shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

The Best Of Rainbow

2010-02-13 | Hard Rock
 初めて聴いた盤がたまたま自分の好みに合わなかったがためにそのアーティストに対してネガティヴなイメージを持ってしまうという不幸な出会いをしたケースが少なからずある。ちあきさんのように1年も経たないうちに誤解が解けてその真の魅力に気がつけばまだ救われるが、そういう状態が何年も続くというのは後から振り返るとめっちゃ損したような気分だ。私の場合、聴く順番を間違ってしまったがために入門が遅れてしまったアーティストの一つがリッチー・ブラックモア御大率いるレインボーである。
 彼がディープ・パープルを脱退してレインボーを結成したのが1975年、当時の私はちょうど洋楽を聴き始めたばっかりでビートルズを追うのに忙しく、ハードロックと言えばゼッペリンとエアロスミスで手一杯、とてもじゃないがレインボーまでフォローする時間的余裕などなかった。そんなある日、たまたま友人から貸してもらったのがレインボーの 1st アルバム「銀嶺の覇者」で、パープル直系のハイスピードなハードロックを期待して聴いた私には地味すぎて “何じゃいコレは?” とガッカリしてしまった。更に悪いことに次に耳にしたのが79年にリリースされた「ダウン・トゥ・アース」からの1st シングル2-①「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」。たまたまラジオから流れてきたのだが、とてもブリティッシュ・ロックとは思えないアメリカナイズされた底の浅いポップ・メタル(←ファンの方、ごめんなさい...)にしか聞こえず、コレがあのリッチーなん?と失望を通り越して呆れ果て、 “リッチーはパープル時代で終わったんや...” と勝手に決め付けてしまった。
 そんな私の眼を開いてくれたのが B-⑦「キャント・ハプン・ヒア」という曲だった。この曲からレインボーに入門した奴なんて私ぐらいのもんだろうが、とにかく初めて聴いた時に後頭部をガツン!とやられたようなショックを受けた。私はこういう疾走系ハードロックを待っていたのだ。御大のギターソロもめっちゃクラシカルで、パープルを彷彿とさせるノリノリのサウンドがたまらない(≧▽≦) この曲はスタジオ録音ヴァージョンも良いのだが、更にハイスピードで演奏されるライヴ・ヴァージョンはもっと凄いので、そっちがオススメだ。衝撃を受けた私は “コレはいかん、ひょっとすると他のアルバムにもこんな曲が入っとったらエライコッチャ(>_<)” とばかりにレインボーのCDを買いに走り、今はなきミナミの名店ビッグ・ピンクでこの2枚組ベストを1,200円でゲット、レインボーのファンにベスト盤は人気がないのか定価5,800円のブツを格安で買えて超ラッキーだった(^.^) 
 このベスト盤はデビュー盤以降6枚のアルバムから16曲をセレクト、私の大好きな「キャント・ハプン・ヒア」に勝るとも劣らないカッコ良いハードロック・ナンバーが満載だ。まずは何と言ってもA-⑤「ロング・リヴ・ロックンロール」である。ハードロックのお手本のようなロニー・ジェイムズ・ディオ(←顔がアンドレ・ザ・ジャイアントそっくりです...)のヴォーカルはこの曲にピッタリだし、コージー・パウエル怒涛のドラミングも快感の一言に尽きる。リッチー御大のギターソロも涙ちょちょぎれる素晴らしさだ。とにかくコレはキャッチーなメロディーとへヴィーなサウンドが見事に両立したレインボー屈指の名曲名演だと思う。
 A-①「オールナイト・ロング」も大好きだ。2代目ヴォーカリスト、グラハム・ボネット(←横山のやっさんみたいなリーゼントにスーツ姿がいつ見ても笑えます...)のガナりたてるような歌声がポップなメロディーを持ったこの曲をヤクザなハードロックに昇華させているところが凄い。御大の力強いリフ攻撃にも圧倒されまくりのキラー・チューンだ。コージーの凄まじいドラミングで始まるA-③「ロスト・イン・ハリウッド」は疾走系ハードロックかくあるべしと言いたくなるようなカッコイイ曲。やっさん、じゃなかったグラハム・ボネットの暑苦しい声が曲にピッタリ合っているし、コージー渾身のドラミングも圧巻だ。2人に主役の座を奪われた感のある御大だが、キーボード・ソロに続いて飛び出してくるギターソロは絶品だ。
 A-⑦「キル・ザ・キング」ははクルクル目が回るようなギターが鳥肌モノで、ハードロックの様式美ここに極まれり、と言いたくなるスリリングなナンバー。レインボー版「バーン」みたいなハイスピード・チューンだ。A-⑧「ア・ライト・イン・ザ・ブラック」は「ハイウェイ・スター」の面影が宿るパープル直系ナンバーで、唯我独尊コージーのくってかかるような爆裂ドラミングに対し、オレがオレがオレがのリッチー御大がケンカ・リフで応戦する様は血湧き肉躍る凄まじさ。私が御大に求めているのはまさしくコレなのだと改めて実感した。やっぱりハードロックはエエなぁ... (≧▽≦)

Rainbow-Can't Happen Here


Rainbow - Long Live Rock And Roll


Rainbow All Night Long High Quality

「デイ・ドリーム・ビリーバー」特集

2010-02-12 | Cover Songs
 1960年代というのは洋邦問わず名曲の宝庫である。まさに百花繚乱と言える 60's なのだが、そんなオールディーズ・ナンバーの中でもこの「デイドリーム・ビリーバー」は他の曲が霞んでしまうぐらい素晴らしい完全無欠なエヴァーグリーン・ポップスで、自分の中では名曲の殿堂入りしている1曲だ。オリジナルはもちろんモンキーズで、1967年12月に4週連続全米№1に輝いた大ヒット曲なのだが、当時の私はモンキーズなど知る由もなく、知ってる外国人と言えばザ・デストロイヤー、ボボ・ブラジル、それにユセフ・トルコぐらいだった。
 私が初めてこの曲を耳にしたのは1980年、アン・マレーのカヴァー・ヴァージョンがアメリカでヒットし12位まで上昇、日本では話題にも上らなかったが、私はラジオで聴いてそのキャッチーなメロディーと彼女の温か味のある歌声がすっかり気に入ってしまった。その後1986年のモンキーズ・リバイバル・ブームの時にオリジナル・ヴァージョンを聴き、改めてこの曲の魅力を再認識したのを覚えている。
 モンキーズ・ヴァージョンのインパクトが大きすぎたせいか、私の知る限りではこの曲のカヴァー・ヴァージョンは極めて少ない。しかし昨日 YouTube サーフィン(?)してて偶然キヨシローのヴァージョンにヒット、久々に聴いてめちゃくちゃ良かったので早速カヴァー・ソングとして取り上げてみた;

①The Monkees
 元キングストン・トリオのジョン・スチュワートが作詞作曲、タートルズのチップ・ダグラスがプロデュース、そして何とあのショーティー・ロジャースがアレンジを担当するという鉄壁の布陣で制作されたモンキーズ5枚目のシングル。言うことナシの名曲名演だ。
The Monkees - Daydream Believer


②Anne Murray
 カナダの歌姫といえばセリーヌ・ディオンかサラ・マクラクランだが、70年代には間違いなくこの人だった。オリジナルそのまんまのアレンジながら、独特の温かい歌声が何ともいえず心地良い。オリジナルも良いが、私的にはこのヴァージョンが一番好きだった... キヨシロー・ヴァージョンに出会うまでは。
ANNE MURRAY - daydream believer


③忌野清志郎(ザ・タイマーズ)
 キヨシローの覆面バンド、ザ・タイマーズが全く新しい歌詞を付けてカヴァーしたこのヴァージョンはCMソングにも起用され大ヒット。彼の歌には人を惹きつけてやまない強烈な吸引力があり、特にコレなんかは原曲のメロディーの良さも手伝って何度も何度も繰り返し聴きたくなってしまう。彼の優しさ溢れる歌声を聴くにつれ、私達が失ってしまったものの大きさを痛感してしまう。
デイドリームビリーバー - 忌野清志郎 -


