<1255> 御田植祭 (おんだ祭り)
御田植祭 春の福呼ぶ 神の庭
建国記念日の二月十一日、大和では各地で稲作における予祝の祭りである御田植祭のおんだ祭りが行なわれ、豊作と豊作による子孫繁栄を願った。祭りには田仕事の所作がつきもので、中には男女の睦みごとや子宝に関わる所作を組み入れた祭りも見られ、どこともなごやかに、ときにはユーモラスをもって予祝を盛り上げているのが見られた。
以前にも触れたが、この日は初代の神武天皇が国を治め始めた日で、昔の紀元節に当たり、豊作は国の栄え、民の栄えで、この予祝の祭りがこの日に集中するということになった。また、今日は暖かかったが、「紀元節には雪が降る」と大和では言われるように、立春を迎えたとはいえ、春は名のみのこの時期はまだ寒く、農事には早い農閑期のため祭りが集中することになったとみられる。
という次第で、大和の御田植祭(おんだ祭り)は二月十一日に集中している。では、十一日に行なわれる大和のおもだった御田植祭(おんだ祭り)を見てみよう。まず、雨に見立てた砂をかけ合い豊作を祈願する廣瀬神社(河合町)の砂かけ祭りがある。午前中に拝殿で殿上の儀が行なわれ、お田植えの所作が披露される。午後には庭上の儀があり、その名の由来になった激しく砂をかけ合う行事などが行なわれる。砂が多く飛び交うほど豊作になると言われる。
次に、桜井市江包(えつみ)・大西のお綱祭り(綱掛け祭り)がある。お田植えの所作はないが、田んぼで相撲を取り、泥だらけになった江包、大西の両地区から氏子たちが、稲藁で作った男女を模った大きな綱を担いで素盞鳴神社に運び、社前の木に掛けて合体させる奇祭で、豊作と子孫繁栄を願って行なわれる。この祭りも一種のお田植え祭りと言ってよいように思われる。
次に、六県神社(むつかたじんじゃ・川西町)の「子出来おんだ」と呼ばれて親しまれている祭りがある。所作の中に妊婦の弁当運びや出産の場面が設定されているのが特徴的で、やはり豊作と子孫繁栄の予祝が見て取れる。ほかでも見られなくはないが、この予宿の祭りが夜間に行なわれるのも珍しい。ほかにも十一日に行われるこの予祝の祭りでこれっまでに見て来たものには大和郡山市小泉町の小泉神社の祭りがあり、今年は葛城市笛吹の笛吹神社(葛木坐火雷神社)の祭りに出向いてみた。
まだ見ていない祭りでは、中山八幡神社、御前原石立命神社(ともに奈良市)、村尾坐神社(田原本町)などがあり、みな二月十一日に行なわれる。写真は上段左が砂かけ祭りの殿上の儀、牛役の所作が笑いを誘った。次は庭上の儀で雨のように参拝者の頭上に降る砂(この二つは廣瀬神社で、牛役の所作は今日の撮影、砂かけの写真は平成二十六年の撮影)。次は田をならす所作の牛役ら。右は稲の苗に見立てた杉の枝葉で田植えの所作を披露する神主ら(この二つは笛吹神社で今日撮影したもの)。
写真下段は左がお田植えの所作の前に奉納される神楽の舞い(小泉神社で、平成二十五年の撮影)。次は雄綱と雌綱が合体がするお綱祭り(素盞鳴神社で、平成二十四年の撮影)。次は子供たちに囃され叩かれる田男役。右はお腹に太鼓を入れた妊婦役の所作(この二つは六県神社で、平成二十四年の撮影)。