<3703> 余聞 余話 「平城宮跡歴史公園の葦刈り」
葦を刈る半分残し刈るといふ萱鼠野鳥住処にてあり
春本番を前に平城宮跡歴史公園(国土交通省近畿地方整備局国営飛鳥歴史公園事務所平城宮跡管理事務所)では草刈りの葦刈りが行われている。約132ヘクタールの宮跡は朱雀門、東院庭園、大極殿に続き、現在、東楼の復元が進められているが、なお、広大な草地が広がり、一般人の立ち入りも自由で、市民の憩いの場になっている。
広い葦原も点在し、葦原には小鳥のような球状の巣をつくるレッドデータブックに名を連ねる希少種の小形のネズミ、カヤネズミやアリスイ、ヒクイナといった貴種の野鳥も多く、ツバメの集結も見られる。
草刈りは恒例になっていて、毎年アシも刈り払われるが、半分は残すという。人の背丈の倍ほどもあるアシの群落に電動草刈り機で挑む作業員に訊ねてみると、全部刈ってしまうとカヤネズミも野鳥も棲み処を失ってしまうからという。
ウクライナではロシアの侵攻による人間が人間の住処を奪う醜く悲惨な状況が進行中で、この刈らずに残す草刈りの葦刈りの理由を聞きながら、人々の生活を奪うこの理不尽極まりないロシアの侵攻が思われたことではあった。ほんの少しでもこの葦刈りのような思いやりの気遣いがあれば、戦火は避けられ、平和が乱されることはなかった。
写真は電動草刈り機で刈られ行く葦原(左)、刈られた手前の葦原と残された後方の葦原(中・後方の山は若草山と春日山)、刈り残されたアシを渡り行くメジロ(右)。