【こころの5、6目】

2020年6月4日

【こころの5、6目】

「最近編物男子が多いんだってね」
と妻が言う。だとしたらいいことかもしれない。

むかっときた怒りを堪(こら)えられないことを癇癪を起こすという。怒りのピークは6秒ほど続くので、その6秒を うまくやり過ごせば人は癇癪を起こさなくて済む。

精神科医だったなだいなだは編み物をしていた。編み棒を両手に持ってフランス人の妻に習ったガーター編みをしていると、誰かにむかっとするようなことを言われても、あと残り5、6目を編んでしまい、――実際途中でやめてしまうとあとで厄介らしい――編み終えたところで手を休めて「で?」と言うと、怒りのピークがやり過ごせているという。

戦後かなり経ってから発見された小野田さんと横井さん、軍人としての資質云々ではなく、横井さんが地域から略奪行為を一切することなく平和的に逼塞できた理由は、実は編物や織物ができたからだという話も面白い。

編物をしなくても心の中に編み棒を持って5、6目を編み上げるような間が持てるようにしておくといい。むかっときそうになると好きな歌のサビの部分を心の中で口ずさむ工夫をしている人もいる。確かにサビが持続するピークも5、6目くらいで、激昂型国民が好む歌のサビとはそういうものだろう。

この話の肝は、怒りのピークを抑えて〝怒るな〟ということではなく、怒るべきことには怒っていいのだけれど、瞬間的な怒りは〝怒りの質(たち)〟が悪いということだ。5、6目おいて落ち着いて怒る。感染拡大の予防対策にも通じるだろう。

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