【しもふり銀座のゼリービーンとマイ・ロスト・シティー 】

【しもふり銀座のゼリービーンとマイ・ロスト・シティー 】

 

しもふり銀座商店街の店先に色とりどりのミニトマト盛り合わせが売られていて、まるでゼリービーンのようだ。売り子のお兄ちゃんが
「さあ、色と形がちがうトマトはそれぞれ味もちがうよ!」
と声を張り上げていた。

スコット・フィッツジェラルドに「ゼリービーン」という作品があり、読んだことがないので村上春樹訳を探したら『バビロンに帰る―ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック 〈 2 〉 』中公文庫があったので注文した。

この、短編集のように短い商店街は古びているけれど意外に新しい。小学生時代はひどく賑わっていたが、当時からある店はもう少ない。小売業のプレイヤーは目まぐるしく変わっていく。この路地に、かつて小さな果物店があって同い年の女の子がいたが、大学入学の年に上京して訪ねたら亡くなられていた。

10 歳年上の友人である編集者に、書き込みのあるフィッツジェラルドの『マイ・ロスト・シティー 』文庫版をもらい、読んでいたく感動したが、新書版の村上春樹翻訳ライブラリーでは改訳されているらしいので改めて注文してみた。何度でも再読してみたい作品集だ。

子どもの頃からこの寿司屋の金魚鉢はあった。廃業されても残っている。明治時代おわり頃の地図で商店街に直交する道があるのはここかもしれない。

まわりはまだ「横棒に縦棒2本」の田んぼマークだらけで、この地図記号「田」は昭和四十年に横棒が消えるが、その頃の地図では、もうこの辺に田んぼなどない。

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