酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

「狂った一頁」~イブの友はレイジとPANTA

2012-12-24 23:31:12 | 音楽
 原発は再稼働どころか新設にも言及し、TPP参加に含みを残すなど、自公の前政権継承は確実になった。〝安倍州知事〟の最大の使命は、日中軋轢の維持かもしれない。中国市場からの日本企業駆逐は、米財界とワシントンの総意なのだ。

 BS1で放映された「WHY POVERTY? 世界の貧困~なぜ格差はなくならない」(全8回)に刺激され、ここ数日、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのDVDを繰り返し見ている。クリスマスとレイジ? 何たるミスマッチ! と感じる人がいるだろう。だが、餓えと貧困が世界の主調になった現在、レイジこそがクリスマスに相応しいバンドといえる。そのことを証明したのはイギリスのロックファンだ。ネット上の呼びかけで3年前、レイジの「キリング・イン・ザ・ネーム」がUKクリスマスチャートで1位に輝いた。

 ♪この世界を操る権力の中枢には 十字架を燃やす者たちと同類の人間がいる 殺戮の権限を与えているのは誰か 今やおまえは奴らの言いなり バッジを身に着けた選ばれし白人が相手なら 彼らの死を正当化するというのか……

 字面をなぞれば、<彼ら=黒人やヒスパニック、選ばれし白人=警官>の図式で米国内の差別主義者を糾弾する曲と受け取れる。だが、本作が1992年に発表されたことを踏まえれば、<彼ら=イスラム教徒、選ばれし白人=米軍>と捉えることも可能だ。

 レイジ並みの知性と反骨精神を誇るロッカーは稀だが、日本にはPANTAがいる。イブの夜は「2012 PANTA復活祭」(初台)に足を運ぶ。制服向上委員会、アキマツネオ、中川五郎、樋口舞にスペシャルゲストの稲川淳二、飛び入りの松村雄策と、PANTAと親交が深い多彩なゲストのパフォーマンスとトークを満喫した。

 トリのPANTAはMYWAY61バンドを率い、フルスロットルでファンを熱くする。後半は「ルイーズ」、「屋根の上の猫」、「マーラーズ・パーラー」で盛り上がり、アンコール前はステージに出演者が集合して「悪たれ小僧」を歌う。PANTAの人柄に見合ったアットホームなイベントだった。

 選択肢はもう一つあった。「原発全廃、絶対できる! 大集会」(日比谷公会堂、「終焉に向かう原子力」主催)は広瀬隆氏と山本太郎氏が進行役を務める魅力的なイベントだったが、「PANTA復活祭」と時間がバッティングしたので断念した。ソールドアウトでチケットを入手出来なかった広瀬氏と小出裕章氏の講演会(22日、豊島公会堂)ともどもネットで視聴し、心を洗って新しい年を迎えたい。

 閑話休題。今日も2曲セットリストに入っていたが、PANTAは先日、頭脳警察名義で「狂った一頁」を発表した。前衛映画「狂った一頁」(1926年、衣笠貞之助監督/川端康成原作)に感銘を受けたPANTAは、80年余の歳月を超えてサウンドトラックを制作する。ライブ形式で録音されたのは2年前だが、ようやく日の目を見た。

 ラディカルというパブリックイメージが独り歩きしているが、PANTAは情緒と醒めた狂気を詩と音楽で表現する稀有のロッカーといえる。自身が「難しい曲を作って自分の首を絞めた」とMCしているように、日本的な情念に根差した詩を、変調を繰り返す分厚いサウンドに塗り込めている。愛に憑かれた女が、長い髪を振り乱して踊っている……。そんな鬼気迫るシーンが脳裏のスクリーンに浮かんできた。闇を舞う言霊と音霊を捉えたようなアルバムだった。

 ロックをメッセージとアートに領域に飛翔させたPANTA、いや、PANTAさんとは、ともに反原発集会に参加した。人柄に感銘を受けたことは別稿(7月30日)に記した通りである。周囲に気配りする優しいカリスマのパフォーマンスに、来年以降も触れていきたい。
コメント (3)
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