弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

アベノマスクは令和のインパール

2020-06-04 19:43:30 | 歴史・社会
布マスク「質より量」、迷走
政府、早さ重視 国内検品断る
 2020年6月1日 朝日新聞朝刊
『・・・マスク不足の中、調達の現場ではなにが起きていたのか。
「3月中に1500万枚、4月中に5千万枚ほしい」
2月後半、最大の受注企業となる「興和」(名古屋市)の三輪芳弘社長は政府からの依頼に驚いた、と振り返る。枚数の桁が違った。
「量ですか、質ですか」。
納期を考えて優先事項を訪ねる三輪氏に政府の担当者は言った。「量だ。とにかく早くほしい」』

興和が生産するマスクは、不織布が主流でしたが、布マスクも少数ながら扱っていました。政府は一貫した生産ができるとみて依頼したのですが、この時点で、政府の担当者も同社も、のちに「アベノマスク」とも言われる全戸配布の布マスクになるとは想像していませんでした。
生地はタイとインドネシアで加工、縫製は中国に依頼し、急遽集めた作業員は計1万人以上でした。
同社は最初、国内での検品を強く希望しましたが、それでは検査が厳しすぎて納期が間に合わないということで、政府側が断りました。契約書では、隠れた不具合が見つかっても興和の責任を追及しないとの条項が入りました。
『布マスク計画に関わった政府関係者は言う。「マスクが国民に行き渡るようにしろ、というのが官邸の意向だったが、これほどの量を短期間で確保するなんて元々厳しい目標だった」』

3月5日、安倍首相は布マスク2千万枚一括購入を切り出します。同じ頃、経済官庁出身の官邸官僚の発案で、布マスクを全戸配布する構想が官邸内で浮上していました。
そして4月1日、首相は1世帯に2枚ずつ布マスクを配る計画を表明します。マスク確保に動いた政府関係者の多くは直前まで知らされませんでした。
『マスク確保に関わった政府関係者の一人はこう振り返る。「『マスクをなんとかしろ』という官邸の声の大きい人が言ったことが通り、無理に無理を重ねた。」
関係者らの間では、今回の配布計画は第2次世界大戦中の日本軍による「インパール作戦」にたとえられているという。司令部がずさんな計画を強行して多くの犠牲を出し、「大戦中最も無謀」と呼ばれた作戦だ。』

こんなことが、日本の政府中枢で起こっているのですね。
危急存亡のときでしたら、無理に無理を重ねてでもその危機を乗り越える、ということはあるでしょう。しかし、「短期間で布マスクを全戸配布する」などという話は、何ら危急存亡の対応ではありません。ちゃんとしたリーダーだったら、実行部門に「できるか?」と確認してから指示するでしょうし、もしリーダーが無理筋の指示を出した場合、ちゃんとした実行部隊だったら「それは無理です」と意見具申するはずです。
今の日本の中枢(官邸と各省庁)において、官邸は無理な指示を平気で出すし、各省庁は無理であっても「それは無理です」と言えずに実行し、結局失敗で終わる、という体たらくです。
このことは、我が家に届いたアベノマスクの写真とともに、記録に残しておくべきと考え、記事としてまとめました。題して「アベノマスクは令和のインパール」です。


我が家に届いたアベノマスク
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