④少年ナイフ
 日本が、いや大阪が世界に誇るガールズ・ロックバンド、少年ナイフが最も得意とするのは楽しさ溢れる食べ物ネタのオリジナル曲だと思うが、そんな中にさりげなく入っているカヴァー曲も大好きだ。コレなんかもっとハチャメチャに演ってくれてもよかったぐらいだが、彼女らがこの曲を取り上げてくれただけで嬉しい(^o^)丿
Shonen Knife - Daydream believer


⑤小泉ニロ
 昨日 plinco さんと電話で喋ってて、 “小泉ニロって知ってるか?ボサノヴァ歌ってんねんけど、めっちゃカワイイで!” と言われ早速ネットで検索。いやぁ~、ヒラリー・ダフといい、小泉ニロといい、 plinco さんの美少女発掘嗅覚は大したモンだ(^o^)丿 キュートで爽やかな歌声が中々エエ感じなのだが、私にはバックの二胡が邪魔をしているように聞こえる。ニロに二胡は不要だ。
ボサノバ 小泉ニロ Daydream believer Bossa Nova Bossa@NILO ~Goodies~

ちあきなおみ リサイタル

2010-02-11 | 昭和歌謡
 私は日本で最高のシンガーはちあきなおみさんだと思っている。ただ単に歌が上手いというだけでなく、表現者としても他の追従を許さない孤高の存在であり、更にエンターティナーとしても超一流だ。それを確信したのは NHK「ビッグショー'77」出演時のステージ映像を YouTube で見てからで、約35分にわたるその超貴重な映像が7分割してアップされており、ちあきさんファンは必見なのだが(←下に2と4を貼っときました)、それらを見て思ったのは彼女は単なる歌謡曲の歌手とは激しく一線を画するジャズ・シンガー的な資質を持っているということ。レコードでの歌唱をステージで再現するという発想ではなく、ライヴならではの斬新な表現方法で歌に新たな魂を吹き込んでいるところなんかアニタ・オデイあたりのステージを彷彿とさせるものがある。これら一連の YouTube 映像を見て、ちあきさんの本当の凄さはライヴにあり、と確信した次第。ということで、ちあきなおみウイークの最終回は「ちあきなおみ リサイタル」でいきたい。
 彼女の残したライヴ盤は3枚あるが、選曲・アレンジ・音質のすべての面において私はこの「ちあきなおみ リサイタル」がベストだと思う。これは1974年10月に中野サンプラザで行われたコンサートの模様を収録したライヴ盤で、編曲は何とあの宮川泰氏だ。74年10月といえばちょうど「円舞曲」リリース後に体調を崩し「かなしみ模様」で復帰した直後なのだが、とても病み上がりとは思えない充実した内容だ。
 Disc-1ではまずヒット曲をそれぞれ2分程度にアレンジしてメドレー的な処理で一気呵成に聴かせる②「雨に濡れた慕情」~③「私という女」~④「夜間飛行」~⑤「四つのお願い」に圧倒される。良い曲と良い歌手の出会いを天才アレンジャー宮川泰氏が演出するという、これ以上ないステージだ。更にこのリサイタル用に書き下ろされた①「私はこうして生きてきました」と⑥「イロケの歌」も素晴らしい。①は彼女の半生を綴った歌詞を本人が情感を込めて歌っているし、⑥は彼女のコミカルな一面が垣間見れる貴重なナンバーだ。彼女のトークもめっちゃ面白い(^o^)丿
 シャルル・アズナヴールのカヴァー⑦「帰らざる青春」はザ・ピーナッツがラスト・コンサートで涙ながらに歌った忘れがたいナンバーだが、ちあきさんのヴァージョンはベテランのシャンソン歌手が自らの人生を振り返りながらオーディエンスに歌いかけているような深い味わいがある。宮川先生のドラマティックなアレンジも含めて、パリのオランピア劇場あたりが似合いそうなトラックだ。大好きな⑪「別れたあとで」はスタジオ録音ヴァージョンよりもジャジーなアレンジがめちゃくちゃカッコイイ(≧▽≦) ⑬「そっとおやすみ」ではカーペンターズの「クロース・トゥ・ユー」そのまんまのイントロから入るユニークなアレンジに宮川先生の遊び心が感じられて楽しい。
 Disc-2でまず度肝を抜かれたのが①「裏窓」だ。タイトルも違うし日本語詞がついていたので全くノー・マークだったのだが、このメロディー、どっかで聴いたことあるなぁ...と思ったら何と私の大好きなスタンダード・ソングの「ブルー・プレリュード」だった。まさかちあきさんの歌声で「ブルー・プレリュード」が聴けるとは!!! ちあきさんに関しては驚かされることばっかりだ(^.^) 
 8分近い大作④「ねぇあんた」はもう歌という次元を超越している。女の哀しみをコワイぐらいにリアルに表現する彼女の歌は聴いていて胸に突き刺さってくる。「夜へ急ぐ人」といい、この曲といい、他の誰にも真似のできない圧倒的な吸引力で、まさにちあきさんの真骨頂だ。⑤「円舞曲」は原曲よりもかなりゆったりとしたテンポで曲を慈しむように歌う。普通の歌手なら間が持ちそうにないところを絶妙なヴォイス・コントロールでこの曲の新たな魅力を引き出している。う~ん、コレにはもう参りましたという他ない。そして圧巻なのはショーのエンディングへ向けて大盛り上がりを見せる⑧「劇場」~⑨「バラード」~⑩「喝采」と続く一連のドラマティック歌謡3連発だ。⑧の絶唱はスタジオ・ヴァージョンを凌駕する素晴らしさだし、歌謡曲とは思えないような垢ぬけたアレンジの⑩を聴き終えた後のカタルシスは、エルヴィスのラスヴェガス・ライヴに匹敵するモノがある。これは70年代ちあきさんの白眉と言える出来だろう。
 彼女が一切の活動を停止してからもう18年もの月日が流れた。その間にもCDは売れ続け、私のような新しいファンが増えている。彼女の評価はその復活を願う声に比例するかのように年々高まっている。生きたまま伝説となった感のある大歌手、ちあきなおみ... 多分もう復帰はないだろうが、彼女が私たちに残してくれた歌の数々が放つ輝きは永遠に不滅なのだ。

↓ノリノリのロックンロールに驚倒
ちあきなおみ2 喝采 他メドレー


↓めっちゃ笑える究極のエンターテイメント
ちあきなおみ 4 四つのお願い ~女の一生Ver ~

ちあきなおみ・これくしょん ~ねぇ あんた~ (Pt. 5)

2010-02-10 | 昭和歌謡
 いよいよ6枚組 CD BOX も最終回、今日も気合いを入れてちあきさんを聴いていこう。⑪「かなしい唇」はデビュー曲「雨に濡れた慕情」のB面で、当初はどちらをA面にするか決めかねていたらしい。結局地方興行で客の反応の良かった「雨に...」がA面に決定したとのこと。「長崎は今日も雨だった」を裏返しにしたようなこの曲も決して悪くはないが、やはり「雨に...」で大正解だろう。⑫「愛の荒野」は「モア・モア・ラヴ」のB面で、同名のTBSテレビ映画の主題歌だという。彼女が最も得意とするムード満点の歌謡曲で、咽び泣くサックスが実にエエ味を出している。
 ここからは未発表超お宝音源のアメアラレ攻撃だ。⑰「勇気を出して」はちょうど彼女が方向性を模索していた1971年3月の録音で、これがビックリするようなブギウギ歌謡(゜o゜) 思わず身体が動いてしまいそうなラグタイム・ブギウギ系ピアノをバックにノリノリで歌うちあきさんがめちゃくちゃカッコイイ!!! まるで70年代によみがえった東京ブギウギだ。私としてはこれだけでもこの CD BOX を買った甲斐があったと思っている。⑱「終景」は「喝采」と同時期の1972年6月録音で、作者も同じ。どちらかというと「喝采」よりも「禁じられた恋の島」に近い曲想だ。
 ⑲「喝采(英語ヴァージョン)」はライナーによると、レコ大受賞翌年の1973年にオランダ輸出用(!)にレコーディングされた音源で、本邦初公開。ここでしか聴けないウルトラ・レア・トラックだ。いやぁ~、ホンマに価値ある CD BOX ですわ。英語で聴く「喝采」っちゅーのも中々オツなモンですね~(^.^) ⑳「さとうきび畑」はNHK「みんなのうた」で放送された時の音源から CD 化したという、 BOX 制作スタッフ執念のトラックで、オリジナルは森山良子。ちあきさんの抑制された深~い歌声の吸引力は凄まじく、寄せては返す波のような “ざわわ ざわわ~♪” に吸い込まれていく。わずか2分15秒の短い歌の中に何と多くの感情がこもっていることだろう!第2次大戦で蹂躙された沖縄の人たちの哀しみがコワイぐらいに伝わってきて、何度聴いても目頭が熱くなってしまう。下手な反戦メッセージの何十倍もの説得力でちあきさんの一言一言が心に沁み入ってくるのだ。音楽聴いててよかったな... ちあきさんに出会えてよかったな... そう思える1曲だ。目を閉じて、青空の下に広がるサトウキビ畑が “ざわわ~♪” と風にたなびいている風景をイメージしながら聴いてみてください。
 ということで4日間にわたって6枚組のうち Disc-1と2の収録曲を聴きながら彼女のキャリアを振り返ってきたのだが、改めてちあきなおみという不世出の大歌手の素晴らしさを再認識できた。Disc-3と4ではスタジオ録音盤だけでは窺い知ることのできない彼女の別の一面を垣間見ることが出来るし、Disc-5と6のカヴァー曲に至ってはオリジナルが霞んでしまうような素晴らしい歌の数々を楽しめる。このように貴重な音源が一杯詰まったこの6枚組 CD BOX 、ちあきさんマニアに絶対の自信を持ってオススメできる究極の逸品だ!

勇気を出して


沖縄 さとうきび畑 ちあきなおみ

ちあきなおみ・これくしょん ~ねぇ あんた~ (Pt. 4)

2010-02-09 | 昭和歌謡
 私はちあきさんは大好きだが演歌はどうしても身体が受け付けない。だから①「さだめ川」、②「恋挽歌」、④「酒場川」、④のB面で数年後に細川たかしのカヴァーで大ヒットした⑧「矢切の渡し」、①のB面の⑬「海郷」といった “ド演歌シリーズ” はいくらちあきさんフリークの私でも正直キツイ。上手いのは分かるが、やはり演歌独特のリズム(?)というかムードが私には無理。初めて KG ちゃんに CD を借りた時もこのあたりのド演歌連続攻撃ですっかり凹み、そのせいでちあきさん入門が遅れたという恨めしい楽曲群だ。私と同じようにこの時期のちあきさんのイメージで彼女を演歌歌手と勘違いしている人もいるかもしれないが、そのせいでこんな素晴らしい歌手がポップス・ファンから敬遠されるのは忍びない。一連の演歌路線はあくまでレコード会社の方針であり、決して彼女の本質ではない。そんな “暗黒時代” に何故か1枚だけ正気に返ったかのようにリリースされた正統派ポップス歌謡が③「女どうし」で、私にとっては地獄で仏、砂漠のオアシスのような存在だ。作曲は「円舞曲」の川口真で、梓みちよ系の溌剌とした “手拍子歌謡” が耳に心地良い。やっぱりちあきさんには王道の歌謡ポップスがよく似合う。
 この頃、ちあきさんは辛気臭い演歌から離れたかったらしく(←わかるわかる!)、中島みゆき、井上陽水、因幡晃といったニューミュージック系シンガーソングライターの作品を歌ったアルバム「ルージュ」を発表、そこからみゆきの⑤「ルージュ」(B面は⑭「帰っておいで」)をシングルとして切ってきた。このアルバムは以前ここでも取り上げたので詳しいことはそちらに譲るが、数多いちあきさんCDの中で最も好きな1枚だ。続いてリリースされたアルバム「あまぐも」(←ワルツフォーデビィなジャケットが雰囲気抜群!)からは友川かずきの⑥「夜へ急ぐ人」(B面は⑮「海のそばで殺された夢」)と河島英五の⑦「あまぐも」(B面は⑯「視覚い故里」)を連続してシングル・カット、特に⑥は “日本の女の狂乱を感じてもらえると嬉しい...” という彼女の言葉通りドロドロした情念渦巻く世界を怖いぐらいリアルに表現した歌で、発表当時には賛否両論が巻き起こったという。この時期の彼女が言った “賞は歌謡界にありすぎて、もう執着はないんです。それよりも人の心をナイフのようにグサリと突き刺すアダモみたいな歌手になりたいんです。” という言葉はまさにその後の彼女の活動を暗示しているようだ。尚、 “おいでおいで~♪” のフレーズで有名なこの⑥、アルバム・ヴァージョンは軽薄なアホバカ・フュージョンなアレンジと演奏(←ミッキー吉野とゴダイゴです...)が曲の雰囲気を完全にブチ壊していたが、このシングル・ヴァージョンはおどろおどろしい曲想をストレートに表現していて文句なしに素晴らしい!!! ちあきさんマニアは必聴だ。結局コロムビア時代最後のアルバム2枚は共にニューミュージック系の作品ながら、「ルージュ」の “明” に対して「あまぐも」の “暗” という、全く雰囲気の違う作品に仕上がっている。
 ⑨「Again」と⑩「星影の小径」はビクター移籍後のシングルだ。⑨は映画「時代屋の女房」(←夏目雅子さんの美しさが際立ってますネ!)の主題歌として1983年にシングルでリリースされた曲で、もちろんオリジナル・アルバム未収録の貴重な音源だ。シャンソンを歌ったアルバム「それぞれのテーブル」あたりに入っていても何の違和感もなさそうな佳曲だと思う。⑩はこれまで何度も激賞してきた超愛聴曲。NHK 特番のエンディングで、東京の夜景をバックに “ア~イ ラァ ヴュー ア~イ ラヴ ユー♪” とこの曲が流れてきて、 “今夜もどこかでちあきなおみの歌が流れている...” というテロップが入る見事な演出にジーンときてしまったのを思い出す。あのシーンを見ていなければ6枚組BOXもヘッタクレもなかったワケで、そう思うと何か運命的なものを感じてしまう。 “ちあきなおみってコブシの効いた歌唱の演歌系歌手” と誤解していた私の目からウロコを落とし、熱狂的なちあきさんフリークにしたのがこの歌声なのだ。 (つづく)

ちあきなおみ 夜へ急ぐ人x264


Chiaki Naomi  "ルージュ" Rouge


ちあきなおみ時代屋の女房主題歌アゲインagain

ちあきなおみ・これくしょん ~ねぇ あんた~ (Pt. 3)

2010-02-08 | 昭和歌謡
 成功の陰にはよく “人生を変えた出会い” というのがある。ちあきさんの場合、楽曲面では恵まれていたが、彼女が進むべき明確な方向性を示してくれる優秀なブレーンには恵まれず、1971年の彼女はヒット曲を出せずに暗中模索状態にあった。そんな時、コロムビアの中でも主にポップス系の作品を手掛けてきた東元晃氏が担当ディレクターに就任した。彼は弘田三枝子の「渚のうわさ」で当時まだ無名だった筒美京平氏を起用したことでもわかるように抜群の音楽的嗅覚を持った人である。彼はこの後、ビクター、テイチクとレコード会社を移っていくのだが、注目すべきはちあきさんが常にその後を追うように移籍し、彼がちあきさんを担当して傑作アルバムを作っているという厳然たる事実である。そんな彼が仕掛けたのが “ドラマティック歌謡” 路線だった。
 彼が担当になって最初に吉田旺&中村泰士コンビが用意した新曲が⑬「喝采」だったというのもジャストのタイミングだった。ドラマティックな歌詞と品格滴り落ちる曲想の相乗効果で聴く者の心を震わせる大名曲だが、このただでさえ凄い曲を更に凄いものへと昇華させてしまったのがちあきさんの圧倒的な歌唱力。この歌を聴いていると大げさではなく何かドラマを見ているような錯覚に陥ってしまう。この曲は彼女にとって久々の大ヒットになっただけでなく、並みいる強敵を押しのけてレコード大賞(←当時はめっちゃ権威ありました!)まで獲得してしまうのである。今では価値観の多様化が進み、老若男女が口ずさむ “国民的ヒット曲” などというものはなくなってしまったが、この曲は間違いなく1972年の邦楽を代表する1曲であり、あれから40年近く経った今でも40代以上の日本人ならたいてい口ずさめる “心に残る歌” となったのだ。
 ⑬に続く “私小説歌謡” 第2弾⑭「劇場」は⑬の超ロングヒットの陰に隠れるような形で大ヒットには至らず。私的には “旅は続くの~♪” の旋律部分にもう一工夫ほしい気もするが、 “サイン求める~♪” のくだりなんかはもうゾクゾクしてしまう。吉田&中村コンビの “ドラマティック歌謡3部作” の最後を飾る⑮「夜間飛行」は “動き始めた汽車にひとり飛び乗った” ⑬や “ドサ回りと人に呼ばれる旅” の⑭からスケールアップして “翼に身を委ね” る飛行機の旅だ。初めて聴いた時は間奏で挿入されるスッチー風のフランス語にビックリ... “マダム、ムッシュー、ボン・ボヤージュ、メルシー...” ぐらいしか聞き取れないが、何のこっちゃサッパリ分からないこのフランス語の語りがちあきさんの歌声と絶妙なコントラストを成していてインパクト抜群だ。 “帰らないの~♪” 2連発の余韻もたまらない。
 ⑯「あいつと私」は決して悪い曲ではないと思うが、それまでのドラマチックな3部作に比べると曲としての印象は薄く、チャートのトップ100にも入らなかったというからオドロキだ。⑰「円舞曲(わるつ)」は弘田三枝子の「人形の家」を作曲した川口真の起用が当たって10万枚を超えるスマッシュ・ヒット、やはりちあきさんには雄大な曲想のナンバーが良く似合う。ゆったりした3拍子に乗ったちあきさんの温もりに溢れる歌声に包まれる喜びを何と表現しよう!まさに “癒し系歌謡(?)” とでもいうべき寛ぎに溢れたこのナンバー、 “海鳴り 漁火 海辺のホテル~♪” のラインがたまらなく好きだ。
 その後のちあきさんは体調を崩して満足なプロモーションが出来ず、「喝采」を軽くしたような⑱「かなしみ模様」、「五番街のマリーへ」の二番煎じみたいな⑲「花吹雪」の2曲共にあまりヒットはしなかったが、何よりも痛手だったのは担当ディレクターだった東元晃氏がコロムビアを退社してしまったこと。更に悪いことに担当を引き継いだ人が演歌路線に方向転換、次のシングル⑳「恋慕夜曲」はまだ演歌とは呼べないものの、イントロからしてそれまでのちあきさんとは明らかに違う雰囲気にちょっと引いてしまう。そしてこの演歌路線こそが第2期低迷期の始まりだった。 (つづく)

夜間飛行 ~ ちあきなおみさん


円舞曲(ワルツ)/ちあきなおみ^^
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ちあきなおみ・これくしょん ~ねぇ あんた~ (Pt. 2)

2010-02-07 | 昭和歌謡
 ちあきさんは1969年に①「雨に濡れた慕情」でデビューした。すべてはここから始まったと思うと感無量だが、それにしてもこのちあきさんのヴォーカル...これがもうめちゃくちゃ上手いっ!!! 彼女はデビューした時点で既に完成された早熟の天才歌手だったということがわかる名唱だ。バックの演奏も細部まで考え抜かれたアレンジが素晴らしく、闊達に歌うベースのラインと絶妙なピアノのオブリガートが特に気に入っている。当時の歌謡曲の音楽性の高さを窺わせる1曲だ。続く②「朝がくるまえに」も①の路線を踏襲したバリバリの昭和歌謡で、哀愁舞い散るメロディー展開がたまらない。大人の色気をさりげなく匂わせるちあきさんの歌声に萌えてしまうし、ベースがブンブン唸る60年代GSの残り香漂うバックのサウンドにも涙ちょちょぎれる。ちあきさんのキャリアの中で絵に描いたような昭和歌謡と言えばこの初期の2曲に尽きるだろう。
 アパレルメーカーのキャンペーン・ソング③「モア・モア・ラヴ」は②の哀愁を控えめにして代わりに華やかさをプラスしたようなナンバーで、 “モアモア♪” というバック・コーラスが耳に残る。やはり “ひとり GS 路線” は変わっていない。③の2週間後(!)に発売された④「四つのお願い」はちあきさんが本格的にブレイクするきっかけになった記念碑的な曲で、 “ひとつ... ふたつ...♪” という数え唄スタイルが大衆にウケたのだという。それまでとは打って変わったコミカルお色気路線の始まりだ。続く⑤「X+Y=LOVE」でも “X、それは...、Y、それは...♪” と制作サイドが④の二匹目のドジョウを狙ったのはミエミエだが、曲の面白さとちあきさんの歌唱力のおかげもあって連続ヒットする。
 しかしコミカルなイメージが定着するのを嫌ったのか、ここで路線変更が行われる。続く⑥「別れたあとで」はムード歌謡の白眉というべき3拍子のナンバーで、大人の雰囲気をムンムンさせたちあきさんの細やかな感情表現が絶品だ。私はこの⑥が大好きなのだが、世間は④⑤みたいな曲を期待していたらしく売り上げが伸び悩んだせいで、⑦「無駄な抵抗やめましょう」では再びコミカル路線に軌道修正。結局、猫の目のようにコロコロ変わる路線変更が凶と出て、彼女は暗中模索の時代に突入する。要するに器用貧乏というか、歌が上手すぎてどんなタイプの楽曲でも簡単に歌いこなしてしまうという、何ともまぁ贅沢な悩みなのだが、私が思うにコロムビア時代のちあきさんというのは彼女の立ち位置をしっかり決めずに路線変更を繰り返した製作サイドの迷走ぶりに振り回されているような、そんな感じがする。まぁ今となってはそのおかげで我々ファンは色々なタイプの曲を歌うちあきさんを楽しめるのだが...
 デビュー曲以来ず~っとコンスタントに15万枚以上を売り上げていたちあきさんだが、⑦で初めて10万枚を割り、ヒット歌手としては「喝采」で奇跡的なカムバックを果たすまで第1期低迷期に突入してしまう。しかしこの時期の楽曲の出来は決して悪くない。私的にはむしろ大好きな作品が多い。⑧「私という女」はデビュー以来作曲を担当してきた鈴木淳氏最後の作品で、マイナー調の旋律が心の琴線をビンビン刺激する。この曲の良さは日本人にしかワカランやろなぁ...と思えるようなバリバリ昭和歌謡路線復活が嬉しい。⑨「しのび逢う恋」はハマクラこと浜口庫之助作曲の、一聴地味ながらそこかしこに様々なエッセンスが盛り込まれたナンバーだったが大衆には受け入れられず、売り上げはついに3万枚にまで落ち込んでしまう。今の耳で聴くと器楽アレンジetc 当時の日本の歌謡曲のレベルの高さがわかる音作りだと思う。
 ⑩「今日で終って」は⑥の発展形のような曲想の3拍子のナンバーで、人の心のヒダまで描写するかのようなちあきさんの微妙な感情表現に息をのむ。特に “しないでね~♪” 3連発がたまらない(≧▽≦) ⑪「恋した女」では美空ひばりを彷彿とさせるべらんめえ調で歌うちあきさんがめちゃくちゃカッコイイ!この⑩⑪は阿久悠&彩木雅夫コンビの作品で、ヒットこそしなかったが、まさに “大人のための歌謡曲” という感じで私の感性のスウィート・スポットを直撃する。⑫「禁じられた恋の島」はこの後彼女に大いなる栄光をもたらすことになる吉田旺&中村泰士コンビと組んだ初作で、売り上げは芳しくなかったが、その反省を踏まえ捲土重来を期して作られたのが日本歌謡史上に燦然と輝く起死回生の一発⑬「喝采」だった。 (つづく)

