捕獲-3


Z9 + NIKKOR Z 50mm f/1.2 S

大きな画像

知人はホームセンターで樹脂製の池の形の容器を買ってきて、とりあえずその中にカメを入れてみた。
重量級のカメ5匹なので、ゴロゴロと音を立てて転がったという。
しばらく首を引っ込めて動こうとしない。
水を流し込んだら、恐る恐る首を出したが、人がいると分かると逃げ回って大騒ぎになる。

しばらくはエサも食べないだろうから、そのまま何も与えずにいた。
何しろ野生のカメなので、ヘドロの中で育っているし、病気を持っているかもしれない。
まずは身体の中の毒素を出す必要がある。
すぐに黒く汚れる水を、どんどん新しい水に入れ替えた。

カメたちは一カ月経たずに、空腹に耐えられなくなり、与えたカメ用のエサを食べるようになった。
水の汚れ方もだいぶ落ち着いてきた。
ミシシッピアカミミガメは、まるで歌舞伎役者のような凄みのある模様が顔にあり、それだけで凶暴そうに見える。
しかししばらく飼ってみると、そこが表情の豊かさに繋がり、かわいく感じるようになってきたという。

カメはとにかく甲羅干しが大好きで、陸になる部分を作ってやると、晴れた日には皆がその上に何層にも乗っかって、日の光を浴びている。
冷血動物なので体温の調節機能を持たず、日光浴で体温を上げて、熱くなり過ぎたら水に入って冷やすことを繰り返す。
人が近付くと一斉に水に飛び込んで逃げるが、何しろ大きいので、ちょっとした騒ぎになる。
基本的に水の中はあまり好きではなく、なるべく身体を乾かした状態でいたいようだ。

そのためだんだん慣れてくると、人が近付いても、水の中に飛び込むのを、カメが躊躇するようになってきたという。
こちらの顔色を窺いながら、どうしようかと考えるのだそうだ。
それ以上そばに来られると、水に飛び込まざるを得ないんだけどなあ・・でも濡れたくないしなあ・・とカメが考えているのが分かるのだという。
それでも近付いていくと、飛び込むのがカメの義務であるかのように、しぶしぶ水の中に飛び込むのだ。

ある時、知人が外出している時に、直射日光が当たらないようにと、樹脂のケースの上にかけておいたすだれの巻物が、風でケースの中に半分落ちてしまった。
斜めになった状態で、それを階段のように上っていくと、ケースから出ることが出来る。
5匹すべてのカメがそのすだれを上って行ったが、どうもそこが快適だったようで、その場で日光浴をしていて、逃げる様子が無かったという。

帰宅した知人が驚いて近寄ったが、5匹ともすだれの上にのんびりと乗っていた。
カメに「おい」と声をかけてみても、皆ジロリとこちらを見るだけで、そこから動く様子が無い。
このままもう少し日に当たっていたい・・という顔である。

すだれを手で持ち上げると、仕方なく水に飛び込んでケース内に戻った。
エサも貰えるし、水も綺麗だし、快適なのでここで暮らしていこう・・・
どうやらカメたちは、そう決めたようだ・・と知人は話していた。


(送られてきた画像)

おわり
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )