shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Sing Once More ~ Dear Carpenters ~ / 平賀マリカ

2010-02-01 | Cover Songs
 私が昨年その存在を知って大ファンになり、これからず~っと応援していこうと決めたジャズ・ヴォーカリストが2人いる。以前ご紹介した森川七月嬢とこの平賀マリカ姐さんである。あれは多分8月頃だったと思うが、何かの曲(多分「ユード・ビー・ソー・ナイス」やったと思う...)を検索していてたまたまこの曲が入った彼女のアルバム「モア・ロマンス」を見つけ、麗しのジャケットに魅かれて試聴したのがすべての始まりだった。そう、何百枚も検索している最中にそこで目を止め興味を持って左クリックする原動力になるのは私の場合まずジャケットなんである。そして次は選曲... これで大体そのアーティストの嗜好が分かる。当然好きな曲を多く取り上げてくれていると思いっきり親近感が湧いてくる。で、最後に試聴して結論を出すのだが、彼女の場合、 “ジャケット良し、選曲良し、歌声良し” で文句なしに合格だった。
 早速彼女のオフィシャル・サイトにアクセスしてディスコグラフィーをチェック、他の盤の選曲もコワイぐらいに私の好きなスタンダード・ナンバーで埋まっている。試聴してみるとどれもこれも「モア・ロマンス」に勝るとも劣らないストレートアヘッドでスインギーな内容だ。こんな正統派ジャズ・ヴォーカルを聴くのは何年ぶりだろう?しかも私好みの美人とくればこれはもう徹底的にイクしかない。コーフンした私はアマゾンで「モア・ロマンス」を始め、他のアルバムも根こそぎゲットして聴きまくり、彼女の大ファンになった。
 そして年も押し詰まった11月、そんな彼女がニュー・アルバムをリリースした。タイトルは「シング・ワンス・モア」、何とカーペンターズのカヴァー集である。カーペンターズをカヴァーするということはつまりあのカレン・カーペンターと同じ俎上に乗るという事を意味する。これは例えるならマイケル・ジャクソンとダンス・バトルで、アイルトン・セナとモナコGPで勝負するようなものだ。ただ歌ってみましたでは悲惨な結果は目に見えている。私は期待半分、不安半分でCDプレイヤーのスタートボタンを押した。
 一通り聴いてみて感じたのは、オリジナルのイメージに近い形でマリカ姐さんのヴォーカルをストレートに聴かせようというトラックと、アレンジを工夫して姐さん独自のカラーで曲を表現しようというトラックに色分けできるということ。前者にあたるのが①「フォー・オール・ウィー・ノウ」、③「アイ・ニード・トゥ・ビー・イン・ラヴ」、⑦「ウィーヴ・オンリー・ジャスト・ビガン」、⑨「イエスタデイ・ワンス・モア」、⑩「スーパースター」、⑫「レイニー・デイズ・アンド・マンデイズ」といったスロー・バラッド群で、マリカ姐さんの温かくて力強い歌声が楽しめる。もちろんカレンのような桁外れの吸引力はないけれど、どのトラックを聴いても姐さんの “カーペンターズが大好きなんですぅ、私...(^.^)” という想いがダイレクトに伝わってきて、どんどん彼女の世界に引き込まれていく。特に⑨と⑩の2曲はどちらもかなり歌い込んだ曲なのだろう、カレンの代名詞とも言えるこれらの曲を自家薬籠中のものとし、自在に崩しを交えながらノビノビと歌っているところに好感が持てる。ラストの⑫も彼女の温かいヴォーカルを活かした素直なアレンジが◎。アルバムの締めくくりにピッタリのしっとりした歌声が癒し効果抜群だ。ただし⑦はバックのストリングスがうるさすぎてヴォーカルを邪魔しているように聞こえる。姐さんが好調なだけに勿体ないなぁ...(>_<)
 一方、ユニークなアレンジで変化をつけたトラックでは決してエキセントリックにならず、ジャズ・ファンにもポップス・ファンにもアピールするような解釈がなされている。ここがこのアルバムが成功した一番のポイントだろう。②「トップ・オブ・ザ・ワールド」は初期のポリスをユルくしたようなレゲエ・ビートを基調にスティーヴィー・ワンダーみたいなハーモニカが飛来し、フォーユーブルーなドブロ・ギターが轟きわたる。コレはめっちゃ面白い。④「ジャンバラヤ」もアレンジャーにとって遊び甲斐があったのだろう、大胆なラテン・アレンジでマリカ姐さんも活き活きと歌っている。間奏のフルート・ソロもエエ感じだ(^.^) ⑤「クロース・トゥ・ユー」では所々にフェイクを交えながらジャジーなフィーリング全開で歌うマリカ姐さんがカッコイイ。間奏のサックスも雰囲気抜群だ。
 ⑥「シング」はこのアルバム中私が最も気に入ったトラックで、ここにきてついに “カーペンターズをバリバリにスイングさせたっ!!!” と絶賛したい(^o^)丿 特に清涼感溢れるヴァイブの音色が効いているし、コンボが一体となって気持ち良さそうにスイングしている。ジャズ・シンガー、マリカここにあり!と言いたくなるような粋なヴォーカルだ。⑧「ティケット・トゥ・ライド」はもはやカーペンターズ流スロー・バラッドの原形を留めておらずミディアム・テンポで歌われているが、これはもうビートルズのアレンジに近い。まるでシェリル・クロウみたいなアコギ・サウンドに乗って歌う姐さんはジャズ・シンガーというよりもウエスト・コーストの女性ロッカーといった感じだ。カーペンターズ・カヴァーとは言えないかもしれないけれど、これはこれでカッコエエです!⑪「グッバイ・トゥ・ラヴ」ではスティーヴィーなハーモニカが再登場、姐さんのヴォーカルもグルーヴィーで、バラッドが続く後半部のアクセントになっている。
 ジャズ・シンガー平賀マリカのアルバムということで “カーペンターズのジャズ・ヴァージョン” を期待すると肩透かしを食うが、センスの良いコンテンポラリー女性ヴォーカルで懐かしいカーペンターズの楽曲群を聴いてみたいという方にはこれ以上のアルバムはないだろう。美麗ジャケットも含めて粋なヴォーカル・ファンに大推薦の1枚だ。

シング

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