↓デビュー・アルバムより... 彼女の語りも楽しめます(^.^)
雨に濡れた慕情~朝がくるまえに    ちあきなおみ


別れたあとで
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ちあきなおみ・これくしょん ~ねぇ あんた~ (Pt. 1)

2010-02-06 | 昭和歌謡
 CD BOX を買うのには勇気がいる。BOX というと普通は5~6枚組、ヘタをすると10枚組なんてのもあって、すぐに諭吉さんが飛んで行ってしまうからだ。だから昔は BOX 購入なんて論外だったが、数年前に意を決してザ・ピーナッツの「ドリーム CD BOX」を買ってからというもの、まるで封印が解けたかのように昭和歌謡歌手の BOX SET を購入するようになった。この頃の歌手の音源はどれもこれも判で押したようにそっくりな選曲で「○○全曲集」とか「△△スーパーベスト」という風にタイトルとジャケットを変えて再発を繰り返すだけで、ファンが本当に聴きたいオリジナル・アルバム収録曲とか、シングルのB面曲はいつまでたっても未CD化のままという状況がほとんどだ。そんな飢餓状態のファンの足元を見るかのように “ついに○○が初CD化!” というキャッチ・コピーと共に登場する BOX SET の誘惑と戦うハメになる。私の場合、その誘惑に抗しきれずに買ってしまうケースが多い。
 ということで、ついにちあきさんの6枚組CD BOX「ちあきなおみ・これくしょん ~ねぇ あんた~」を買ってしまった。もうすでに CD を何枚も持っているのでかなりダブリがあり、ビッドするかどうか少し迷ったが、結果的に買って正解だった。これはもうファン必携の “一生モノ” である。まずは何と言っても付属の超豪華ブックレットが凄い。私のような後追いファンにとっては目からウロコな当時のエピソードが満載で、読み物としてもめっちゃ面白い。通り一遍の曲目解説とは激しく一線を画す充実した内容だ。しかも非常に貴重な彼女の全シングル、アルバムのアナログ盤ジャケット写真がカラーで載せられており(シングル盤「四つのお願い」のジャケ写でB面「恋のめくら」のタイトル部分にボカシを入れてあるのには呆れた...)、完全ディスコグラフィーも含めて資料的価値は非常に高い。このブックレットだけでもファンにとっては涙モノだし、ちあきさんの歌声に心を震わされた人はいきなりド~ンとこの BOX SET から入門するのも一つの手かもしれない。因みに定価13,650円のところを私はヤフオクで7,000円、中古市場での相場が大体9,000円前後なので、美品でこの値段なら大満足だ。薄型プラスチック・ケースの中央フックがエエ加減な作りでCDがすぐに外れてしまう(←コロムビアの他の “これくしょん” シリーズも同様の欠陥品プラケです!)という点を除いては...(>_<)
 この6枚組、Disc-1と2が“シングルズ”ということでコロムビア、ビクター時代の全シングルのA面30曲に加えてB面6曲、未発表曲4曲を加えた計40曲が収められている。シングル曲を集めた2枚組ベスト盤「しんぐるこれくしょん」と28曲ダブるが、B面曲はダブらないようにちゃんと配慮されているし、何よりもこの BOX の目玉の一つである「喝采」の激レア英語ヴァージョンはここでしか聴くことのできない貴重なモノだ。
 Disc-3と4は “ライヴ トラックス” というサブタイトルで、最近CD化されたばかりの1974年中野サンプラザでのライヴ「ちあきなおみ リサイタル」全25曲を完全収録(←これだけで3,500円!)し、更に71年の日劇ライヴ「オン・ステージ」から6曲と73年の渋谷公会堂ライヴ「ON STAGE」から3曲を抜粋収録。特にヒット曲群はシングル・ヴァージョンを凌駕するような表現力に圧倒される。尚、船村徹作曲生活25周年記念リサイタル「ふりむけば二昔半」からの4曲はド演歌でした(>_<)
 Disc-5は “ニューミュージック・ポップスをうたう” 、 Disc-6は “名曲をうたう” ということで、それぞれ20曲ずつ選ばれているが、カヴァー曲は傑作が目白押しなので、とても2枚40曲では足りない。まぁこのDisc-5・6に関しては自家製コンピ2枚があればそれでいい。KG ちゃんも大絶賛の選曲・配置で自分ではアレが最強だと思っている(笑)
 ということで今日は6枚組 BOX の概要に触れたので、明日はちあきさんの歴史をなぞりながら個々の楽曲について書いていきたい。 (つづく)

↓1972年レコード大賞を受賞時の感動的な歌唱。感極まって2番の歌詞を間違えるところもかえって印象的です。
喝采


Chiaki Naomi - Yottsuno Onegai 四つのお願い
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星影の小径 / ちあきなおみ

