ビーン


Z9 + NIKKOR Z 50mm f/1.2 S

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先週会社の帰りに、L.L.ビーンの直営店に寄って何点か買い物をした。
セールを開催していたのだ。
このセールが終わると、価格改定があり、多くの品目が値上げになると聞いたので、その前に買っておこうと思った。

結局お店に2回行って、5着ほど購入した。
季節の変わり目ということで、けっこう値引かれていて、安く買うことが出来た。
L.L.ビーンの服は、丈夫で長持ちするので好きだ。
アメリカ的で大味ではあるが、そこがまた魅力である。

Mrs.COLKIDによれば、比較的安めのアウトドアブランド・・という印象を持っているらしい。
まあ確かにヨーロッパ志向の人には、少し田舎臭く見えるのかもしれない。
ブランドものというより、実用に徹した製品を作る会社である。
実際ネットを見ても、米国内ではユニクロ・プラス・アルファくらいの地位にあると書かれていた。

もう30年以上前なのだが、海外通販で同社から毎月のようにものを購入していたことがある。
同社が日本に進出してくる少し前の頃の話である。
まだインターネットが普及する前で、今ほど簡単に海外で売っているものを入手することが出来なかった。
海外の雑誌を見て、掲載されている広告をもとに、いくつかの会社にFAXでカタログを請求してみたのだが、その中にL.L.ビーンもあった。

突然の日本からの要求にもかかわらず、すぐに対応してくれて、程なくカタログが送られてきた。
恐らく僕以外にも、国内にそういう人がいたのだろう。
そこには、当時の日本ではあまり見ることの出来ない、新しい世界があった。
面白くてカタログを隅から隅までじっくりと読んだ。

欲しいものをリストアップして、カタログに綴じ込んである注文用紙に記入しFAXで送る。
すると数週間で製品が送られてくる・・という具合である。
海外の何社かからカタログを取り寄せて購入してみたが、その中で同社は品質や対応が安定していた。
ここは信頼できると判断し、頻繁に取り寄せるようになったのだ。

僕が海外の会社に注文書を送るのを、周りの人達は少し離れて傍観していた。
米国から段ボール箱が届き、中から様々なグッズが出てくるのを見ると、皆の目の色が変わった。
当時こういった製品は、日本ではあまり見たことがなく、とても新鮮に見えたのだ。
そもそも外国から個人に荷物が届くこと自体が珍しい時代であった。

最初は、通販なんてどんなものが来るか分からないとか、カードでの支払いなんて騙されるので危険だ・・といった否定的な意見が多かった。
しかし毎月のように箱が届き、中から見慣れないものが出てくるのを見て、羨ましくなったのだろう、皆が自分も欲しいと言い出した。
結局僕が各人の希望を集計して発注するようになり、いちいち英語のカタログに出ている品物の説明まですることになった。
発注量が増えたので、ダンボール箱も大きいもので送られてくるようになった。

L.L.ビーンくらいの大手なら、その当時でも、世界中の個人の顧客に向けての通信販売の仕組みがしっかり出来上がっていた。
そもそも米国では、はるか昔からこういう販売方法が発展している。
とにかく土地が広く、辺境には未開拓の地も多かったので、簡単にものを買うことが出来なかったのだ。
西部劇でも時折見るシーンであるが、町まで馬車で出かけて行き、雑貨屋にあるカタログを見て注文する・・という形が当時から定着していた。
信頼関係で成り立つ商売なので、意外に詐欺が少なく、確実に品物が送られてくる。

僕は1800年代の馬具メーカーのカタログを研究資料として集めていたが、基本的に通販が前提に作られており、すべての商品に印刷向けにペン画で描かれた絵が入っている。
アンティークのオークションなどで、当時の実際の品物を入手すると、細部は絵とは違ったりもしたが、その辺は許容範囲として黙認されていたのだろう。
機能さえしっかりしていればそれでいい・・という事である。
日本人から見れば大雑把というか、おおらかに見える国民性も、土地の広大さと関係があるのかもしれない。

L.L.ビーンの服は、厚手のしっかりした生地を使い、丈夫に作られているのが特長である。
30年ほど前に母親に頼まれて、ベロア調の生地のパジャマを取り寄せたことがある。
暖かくて本人も気に入って着ていたが、それが現在も何の問題も無く着られて、冬の寝巻きとして重宝しているという。
洗濯してもヨレヨレにならず、今でもしっかりしていると言っていた。

バブアーのコーデュロイの襟の話を何度かしたが、L.L.ビーンのジャケットにも、やはり襟だけコーデュロイのものがある。
この前書いた通り、このデザインはハンティング・ジャケットの典型のひとつで、L.L.ビーンを代表する製品にもなっている。
考えてみれば、僕は当時からそれを取り寄せて着ていたのだった・・・
ビデイルのようにくすんだ色ではないので、すぐにゴンゾーには結びつかなかった(笑)

しかし颯爽とそれを来て会社に行ったら、社員から、変わったセンスですね・・・と言われたのを覚えている。
身近にそんなものを着ている人はいなくて、かなり特殊なデザインに見えたようだ。
それが今ではごく当たり前のものとなり、会社の帰りに簡単に買うことが出来るようになった。
30年ほどの間に、けっこう日本人の生活も変わったんだな・・と感じる。
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