大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2022年03月30日 | 創作

<3724> 写俳二百句(121)  スミレ

             一花よし群れてまたよし菫草

             

 春本番。サクラ(ソメイヨシノ)は満開に近く、辺りを明るくしている。この時期になると山野ではスミレが一味違った花を咲かせ、山野に赴く私たちを迎えてくれる。行脚の山路越えの道の辺の花を松尾芭蕉は「山路来て何やらゆかし菫草」と詠んだ。人口に膾炙した句であるが、この句のごとく、山路で出会うその花にはこころ惹かれるものがある。

 スミレといっても、いろいろあってそれはバラエティ―に富み、わが国には五十種ほどが分布すると言われ、変種を含めるともっと多く、自然の山野を誇る大和地方でもいろんな種類のスミレが見られ、私も二十種以上の花に出会って写真にして来た。ここではその中の身近でポピュラーな七種について写真で紹介したいと思う。

   すみれとはいい名ですねすみれちゃん

 スミレの名は距(きょ)を有する花が大工さんの用いる墨壷(墨入れ)に似るので、この「墨入れ」からスミレになったと一説にある。異説もあるようであるが、とにかく、その可憐な花とスミレの名はピッタリマッチして覚えがいい。このため女性の名に用いられることがある。というので上記の句。とにかく、スミレはゆかしい草花で、冒頭の句。

 写真は左からもっともポピュラーな淡紫色の花をつけ群生することが多いタチツボスミレ、濃い紫色の花を咲かせるスミレ属の総称スミレと同じ固有名で知られるスミレ中のスミレ、民家の石垣の間などに見られるかわいい花で、この名があるヒメスミレ、ツボスミレの別名でも知られ、少し湿気のあるところに生え、白い花をつけるニョイスミレ、日当たりのよい草地で見かけるスミレに似た花をつけるが、葉が立つスミレに対し、葉が横向きになる傾向があるノジスミレ、田畑の畦などに群生して白い花を咲かせ、群れて咲くことが多いアリアケスミレ、山路でよく見かける長三角形の葉の裏が紫色をし、この名があるシハイスミレ。