<1300> 献木によるヤマザクラの植樹
引き継いで来しものとしてある姿 たとへば今を咲きゐたる花
花が近い吉野山であるが、奥千本では次世代に夢を繋ぐヤマザクラの植樹が進んでいる。これは「22世紀吉野桜を愛でる会」が衰え行く吉野山のサクラを絶やさず、次世代に引き継ぐために行なっているプロジェクトで、提供されるなどしたスギやヒノキ林を伐採し、その跡地に献木を募って千五百本ほどのヤマザクラの苗木を植えたもので、植樹はほぼ終了し、現在、シカの食害を防ぐ樹脂製の網を取り付ける作業が行われている。
植樹は二ブロックで行なわれ、一つは吉野山の最奥のところ、金峯神社より東南側約数百メートルのところ、西行庵に面した斜面で、広く切り拓かれている。下方には数十本のヤマザクラが植えられているが、老木となりつつあるので、今回植樹したものが大きくなれば、奥千本の西行庵の辺りはみごとなヤマザクラが見られるようになる。
シカは糞など見られず、その気配もないが、出没するのであろう。苗木の被害はそこここで聞く話である。その意味からも管理は欠かせないところである。思うに、サクラのみならず、樹木というのは一、二年で役立つように成長するものは少なく、サクラにも言える息の長い取り組みが求められる。その取り組みは世代を越えて行なわれるものだろうが、それゆえに、この取り組みは貴重と言える。そして、その取り組みは結果として名所を守り、歴史を継いで行く意味において有意義なものと思える。
ただ、災害のことも考慮に入れて、管理は十分に行なってもらいたいという気がする。 写真は植林のスギが伐り出され、ヤマザクラの苗木が植えられた跡地の斜面。苗木には一つ一つに樹脂製のシカ避け防護網が施されている。