漁師だったのである。

   ***

国道 1 号線、巴川にかかる巴川橋たもと、清水自動車学校と北川木材の裏手に、巴川の蛇行でできた三日月湖のような掘り割りがあり、貯木場に利用されているのだけれど、水門で接している巴川と貯木場の水位差が異なると、水門を開けるのではなくポンプを使って水位調整しているらしい。

巴川から激しく水を吸い上げて貯木場に放出すると、貯木場内で小魚が水面に浮かび上がって泳いだりする。浮いている木材の上にピクリとも動かない姿勢でサギが数羽並んでおり、首が一瞬伸び、鋭いくちばしが水面に突き立てられるたびに、10 センチ足らずの小魚がくわえ上げられている。

サギには真冬に小魚を食料として獲るための臨機応変な知恵がある。

寺田寅彦風に言えば、知恵というのは総合的ではない。自然の些細な部分に限って公平に観察すれば、人間の方が阿呆で、鳥の方が人間の知能を上回っていることもある。

【貯木場の水位】

巴川から水をポンプで汲み上げている。
貯木場の方がかなり水位が低いのだけれど、決して機密性の高そうな水門ではないのにどうしてこんなに水位が違ってしまうのだろう。貯木場の水量が減る原因があり、ポンプで汲み上げて補充する必要が生じるのだろうが、理由がわからない。

1 貯木場の水を汲み上げて何かに使っているから。こんな濁った水を使う用途があればだけれど。
2 貯木場の木材を引き上げたので、風呂から人が上がったように水量が減った。でもこれだけ水位を下げるために引きあげる木材の量は現実的でない。
3 上流で貯木場の水を抜き、下流で新しい水を汲み上げて綺麗にしている。でもそれなら上流に汚い水を捨てつつ下流で水をくむのはヘンだと思うのだ。

貯木場とポンプの謎が解けないが、サギがこのタイミングを狙って餌を取りに来るなら、サギが理由を知っている可能性もある。説明する言葉を持たないだけだ。

[Data:SONY Cyber-shot W1]

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