電脳六義園通信所別室
僕の寄り道――電気山羊は電子の紙を食べるか
【タイムマシンのつくり方】
2020年9月21日
【タイムマシンのつくり方】
広瀬 正(ひろせ ただし)という作家がいて 1972 年 47 歳で亡くなられている。時間を主題にした作品を多く残し、「時に憑かれた作家」とも呼ばれ、葬儀では作家仲間により棺に「タイム・マシン搭乗者」と書かれたという。本人も喜ばれたことだろう。
近年になって、はじめて長編小説『マイナス・ゼロ』を読んだら素晴らしくて、読み終えたあと清水にある珈琲焙煎店の人々と回し読みしてしばらく話題となった。その他の広瀬作品は読んでいないのだけれど、ちょっと気になったので、広瀬 正 小説全集6『タイムマシンのつくり方』を買って読み始めた。最初の「ザ・タイムマシン」からもう面白くて、ここだけを 5、6 回は行ったり来たりして繰り返し読んでいるので先に進まない。そして思う。
人間の肉体は乗り物のようなものだ。地球上にはたくさんの肉体という乗り物が「こころ」を乗せて勝手気まま、縦横無尽に動き回っている。それらの中にたった一つだけ違う乗り物がある。その乗り物は運転手が自分であるという点だけが他とはまったく違う。この乗り物だけが自分の意思でほぼ自由に制御することができる。乗り物が自分なのであり、人間は機関車トーマスである。テレビのインタビュアーが幼い男の子に「大きくなったら何になりたい?」と聞き、その子は「機関車トーマスになりたい」と答えていた。正しい。
この地球もまた乗り物のようなものだ。この世界ではたくさんの自分が勝手気まま、思うように世界を操縦している。うまいこと操縦して満足している人もいれば、何をやってもうまくいかずに絶望している人もいる。いま世界には 80 億人くらいの運転手がいて勝手に動き回っている。80 億人分の世界が重なりあい蠢きあっている。
80 億人分の世界が重なり合い蠢きあう地球もまた乗り物のようなもので…と広げていくと大乗的な悟りに近い。タイムマシンは悟りである。
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