shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー / ブレンダ・リー

2010-02-03 | Cover Songs
 今から数年前のことだったと思うが、いつものように G3 の3人であーでもない、こーでもないと言いながらみんなで持ち寄ったジャズのレコードを聴いていた時のこと、アート・テイタムのソロ・ピアノ LP がかかったのだが、その時 901さんが “何でジャズ・ピアノの神様みたいなコワモテのテイタムが日本の歌謡曲「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」やってんねん?” と不思議そうにおっしゃった。しかしその時かかっていたのはハリー・ウォーレンが作曲したスタンダード・ナンバー「ブールヴァード・オブ・ブロークン・ドリームス」(邦題:夢破れし並木道)だった。因みに “ブールヴァード” は boulevard と綴り、並木道や大通りのことを言う。ハリウッドの Sunset Boulevard が有名だが、私は高校生の時ジャクソン・ブラウンの新曲「ブールヴァード」をポールの「ブルー・バード」のカヴァーだと勘違いしたお利口さんだ(笑)
 話を元に戻して、数年前といえば私がまだ昭和歌謡にハマる前だったこともあって、「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」という曲を知らなかったが、ジャズのスタンダード・ナンバーには詳しかった。 “どこをどう聴いても「ブールヴァード...」ですやん” と私。するとそれまで黙って聞いておられた plinco さんが “コレって確か著作権侵害の裁判か何かでモメたんとちゃうかったっけ?” とおっしゃった。興味を引かれた私は早速その場でネット検索、すると出るわ出るわ... 世間では「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件」というらしい。あの昭和歌謡史上屈指の名曲「赤坂の夜は更けて」の作者でもある鈴木道明という人が1963年に作った「ワン・レイニー・ナイト...」が、1933年ハリー・ウォーレン作の「ブールヴァード...」にそっくりだったため、コレは盗作ではないかと10年以上にわたって裁判で争われ、最終的には最高裁判断で “既存の著作物と同一性のある作品が作成されても、それが既存の著作物に依拠して再製されたものでない時、すなわち既存の著作物を知らずに独自に創作された場合は著作権の侵害とはならない” という “シロ判定” が出たとのこと。そこで次の回の時に plinco さん所有のブレンダ・リー版「ワン・レイニー・ナイト...」と私の手持ちの「ブールヴァード...」を聴き比べて3人で検証してみた。
 そのブレンダ・リーのシングルは片面に「ワン・レイニー・ナイト...」の英語ヴァージョン、もう片面には日本語ヴァージョンという、いかにも60年代らしい構成の盤で、特に日本語の方はこれがあの “ミス・ダイナマイト” か、と思うぐらい日本人女性化したブレンダ・リーが楽しめて面白い。比較対象となる原告側(?)の「ブールヴァード...」にはテナーのコールマン・ホーキンスがキャピトルからリリースしたウィズ・ストリングスの名盤「ギルディッド・ホーク」収録のヴァージョンをチョイス。実際にその2曲を聴き比べてみると、その哀愁漂う旋律も、必殺のテンポも、曲が醸し出す雰囲気もほぼ瓜二つと言ってよく、3人とも “そっくりやん、ホーキンスをバックにワン・レイニー歌えるで(笑)... いくら何でもコレはアウトやろ(>_<)” ということになった。ただ、この鈴木道明という人は著名な作曲家であり、わざわざバレる危険を冒してまで(←なんせ相手はスタンダード・ナンバーやからね...)自らのヒット曲を一つ増やそうとしたとは考えにくい。多分無意識のうちにサビのメロディーを引用してしまったのだろう。その辺はジョージの「マイ・スウィート・ロード」のケースも似たようなモンだろうが、そっくりなフレーズを取り上げてすぐに盗作だ、パクリだと目くじら立てて騒ぐのはいただけない。似たような曲が2つあってその両方が傑作ならば、リスナーとしては2倍楽しめてラッキーではないか!自分としてはこれからも “おっ、このフレーズ、○○にそっくりやん、オモロイなぁ...(^.^)” みたいなノリで音楽を楽しんでいきたい。
 私がこの盤を入手したのはつい最近で、先月の G3 で “お天気曲(?)特集” をやった時に plinco さんが再度この盤を持参され、 “懐かしいなぁ... みんなで裁判ごっこしたっけ(^.^)” と盛り上がり、結局その日の真夜中にネットで探し回って大阪の Disc JJ の通販で発見、1,000円ポッキリだった。このジャケットの日本語ヴァージョン入りは結構レアで、ヤフオクにも出てなかったのでめっちゃ嬉しかった。

ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー


ブールヴァード・オブ・ブロークン・ドリームス
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