2010-02-05 | 昭和歌謡
 2010年のマイブーム第1号はちあきなおみさんである。その勢いは2月に入っても止まらない。私にちあきさんを教えてくれた恩人の KG ちゃんにお礼として自家製コンピ CD-R 「昭和歌謡を唄う」、「名曲を唄う」の2枚を進呈したらめちゃくちゃ感激されてしまった。その翌日、満面の笑みを浮かべて “コレ聴きながら寝たら最高やわ!” というので早速自分でも試してみるとこれがもうタマラン心地良さ(^.^) ちあきさんの歌声は入眠剤としても効果テキメンだ。眠れない夜はぜひお試しあれ。
 更に KG ちゃんが言うには “ツタヤで買った iPodのパチモン(笑)用に買い替えたヘッドフォンで聴いたらめっちゃエエ音入っててん!もうパラダイスやわ。 shiotchも試してみ(^o^)丿” とのこと。恥ずかしながら私が使っていたのは10年以上前のウォークマンに付いていたスカみたいなオープンイヤー型イヤフォンだったので、パソコンで音楽を聴く機会が増えた私はアマゾンでちゃんとしたインナーイヤー型ヘッドホンを買って聴いてみた。おぉ、確かに全然違うわ(≧▽≦) 密閉型みたいなモンやから外部の音をほぼ完全にシャットアウトしで細かい音までしっかり聞こえるし、低音の量感も段違い。コレはホンマにエエ買い物をした。もう KG ちゃんには足を向けて寝れまへん。
 ということで今日はコロムビアか、ビクターか、はたまたテイチクか、どのちあきさんを聴いて寝ようかなぁと贅沢に悩む日々なのだが、十数枚買った彼女の CDの中で1枚だけ愛憎相半ばするというか、作品ごとの出来不出来の落差が激しすぎてアルバム単体としては聴く気になれない摩訶不思議な盤があった。それがこの「星影の小径」である。
 いきなりとんでもない紹介の仕方になってしまったが、選曲は戦前戦後の流行歌でどれも名曲ばかりで文句ナシだし、ちあきさんの歌唱が悪いワケがない。むしろ絶好調と言っていいかもしれないぐらいだ。しかも絶世の名唱「星影の小径」まで入っている。一体何が不満やねん、と言われそうだが、問題なのはすべてを台無しにしてしまう奇妙奇天烈なアレンジだ。特にムーンライダーズの武川某による③「港が見える丘」はアヴァンギャルドを通り越してキモイとしか言いようのないヒドイもの。私はこれまで様々なジャンルの数えきれないくらいの楽曲を聴いてきたが、吐き気を覚えるぐらい気色悪い思いをしたのは音楽仲間の先輩から無理やり聴かされたフリー・ジャズとコレぐらいのものだ。特に左チャンネルから聞こえ続ける “アウ~” という(恐らくアレンジャーの)キモイ声には虫唾が走る。こんなん聴いてたらブツブツ出るわ(>_<) ⑥「ハワイの夜」もこのオッサンの“ハァ~”という気持ち悪い溜め息やガチャガチャとうるさい楽器群がウザイことこの上ない(>_<) とにかくこのアホバカ・アレンジは万死に値するぐらいヒドイもので、ちあきさんの歌声が拷問に耐えているように響く。
 ③以外にも、このアルバムには奇天烈アレンジの曲が目立つ。例えば②「雨に咲く花」なんかも相当酷い。③が “アウ~” なら②は水滴が落ちる “ポヨン♪” という音が始めから終わりまで鳴り続けてちあきさんの歌声の邪魔をする。ナメてんのか!こっちは倉田某という別のアレンジャーなのだが、要するに自己満足のの押し付けであり、リスナーのことなど全く眼中にないようだ。こんな無能なアレンジャーを起用してプロデューサーは一体何がしたかったのだろう?名曲を破壊してまわってそんなに楽しいのだろうか?
 あんまりネガティヴなことばかり書いていると私の品性が疑われる(←もう遅いって...)ので、好きなトラックのことを書こう。全9曲中心底エエなぁ...と思えるのは①と④。どちらも出しゃばらない素直なアレンジだ。ちあきさんの歌唱が素晴らしいだけに、全曲こんな誠実な姿勢でアレンジされていたら大傑作に仕上がっただろうと思うと返す返すも残念でならない。特にアルバム・タイトル曲(←元々は③がタイトルだったがCM人気に便乗して①に変更され、最近また③に戻された...)の①「星影の小径」の多重コーラスの素晴らしさは鳥肌モノ。コレに関しては前にも書いたが、何度書いても書き足りないぐらい圧倒的に、超越的に、芸術的に素晴らしい、日本音楽史上屈指の名曲名唱だ!!! ④「上海帰りのリル」もめっちゃエエ感じ(^o^)丿 元々曲が良いのでアレンジさえ控え目ならばこの曲のように放っておいても名演が生まれるのだ。それにしてもちあきさんの表現力は凄まじい。もはや歌が上手いとか、そういうレベルではない。まさに心を震わす歌声だ。自分の中ではあの美空ひばりすら超えた孤高の存在になっている。
 岡晴夫が昭和21年にヒットさせた⑤「青春のパラダイス」の過激なカヴァーは賛否両論が分かれるところだろう。強烈なデジタル・ビートがビシバシ飛び交うこのサウンド、どっかで聞いたことあるなぁ...と思ったらジャム&ルイスがジャネット・ジャクソンの「コントロール」でやってた音作りだった(笑) 最初は “何じゃいコレは?” と思ったが、慣れてくるとコレが結構面白い。今では①④に次ぐお気に入りのトラックなのだが、穏健派のリスナーにはちょっとキツイかもしれない。
 ということで天使と悪魔が同居しているようなこのアルバム、興味のある方はまずネットで試聴してみるのがいいと思う。「星影...」と「上海...」は他のアルバム(Re-Master Voiceがオススメ!)にも入っているので、ちあきさんのコンプリート・コレクションを目指しているのでなければレンタルで十分だ。全曲「星影...」のイメージで購入すると、ひょっとすると盤をブチ割りたくなるかもしれない。

上海帰りのリル/ちあきなおみ


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Stan Getz In Stockholm

2010-02-04 | Jazz
 私は1920年代から40年代半ば頃までに作られたアメリカのポピュラー音楽、いわゆるスタンダード・ナンバーが大好きで、そんな中でもどちらかというと声を張り上げて歌うようなスケールの大きな歌よりも、小粋に洒落っぽく鼻歌で歌えるような唄、いわゆる “小唄” に目がない。 “クールに、軽やかに、粋にスイング” が私の信条なので、歌心溢れるミュージシャンによって見事にジャズに昇華された小唄の数々を聴くと、一過性音楽を持続性音楽に変えてしまうジャズという音楽の懐の深さに感動してしまう。そんな “粋なジャズ” の第一人者がテナーのスタン・ゲッツである。
 ゲッツと言うとまず名が挙がるのが「ディア・オールド・ストックホルム」の名演で知られる「ザ・サウンド」やボサノヴァで大ヒットした「ゲッツ~ジルベルト」、「オ・グランジ・アモール」の一点買いで「スウィート・レイン」、そして万人が認めるゲッツの最高傑作「スタン・ゲッツ・プレイズ」あたりだろうが、私が一押しの隠れ名盤は “飛行機のゲッツ” の愛称で知られるこの「スタン・ゲッツ・イン・ストックホルム」である。
 全8曲、すべてB級スタンダード・ナンバーでオリジナルは一切なし。エエわぁ、この割り切り方。しかもシナトラのレパートリーになっているような唄モノ系が多い。スタン・ゲッツという人の真骨頂は誰もが知っている親しみやすいメロディーを分かりやすく一級のジャズに仕立て上げるところにある。私は基本的にはロック/ポップスを聴いて育った人間なので、美しいメロディーを気持ちよくスイングさせたジャズが好きなのだ。例えば①「インディアナ」や④「アイ・キャント・ビリーヴ・ザット・ユーアー・イン・ラヴ・ウィズ・ミー」といったアップ・テンポの演奏なんかもう聴いているだけでウキウキワクワクしてしまう。そのスムーズなキー・ワークによる軽やかなプレイはこれらの曲が持つ “粋” を見事に表現しているし、変幻自在というか、縦横無尽というか、まるで口笛でも吹いているかのようなその淀みのないインプロヴィゼイションのアメアラレ攻撃は圧巻だ。
 ゲッツをこのように気持ちよく歌わせたのは選曲の良さもさることながら、北欧産リズム・セクションの充実ぶりも大きな要因だろう。ピアノのベンクト・ハルベルクが絶妙なバッキングでゲッツを盛りたて、ベースのグナー・ヨンソンがしっかりと音楽の根底を支え、ドラムスのアンドリュー・バーマンの正確無比なブラッシュ・ワークが演奏全体に抜群のスイング感を与えている。特にハルベルクの小気味良いプレイは名手テディー・ウィルソンを彷彿とさせる素晴らしさで、これで気分屋ゲッツが乗らないワケがない。ワン・ホーン・アルバムの成否はリズム・セクションで決まるという絶好の見本と言っていいだろう。
 スローな②「ウィズアウト・ア・ソング」、③「ゴースト・オブ・ア・チャンス」、⑤「エヴリシング・ハプンズ・トゥ・ミー」、⑥「オーヴァー・ザ・レインボウ」では歌詞の内容を熟知しているかのようにテナーで “歌って” いるし、ミディアムでスイングするシナトラ・ナンバー⑦「ゲット・ハッピー」や⑧「ジーパーズ・クリーパーズ」での流麗なソロを聴いているとレスター・ヤングの音をモダン・ジャズのリズムに乗せて一筆書きのようにスムーズにインプロヴァイズしていくというゲッツ芸術の頂点を見る思いがする。特に⑧のリラクセイション溢れる絶妙なスイング感にはもう参りましたという他ない。このアルバムは歌心一発で聴き手をノックアウトしてしまうジャズ・テナーのワザ師ゲッツが放った会心の1枚なのだ。

