10代の頃はNPB――当時はこんな洒落た呼び方はしなかったが――の開幕を心待ちにしていた。中学や高校ではプロ野球の結果が朝の挨拶代わりで、巨人ファンだった俺は、阪神ファンのクラスメートとの丁々発止を楽しみにしていた。何せV9時代から余裕もあったのである。その後、広島→近鉄と宗旨替えし、この四半世紀はベイスターズを贔屓にしている。
NPBに先立って東京で開幕したMLBのカブス対ドジャース戦は、2試合とも視聴率が約30%と高い人気を裏付ける結果となった。全米ナンバーワンバンドであるパール・ジャムのフロントマン、エディ・ヴェダーはかねてカブスファンと知られているが、今回はドームに駆けつけるだけでなく、ジャック・ホワイトの東京公演に飛び入りで登場してファンを驚かせた。
きのう開幕したNPBではベイスターズについて、<リーグ優勝していないチームに日本一の価値はない>という声もあったが、それは的外れだ。NFL、MLB、NBA、NCAAカレッジフットボールでもポストシーズンでの下克上は頻繁に起こり、成し遂げたチームは称賛される。昨季のベイスターズは巨人、ソフトバンクと対戦した時、両チームを勢いで上回っていた。
とはいえシーズン通して試行錯誤の連続で、ガッカリさせられたことも少なくなかった。それでも苦境を乗り越え日本一を達成出来たのは、名前を知られていないスタッフたちの地道な努力のたまものといえる。ドキュメンタリー「勝ち切る覚悟~日本一までの79日」にはいかにしてケミストリーやモメンタムを獲得したかが描かれていた。三浦監督は引っ張るというより、気持ちを吸い上げることでチームをまとめるタイプであることがわかった。
クローザーの森原が間に合わなかったのは痛いが、バウアー、ジャクソン、ケイの外国人トリオと東の4人で40勝、大貫、平良、石田裕、吉野etc……で20勝というのが上位進出に向けた条件だ。エラーが多かったチームがソフトバンク戦では守り勝ったように、序盤に躓いても修正を利かせていけると思う。攻撃陣でキーマンに挙げたいのは佐野だ。開幕戦は出場しなかったが、筒香の代わりに左翼に入ったり、試合後半にファーストを守ったり、代打で登場したりと、ユーティリティーぶりを発揮していくはずだ。
注目は広島だ。9月に5勝20敗と首位から奇跡的な急降下でベイスターズを助けてくれたが、選手育成力を発揮してペナントレースを面白くしてほしい。パ・リーグ最大の注目ポイントは、日本ハムがソフトバンクの牙城を崩せるかだ。ソフトバンクは日本シリーズでも、躍動感に欠ける嫌いがあった。野球ファンは新庄ハム乗りだが、食い込むとすればロッテかもしれない。大卒新人の当たり年で、開幕戦ではロッテ・西川、西武・渡部聖、楽天・宗山で活躍した。新人王争いは熾烈になりそうだ。
開幕直前、悲しいニュースが飛び込んできた。通算350勝を挙げた米田哲也容疑者が缶酎ハイ2本(300円相当)を万引して逮捕された。経済的に苦しい状況に追い詰められていたことは窺える。気になったのはNPBの年金制度や互助制度で、レジェンドの大投手を救えるような仕組みから程遠いことは報道などで明らかだ。ちなみにMLBでは、5年以上メジャー登録された選手は62歳になると1000万円以上の年金を受給出来るという。NPBの選手会も、この問題に着手してほしい。
最後に高松宮記念の予想を。⑭ナムラクレア、⑩サトノレーヴの1、2番人気は鞍上がルメール、モレイラで死角は見当たらない。⑥ルガル、⑬エイシンフェンサーあたりも上位食い込み候補だが、秘密兵器として狙っているのは⑱ペアポルックスだ。岩田康騎手が5戦連続で騎乗しているのは心強い。まだ4歳だし、スプリント戦線の新星誕生を期待したい。
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