酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

「資本主義崩壊の首謀者たち」~暗闇で富を貪るマフィアを撃つ

2009-07-29 01:27:58 | 読書
 総選挙まで1カ月。戦後64年を検証しつつ、リアルタイムの日本と世界を見つめる夏になる。最適の〝参考書〟は広瀬隆氏の新刊「資本主義崩壊の首謀者たち」(集英社新書)だ。既に15万部を売り上げたというから、長年のファンとして喜ばしい限りだ。

 広瀬氏は反原発運動の闘士で、環境問題全般に理解が深い。ゴア(原発産業の代理人)が説くCO2温暖化説に疑義を唱えていることは、当ブログで記した通りだ。

 広瀬氏は理系らしく詳細なデータと数字を提示するが、本書には更なる趣向が凝らされている。現状を鋭く抉った18本のヒトコマ風刺漫画(ニューヨーク・タイムズ掲載)が広瀬氏の論旨を補強していた。

 広瀬氏の著書を読むことは、メディアの報道と180度異なる〝発見〟の連続である。経済は苦手ゆえ、本書を正確に理解したとは言い難いが、興味を覚えた点を以下に記したい。

 広瀬氏によれば、経済腐敗の起点はクリントン政権末期である。銀行と証券会社の分離を定めたグラス・スティーガル法が廃止されるや、全米に溢れる膨大な金が銀行を通してウォール街に流れた。金融工学のエリートたちは、欲望の連鎖を肯定するサブプライムローンを発見する。

 銀行から金を借りて家を買う⇒家を担保に車を買う⇒車を担保に電化製品などを買う……。住宅価格が安定しているうちは錬金術は成立するが、下落するや負の相乗効果で国中が火だるまになった。サブプライムローンを推進したファニー・メイとフレディー・マックは国営銀行だったが、民営化されて暴利を貪った。ホームレスになった人たちと対照的に、破綻後は政府が救済の手を差し伸べる。

 両行を実効支配したのは、ブッシュ父子、クリントン政権に連なる面々だった。本書には金融マフィアのメンバーが実名で記されており、以下の構図が浮き彫りになる。

 米国政府高官=排出権取引を進めるグループ=原油や穀物価格を操作する投機屋=サブプライムローンを喧伝した詐欺師=公的機関(IMF、WTO、FRB)を牛耳る利権屋=ハゲタカファンドのリーダー(〝史上最低の副大統領〟クエール氏など)……。

 金融マフィアたちは席を移動しながら、世界の富を貪り続けている。欲望と狂気を煽った金融危機の最大の責任者、ルービンとサマーズ(ともに財務長官経験者)は、何とオバマ政権の経済顧問でもある。「悪い奴ほどよく眠る」ほど本書のサブタイトルに相応しい言葉はない。

 サブプライムローンの債務は2兆円といわれているが、不動産債務の合計は1400兆円に達するという報道もある(ニューヨーカー誌)。誰が天文学的数字というべき債務を抱えているのだろう。広瀬氏の指摘に衝撃を受けた。

 例えばGM……。金融危機が表面化する直前、グループ全体の利益の64%を稼いでいたのは金融子会社GMACだった。売れない車よりGMACが抱えた債務が本体を追い詰めたのだ。日本のレイク(消費者金融)を買収したノンバンクのGEキャピタル(GEの子会社)の例もあり、アメリカの製造業はとっくに金融業に軸足を移していたのだ。

 広瀬氏を〝反ユダヤのデマゴーグ〟と批判するのは的外れだ。広瀬氏が刃を突きつけるのは一般のユダヤ人ではなく、アジアやアフリカの民衆を食い物にするユダヤ人だ。欧米で金融マフィアの圧力に屈する傾向が強まっている。とりわけ顕著なのが芸能界で、著名な俳優やロックスターで、パレスチナで進行中のジェノサイトを批判する者は皆無といっていい。

 早朝出勤なので、タイムオーバーだ。広瀬氏は日本が取るべき進路についても記しているが、選挙についての稿で紹介するつもりだ。



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3 コメント

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広瀬隆氏の慧眼 (humming)
2009-08-17 11:27:20
初めて書き込みさせて頂きます。
情報が異常に溢れ、webやブログでも「リベラル」と思われるサイトがミスマッチの世論誘導だったり、玉石混交の昨今、管理人さんの主張にとてもシンパシーを感じます。
広瀬隆さん「DAY'S JAPAN」を主宰されていて?、定期購読してはいないのですが時々買い求め、逸見庸氏同様触発されています。
早速、「資本主義崩壊の首謀者たち」を読ませていただきます。
こういう情報が乏しい書籍購入費しかない者にはとても助かります。
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訂正 (humming)
2009-08-27 18:06:26
「DAYS JAPAN」を主宰されているのは広河隆一氏でした。
「資本主義崩壊の首謀者たち」を読み、赤祖父俊一氏の「正しく知る地球温暖化」も読みました。改めて、メディアのミスリード、暴走を痛感しました。
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広瀬氏の優れた人間性 (酔生夢死浪人)
2009-08-29 06:29:06
 一度だけ講演会に参加し、終わった後、その場で他の希望者と共に広瀬氏と歓談する機会を得ました。

 誰に対しても胸襟を開き、同じ目線で誠意をもって対応する姿勢に感銘を受けました。著書からはアジテーター的な激しさ、理知へのこだわりを感じますが、情と優しさを持った人だと思います。

 広瀬氏は古いタイプの工作者として全国を歩き、一期一会を繰り返しながら、他者への距離感を学ばれたのでしょうね。
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