【タイムマシンのつくり方・4】

2020年9月27日

【タイムマシンのつくり方・4】

なにごとも円(まる)くおさめる努力がたいせつだ。角(かど)が立たないようにするともいう。それを漢字ふた文字につづめれば円満になる。円満とは神仏の功徳(くどく)に満ち足りていることで、その反対を不満という。なにごとにも不満が先立たない人柄を、「あの人は円い」という。

功徳の意味を善行の見返りと解するから不満があり、「功徳を施す」とも言うように見返りを求めない善行こそが功徳だと思うところに円満がある。不満と円満は表裏一体というか、あざなえる縄のようというか、組(く)んず解(ほぐ)れつして、まあ人間世界はそういうふうにできている。

まあそういうふうにできている人間世界を円形で象徴的に表現したものを円相という。よく禅寺の壁に飾られているひと筆書きの丸を円相図という。円相の中に自分の心を見ようとすると窓になって円窓図という。

円相図は始まりも、終わりも、角もない、そういう円のかたちに、「不満と円満が表裏一体というか、あざなえる縄のよう」になった人間世界の奇妙な構造をエンドレスに封じ込め、捕らわれと執着のない心を表わそうとしている。円いと言われる人の心に仕組まれた「寛容の無限ループ」もまた一種のタイムマシンだろう。

【タイムマシンのつくり方・3】

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