仕上げ


SIGMA DP1Merrill

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買ってはみたが失敗した・・という靴がある。
新しい趣味を始めると、起こりがちなことである。
国産のダークブラウンのクォーターブローグなのだが、実際にそれを履くシチュエーションがみつからない。

単にブラウンの靴も必要かな・・と思って揃えたのだが、これは失敗であった。
品質が悪いというわけでは決してなく、僕がビジネスでブラウン系の靴を履くことがないのだ。
中途半端な買い物をしてしまったか・・と思っていた。

そこで、その靴を使って、靴磨きの練習や実験を行っている。
革は国産のキップで、それほど高級なものではないのだが、それゆえにかえって役立っている。
光沢を出すのがすごく難しいのだ(笑)

時間をかけて何度も磨いて、やっとまあまあの輝きを出すことに成功した。
艶出し仕上げをやられる方ならご存知だろうが、磨くというより、ワックスを薄く重ねていき、表面をごく軽く研磨する・・という工程を何度も繰り返す。
その靴の場合、十数回もワックスを上塗りしなければならなかった。

最近は、つま先を光らせすぎるのが、少し嫌になってきている。
足元がやたらピカピカ光るのも、それに見合うカッコいい人ならともかく、僕の場合明らかに浮いてしまうのだ。
何だかピカピカの一年生みたいで滑稽である。

そこで思いついたのが、トゥを光らせるのは程々にしておいて、逆にそれより後ろのヴァンプやクォーター部分の艶を落とすことで、相対的にバランスが取れないか・・ということだ。
キャップ部分の横一文字のラインを境に、前と後ろとで仕上げにコントラストをつけたい。
といってもピカピカにはしたくないので、靴の中央部分の艶を抑えることでそれを演出する。

どういうグッズを使って仕上げをすればいいか、いくつかの靴店で尋ねたが、多くの人が推薦したのがデリケートクリームという商品だ。
水分主体のゼリー状のクリームで、染みのつきやすい難しい革にも使えるようになっている。
これだと革の本来の素の状態に近い仕上がりになるという。

早速例のブラウンの靴で試してみた。
マスキングして塗り分けるように、ブローギングの縫い目の前後ではっきりと分けて仕上げる。
なるほどデリケートクリームを塗りこんだ部分は、不自然な艶が収まって、人の肌のようにしっとりとしている。

仕上がった靴を、少し離れて見てみる。
まるで2種類の革が使われているかのように、パーツごとの質感に差異が感じられる。
それでいて、くどい輝きがない。
使い道に困ったあのブラウンの靴が、妙にカッコよく見える。
何だか履かないのは惜しいと思えてきた(笑)
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