インディアナ

ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー / ブレンダ・リー

2010-02-03 | Cover Songs
 今から数年前のことだったと思うが、いつものように G3 の3人であーでもない、こーでもないと言いながらみんなで持ち寄ったジャズのレコードを聴いていた時のこと、アート・テイタムのソロ・ピアノ LP がかかったのだが、その時 901さんが “何でジャズ・ピアノの神様みたいなコワモテのテイタムが日本の歌謡曲「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」やってんねん?” と不思議そうにおっしゃった。しかしその時かかっていたのはハリー・ウォーレンが作曲したスタンダード・ナンバー「ブールヴァード・オブ・ブロークン・ドリームス」(邦題:夢破れし並木道)だった。因みに “ブールヴァード” は boulevard と綴り、並木道や大通りのことを言う。ハリウッドの Sunset Boulevard が有名だが、私は高校生の時ジャクソン・ブラウンの新曲「ブールヴァード」をポールの「ブルー・バード」のカヴァーだと勘違いしたお利口さんだ(笑)
 話を元に戻して、数年前といえば私がまだ昭和歌謡にハマる前だったこともあって、「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」という曲を知らなかったが、ジャズのスタンダード・ナンバーには詳しかった。 “どこをどう聴いても「ブールヴァード...」ですやん” と私。するとそれまで黙って聞いておられた plinco さんが “コレって確か著作権侵害の裁判か何かでモメたんとちゃうかったっけ?” とおっしゃった。興味を引かれた私は早速その場でネット検索、すると出るわ出るわ... 世間では「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件」というらしい。あの昭和歌謡史上屈指の名曲「赤坂の夜は更けて」の作者でもある鈴木道明という人が1963年に作った「ワン・レイニー・ナイト...」が、1933年ハリー・ウォーレン作の「ブールヴァード...」にそっくりだったため、コレは盗作ではないかと10年以上にわたって裁判で争われ、最終的には最高裁判断で “既存の著作物と同一性のある作品が作成されても、それが既存の著作物に依拠して再製されたものでない時、すなわち既存の著作物を知らずに独自に創作された場合は著作権の侵害とはならない” という “シロ判定” が出たとのこと。そこで次の回の時に plinco さん所有のブレンダ・リー版「ワン・レイニー・ナイト...」と私の手持ちの「ブールヴァード...」を聴き比べて3人で検証してみた。
 そのブレンダ・リーのシングルは片面に「ワン・レイニー・ナイト...」の英語ヴァージョン、もう片面には日本語ヴァージョンという、いかにも60年代らしい構成の盤で、特に日本語の方はこれがあの “ミス・ダイナマイト” か、と思うぐらい日本人女性化したブレンダ・リーが楽しめて面白い。比較対象となる原告側(?)の「ブールヴァード...」にはテナーのコールマン・ホーキンスがキャピトルからリリースしたウィズ・ストリングスの名盤「ギルディッド・ホーク」収録のヴァージョンをチョイス。実際にその2曲を聴き比べてみると、その哀愁漂う旋律も、必殺のテンポも、曲が醸し出す雰囲気もほぼ瓜二つと言ってよく、3人とも “そっくりやん、ホーキンスをバックにワン・レイニー歌えるで(笑)... いくら何でもコレはアウトやろ(>_<)” ということになった。ただ、この鈴木道明という人は著名な作曲家であり、わざわざバレる危険を冒してまで(←なんせ相手はスタンダード・ナンバーやからね...)自らのヒット曲を一つ増やそうとしたとは考えにくい。多分無意識のうちにサビのメロディーを引用してしまったのだろう。その辺はジョージの「マイ・スウィート・ロード」のケースも似たようなモンだろうが、そっくりなフレーズを取り上げてすぐに盗作だ、パクリだと目くじら立てて騒ぐのはいただけない。似たような曲が2つあってその両方が傑作ならば、リスナーとしては2倍楽しめてラッキーではないか!自分としてはこれからも “おっ、このフレーズ、○○にそっくりやん、オモロイなぁ...(^.^)” みたいなノリで音楽を楽しんでいきたい。
 私がこの盤を入手したのはつい最近で、先月の G3 で “お天気曲(?)特集” をやった時に plinco さんが再度この盤を持参され、 “懐かしいなぁ... みんなで裁判ごっこしたっけ(^.^)” と盛り上がり、結局その日の真夜中にネットで探し回って大阪の Disc JJ の通販で発見、1,000円ポッキリだった。このジャケットの日本語ヴァージョン入りは結構レアで、ヤフオクにも出てなかったのでめっちゃ嬉しかった。

ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー


ブールヴァード・オブ・ブロークン・ドリームス
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If I Were A Carpenter / Various Artists

2010-02-02 | Cover Songs
 昨日に続いて今日もカーペンターズのカヴァーでいきたい。この「イフ・アイ・ワー・ア・カーペンター」はカーペンターズのデビュー25周年を記念して1994年にリリースされたオムニバス形式のトリビュート・アルバムで、CD のキャッチ・コピーによると “新世代ロックを代表するユニークなアーティスト達” が参加しているとのこと。どうりでシェリル・クロウ以外は知らん名前ばかりだ。90年代に入ってからブレイクしたバンドが多いのだろう。私はグランジ/オルタナ系ロックは生理的に受け付けないのだが、案の定このアルバムも何曲かは暗すぎて全く聴く気になれず、いつもCDプレイヤーのスキップボタンで飛ばしてしまう(← LP じゃなくてよかった...)。特にアメリカン・ミュージック・クラブの①、ソニック・ユースの③、クラッカーの⑪、この3曲は歌も演奏も陰々滅滅としていて聴くに堪えない。せっかくのカーペンターズ・ナンバーが台なしだ。男性ヴォーカル陣で気に入ったのはディッシュワラの⑥「イッツ・ゴナ・テイク・サム・タイム」とレッド・クロスの⑨「イエスタデイ・ワンス・モア」。どちらもギターが唸りを上げるパワー・ポップ全開のサウンドが実にスリリングで、エンディングに向けての盛り上がり方はハンパではない。彼らだけでフル・アルバムをお願いしたいぐらいだ。
 この2組を例外とすれば、やはりカーペンターズのカヴァーは女性ヴォーカルに限る。私がこのアルバムで一番好きなトラックは少年ナイフの②「トップ・オブ・ザ・ワールド」なのだが、恥ずかしながらこのアルバムを聴くまではそのバンド名すら知らなかった。 “少年” というぐらいだから若い男の子のバンドかと思っていたら出てきた音は元気溌剌としたガールズ・ガレージ・ロックで、その竹を割ったようなストレートアヘッドなロックンロールはまさに “女性版ラモーンズ” 。 私、こーゆぅサウンド大好きですねん(^o^)丿 ヴォーカルは怖いモンなしの日本語英語で突っ走るし、ギターもドラムもガレージ・ロックのノリ一発みたいな感じで疾走しているが、何よりも素晴らしいのは彼女らが音楽を心底楽しんでいるのがビンビン伝わってくること。ヘタウマとでも言えばいいのか、彼女たちの歌や演奏にはテクニックを超えた何か、聴く者の心を魅きつける衝動がある。そしてこの衝動こそがロックの原点ではなかったか?その辺が彼女らが世界中で愛される所以だろう。 “海外で最も著名な日本人バンド” の称号は伊達じゃない。特にこのアルバムでは陰気な①と③に挟まれる形で収録されているので私なんかまさに地獄で仏といった感じでめちゃくちゃ気に入ってしまった。尚、この曲は何年か前にチューハイのCMソングとしてお茶の間にも流れていたのでご存じの方もおられるかもしれない。
 少年ナイフ以外では、以前 “遥かなる影” 大会で紹介したアイルランドのバンド、クランベリーズの④「クロース・トゥ・ユー」の素朴な味わいが清々しくて好感度大だし、オランダの4人組ベティー・サーヴァートの⑤「フォー・オール・ウィー・ノウ」も気だるいヴォーカルとラウドなギターのコントラストが面白い。まだブレイクする前のシェリル・クロウの⑦「ソリテアー」なんか実に貴重なトラックだと思うが、失速寸前の超スロー・テンポで歌いながらも高い緊張感を維持している。コレは凄い。ジョネット・ナポリターノ&マーク・モアランドの⑧「ハーティング・イーチ・アザー」は②と並ぶ私の超愛聴トラックで、必殺のテンポ設定といい、危険な薫りを振り撒きながら不思議な吸引力で聴き手を惹きつけるヴォーカルといい、私の嗜好にピッタリだ。ノイジーなギターが炸裂する中を彷徨うダルなツイン・ヴォーカルがたまらないベイブズ・イン・トイランドの⑩「コーリング・オキュパンツ」や80'sポップ・メタルなサウンドに度肝を抜かれる(←正統派カーペンターズ・ファンは怒り出すかもしれないが...)4ノン・ブロンズの⑬「ブレス・ザ・ビースツ・アンド・チルドレン」も私は好きだ。何か「アバメタル」を思い出すなぁ...笑
 ということでアーティストによって好き嫌いが分かれてしまったこのアルバムだが、カーペンターズが好きなら一聴の価値は十分にあると思う。私は気に入ったトラックだけを取り出し、マリカ姐さんやマルセラ嬢といった他の秀逸カーペンターズ・カヴァーと一緒にして自家製コンピレーション CD-R を作って楽しんでいる。一味違うカーペンターズっていうのもたまにはエエもんですぜ(^.^)

