引き金


Z9 + NIKKOR Z 50mm f/1.2 S

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お客さんが来ると世界情勢の話になる。
先日もある機械メーカーの人と話をした。
僕より少し若いのだが、もう30年近い付き合いになる人だ。

海外の製品の日本代理店の人なので、仕事で外国に滞在することが多い。
長年あちらと交渉をしてきたので、向こうの人たちの性格や考え方に独自の見解を持っている。
その方が戦争の話の流れで、自分が海外で危険な目に遭った体験を話してくれた。

彼は過去に4回、ホールドアップされた経験があるという。
そのうち2回は、本当に命を失う危険が高かったという。
場所は東南アジアである。
手を上げてひざまずかされて、銃を頭に突きつけられた。

今引き金を引かれたら死ぬ・・という状況になった。
そうなると、もう動くことが出来なくなる。
何もしないと殺される状況なのに、人は動けなくなるのだ。
専門の訓練を積んだ人でないと、そういう状況で適切に動くことは難しいらしい。

たまたま引き金は引かれることは無く、彼は生き残った。
だからこそ今ここで話しているわけだが、柔らかい物腰の裏に何か強いものを感じさせるのは、そういう経験からきているのだと分かった。
海外と行き来する機会の多い人には、似たような体験をした人もいるだろう。

僕もヨーロッパに行った時は、自分がターゲットにならないように、常に周囲に気を配って歩いている。
そのためとても疲れる。
入ってはいけない路地・・というのが、けっこうあるのだ。
もちろん看板にそう書いてある訳もなく、瞬時に周囲の空気を感じ取って、そこから離れるようにしなければならない。
日本のように、どこにでも気楽に撮影散歩に行くことは出来ない。

その人は、目の前で人が殺される場面にも遭遇したという。
やはり東南アジアであるが、ホテルの部屋にいると、何台ものパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。
彼は外で昼食を取ろうと、ホテルのロビーに降りたところ、フロントの人に危険だから出ない方がいいと呼び止められた。
武装した強盗犯が逃走しているという。

仕方なくラウンジのソファーに座ったところ、目の前のエントランスに、けたたましいサイレンの音と赤いライトが集まってきた。
よりによってそのホテルの正面玄関のガラスドアのすぐ外に、追い詰められた犯人が立ったのだ。
その向こうには、5、6人の銃を構えた警察官が、犯人を取り囲んでいるのが見えた。

何かをきっかけとして、警官たちの銃が一斉に火を噴き、凄まじい銃声が響き渡った。
ドアのガラスにひびが走り、弾丸のうちの1発が、ガラスを突き破って室内に飛び込んできた。
残りの銃弾は犯人の体を蜂の巣にした。

バシュッと血液が吹き上がり、ガラスがペンキで塗ったように真っ赤に染まった。
犯人の体は八つ裂きになり、大量の血しぶきと肉片が飛び散ったのだ。
恐らく口径の大きいリボルバーで撃たれたのだろう。

彼はその場で愕然となり、ただ動けずに見ているしかなかったという。
悪いやつは容赦なく射殺する・・・というのが、その国の常識であった。
実のところ、現在の世界情勢を見ていると、日本以外の多くの国の常識がそれであると分かる。
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