電脳六義園通信所別室
僕の寄り道――電気山羊は電子の紙を食べるか
【箱根駅伝と函嶺洞門と桜橋】
【箱根駅伝と函嶺洞門と桜橋】
(『電脳六義園通信所』アーカイブに加筆訂正した 2006 年 1 月 2 日の日記再掲)
正月恒例の箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)往路、たすきを掛けた選手が小田原中継所をスタートして早川沿いの国道 1 号線をひた走る映像で、いよいよ山登りの勾配が始まる直前、崖崩れによる落石よけのために設けられた片側に開口部のあるトンネルを選手がくぐり、そのトンネルの名を函嶺洞門(かんれいどうもん)という。
どう‐もん【洞門】
(1)ほらあなの入口。また、そこに設けた門戸。
(2)向うまで貫通するほらあな。(広辞苑第五版より)
早川沿いに設けられたトンネルの入り口である洞門は実用一点張りではなく、妙にはしゃいだ遊び心のある意匠(王宮をイメージして作られたらしい)が施されており、クレーンカメラ(?)を用いた美しい中継映像を見る度に毎年見入ってしまう。
今年の箱根駅伝、往路中継を見ていたら、この函嶺洞門も老朽化が激しく、狭さ故に交通のボトルネックにもなっているので、現在迂回する形でバイパスが造られており、完成後はそちらが用いられて洞門の存続は未定だという。
■静岡県清水。桜橋と県道197号線。木の根元に列車見物用にも見える突き出したテラス状の部分がある。
RICOH GR Digital + GW-1
当時はめずらしかったという鉄筋コンクリートを用いた洞門が完成したのは昭和 6 年だと聞いたとたん「おやっ?」と思い、昨年末の郷里静岡県清水帰省時に撮影した実家近くにある桜橋跨線橋の写真を見たら、完成したのは土木遺産に指定されている函嶺洞門と同じ昭和 6 年だった。
■静岡県清水淡島町。傷みが激しい桜橋跨線橋のテラス(?)。
RICOH GR Digital + GW-1
静岡県清水、国道1号線大曲交差点五叉路から分かれて南南東へ延びる県道 197 号入江富士見線が東海道本線と静岡鉄道をまたぐ跨線橋「桜橋」も、当時としてはひどくハイカラな建造物だったのでないかと思う。
橋のたもとに木が植えられた無駄なスペースともいえるテラス状突き出しのある不思議な意匠の桜橋。
当時珍しかったという鉄筋コンクリート工法で造られた橋は、テラスに立って鉄路を行き交う汽車を展望するのもまた晴れがましく思えた時代ならではの意匠だったのかもしれないと思ったりする。
■静岡県清水入江岡町。桜橋跨線橋の高みに登る古そうな石段。
RICOH GR Digital + GW-1
往時のことをよく知る方に聞けばもっと意外な由来がありそうにも思える桜橋。そのテラス状部分の痛みが激しくて、きちっと修復すればよいのにと前回帰省時も痛ましく眺めたが、老朽化故に存続が未定という函嶺洞門を見て郷里の桜橋を不意に思い出したりするのは、二つの建造物が共有する時代体験の質もまた似通っているからかもしれない。
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