Shonen Knife Top of the World MJ090116


【おまけ】そのまんまです(笑)↓
御堂筋線のチャイムは少年ナイフ

Sing Once More ~ Dear Carpenters ~ / 平賀マリカ

2010-02-01 | Cover Songs
 私が昨年その存在を知って大ファンになり、これからず~っと応援していこうと決めたジャズ・ヴォーカリストが2人いる。以前ご紹介した森川七月嬢とこの平賀マリカ姐さんである。あれは多分8月頃だったと思うが、何かの曲(多分「ユード・ビー・ソー・ナイス」やったと思う...)を検索していてたまたまこの曲が入った彼女のアルバム「モア・ロマンス」を見つけ、麗しのジャケットに魅かれて試聴したのがすべての始まりだった。そう、何百枚も検索している最中にそこで目を止め興味を持って左クリックする原動力になるのは私の場合まずジャケットなんである。そして次は選曲... これで大体そのアーティストの嗜好が分かる。当然好きな曲を多く取り上げてくれていると思いっきり親近感が湧いてくる。で、最後に試聴して結論を出すのだが、彼女の場合、 “ジャケット良し、選曲良し、歌声良し” で文句なしに合格だった。
 早速彼女のオフィシャル・サイトにアクセスしてディスコグラフィーをチェック、他の盤の選曲もコワイぐらいに私の好きなスタンダード・ナンバーで埋まっている。試聴してみるとどれもこれも「モア・ロマンス」に勝るとも劣らないストレートアヘッドでスインギーな内容だ。こんな正統派ジャズ・ヴォーカルを聴くのは何年ぶりだろう?しかも私好みの美人とくればこれはもう徹底的にイクしかない。コーフンした私はアマゾンで「モア・ロマンス」を始め、他のアルバムも根こそぎゲットして聴きまくり、彼女の大ファンになった。
 そして年も押し詰まった11月、そんな彼女がニュー・アルバムをリリースした。タイトルは「シング・ワンス・モア」、何とカーペンターズのカヴァー集である。カーペンターズをカヴァーするということはつまりあのカレン・カーペンターと同じ俎上に乗るという事を意味する。これは例えるならマイケル・ジャクソンとダンス・バトルで、アイルトン・セナとモナコGPで勝負するようなものだ。ただ歌ってみましたでは悲惨な結果は目に見えている。私は期待半分、不安半分でCDプレイヤーのスタートボタンを押した。
 一通り聴いてみて感じたのは、オリジナルのイメージに近い形でマリカ姐さんのヴォーカルをストレートに聴かせようというトラックと、アレンジを工夫して姐さん独自のカラーで曲を表現しようというトラックに色分けできるということ。前者にあたるのが①「フォー・オール・ウィー・ノウ」、③「アイ・ニード・トゥ・ビー・イン・ラヴ」、⑦「ウィーヴ・オンリー・ジャスト・ビガン」、⑨「イエスタデイ・ワンス・モア」、⑩「スーパースター」、⑫「レイニー・デイズ・アンド・マンデイズ」といったスロー・バラッド群で、マリカ姐さんの温かくて力強い歌声が楽しめる。もちろんカレンのような桁外れの吸引力はないけれど、どのトラックを聴いても姐さんの “カーペンターズが大好きなんですぅ、私...(^.^)” という想いがダイレクトに伝わってきて、どんどん彼女の世界に引き込まれていく。特に⑨と⑩の2曲はどちらもかなり歌い込んだ曲なのだろう、カレンの代名詞とも言えるこれらの曲を自家薬籠中のものとし、自在に崩しを交えながらノビノビと歌っているところに好感が持てる。ラストの⑫も彼女の温かいヴォーカルを活かした素直なアレンジが◎。アルバムの締めくくりにピッタリのしっとりした歌声が癒し効果抜群だ。ただし⑦はバックのストリングスがうるさすぎてヴォーカルを邪魔しているように聞こえる。姐さんが好調なだけに勿体ないなぁ...(>_<)
 一方、ユニークなアレンジで変化をつけたトラックでは決してエキセントリックにならず、ジャズ・ファンにもポップス・ファンにもアピールするような解釈がなされている。ここがこのアルバムが成功した一番のポイントだろう。②「トップ・オブ・ザ・ワールド」は初期のポリスをユルくしたようなレゲエ・ビートを基調にスティーヴィー・ワンダーみたいなハーモニカが飛来し、フォーユーブルーなドブロ・ギターが轟きわたる。コレはめっちゃ面白い。④「ジャンバラヤ」もアレンジャーにとって遊び甲斐があったのだろう、大胆なラテン・アレンジでマリカ姐さんも活き活きと歌っている。間奏のフルート・ソロもエエ感じだ(^.^) ⑤「クロース・トゥ・ユー」では所々にフェイクを交えながらジャジーなフィーリング全開で歌うマリカ姐さんがカッコイイ。間奏のサックスも雰囲気抜群だ。
 ⑥「シング」はこのアルバム中私が最も気に入ったトラックで、ここにきてついに “カーペンターズをバリバリにスイングさせたっ!!!” と絶賛したい(^o^)丿 特に清涼感溢れるヴァイブの音色が効いているし、コンボが一体となって気持ち良さそうにスイングしている。ジャズ・シンガー、マリカここにあり!と言いたくなるような粋なヴォーカルだ。⑧「ティケット・トゥ・ライド」はもはやカーペンターズ流スロー・バラッドの原形を留めておらずミディアム・テンポで歌われているが、これはもうビートルズのアレンジに近い。まるでシェリル・クロウみたいなアコギ・サウンドに乗って歌う姐さんはジャズ・シンガーというよりもウエスト・コーストの女性ロッカーといった感じだ。カーペンターズ・カヴァーとは言えないかもしれないけれど、これはこれでカッコエエです!⑪「グッバイ・トゥ・ラヴ」ではスティーヴィーなハーモニカが再登場、姐さんのヴォーカルもグルーヴィーで、バラッドが続く後半部のアクセントになっている。
 ジャズ・シンガー平賀マリカのアルバムということで “カーペンターズのジャズ・ヴァージョン” を期待すると肩透かしを食うが、センスの良いコンテンポラリー女性ヴォーカルで懐かしいカーペンターズの楽曲群を聴いてみたいという方にはこれ以上のアルバムはないだろう。美麗ジャケットも含めて粋なヴォーカル・ファンに大推薦の1枚だ。

シング