弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

芳野満彦「山靴の音」

2008-03-26 23:24:36 | 趣味・読書
芳野満彦「山靴の音」(二見書房)


最近、何かの雑誌で、お薦めの山岳もの書物が5冊ほど紹介されていました。

そのうちの1冊「処女峰アンナプルナ」については、中学の頃読んでいます。人類がはじめて8000メートル級の山に登頂したときの記録です。中学時代に読んだ本の記憶は深く、私はこの本の登場人物4人の名前を今でもフルネームで言えます。

井上靖の「氷壁」は読んだはずですが記憶がありません。それに、芳野満彦「山靴の音」の他、2冊ほど紹介されていました。

「山靴の音」については、確かに中学の頃、そのような名前の本があると聞いた記憶があります。今回購入して読んでみたら、初出版は昭和35年ということで、ちょうど私の中学時代直前です。

芳野氏は、戦後まもなく、17歳の年の12月に、友人と2人で八ヶ岳に登って遭難し、友は死亡、自分も重い凍傷を負って両足の指全部を切断します。しかしその後も登山を続け、穂高、剣岳などの岸壁で初登攀の記録を続出します。「山靴の音」は、そんな芳野氏が書きつづった記録を、昭和35年までについてまとめたものです。

上高地から槍ヶ岳の方向に川をたどっていくと、徳沢園という宿泊施設があります。夏の間は営業し、冬になると従業員は山を下り、その地での人間活動は休止します。芳野氏は、遭難の2年後、冬の間この徳沢園を一人で守るという越冬の仕事に就きます。その後も、1年のうち半分以上を山の中で過ごし、数々の初登攀記録を打ち立てるわけですが、まあその変人ぶりといったら、極めつきですね。

この変人ぶりは、「雪に生きる」を書いた猪谷六合雄(いがやくにお)氏に匹敵しそうです。猪谷氏は、コルチナダンペッツォで開かれた冬季オリンピックの回転競技で銀メダルを取った猪谷千春氏の父君です。

こういった本が読み継がれるというのも、われわれ一般人が社会人としての枠の中で生活する日常において、超越した自然児の生活を読んで愉快に感ずるからか、と思います。男はつらいよの寅さんの映画を観て、自分が寅さんに感情移入するのと似ています。

しかし私の読書傾向をたどってみると、最近だけでも、米軍少尉の飯柴智亮氏、NGOの大西健丞氏、紛争屋の伊勢崎賢治氏、サッカーコーチの湯浅健二氏、埋蔵金の高橋洋一氏と、「変わった日本人」シリーズが多いような気がします。
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