◉棕櫚のある風景

2018年7月5日
僕の寄り道――◉棕櫚のある風景

大宮駅前で待ち合わせして仕事の打ち合わせを組んだので、その前に妻に付き合って老人ホーム訪問をした。大宮駅前も風が強い。バスの車窓から放射状の木の葉が揺れる光景が見え、子どもたちが振る手のひらのようでかわいい、あれはなんと呼ぶんだっけと妻が聞くので棕櫚(しゅろ)だと答えた。

珍しいものを見たように言うので
「母さんの居室ベランダに隣接した雑木林にも棕櫚がたくさんはえてるよ」
と言ったら
「じゃあ陽の当たらない木陰でも育つの?」
と言う。

郷里静岡の川沿いに分け入った山間部には斜面に拓かれた小さな畑が点在し、耕し手を失って打ち捨てられた片隅に、かつて植えられた棕櫚が生き延びている姿を見ることがある。日当たりの良し悪しや水の多寡に関係なく強い植物らしい。世話の手間がいらず、火にも強いので焼畑にも耐えるらしい。それでいて棕櫚の皮から取る繊維状の素材は、縄をなったり、敷物を編んだり、束子や箒づくりなどの副業材料ともなるので、農家の多くは畑の隅に棕櫚を植えていたのかもしれない。

老人ホームに着き、強風の吹くベランダに出て棕櫚を探すとあちこちにあり、武蔵野の地主が実用のため植えたものとも思えないので、これらは雑木林にやってくる鳥の糞によって運ばれた種子が発芽した、いわゆる「ノラジュロ」というやつかもしれない。(2018/07/05)


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