shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ちあきなおみ・これくしょん ~ねぇ あんた~ (Pt. 2)

2010-02-07 | 昭和歌謡
 ちあきさんは1969年に①「雨に濡れた慕情」でデビューした。すべてはここから始まったと思うと感無量だが、それにしてもこのちあきさんのヴォーカル...これがもうめちゃくちゃ上手いっ!!! 彼女はデビューした時点で既に完成された早熟の天才歌手だったということがわかる名唱だ。バックの演奏も細部まで考え抜かれたアレンジが素晴らしく、闊達に歌うベースのラインと絶妙なピアノのオブリガートが特に気に入っている。当時の歌謡曲の音楽性の高さを窺わせる1曲だ。続く②「朝がくるまえに」も①の路線を踏襲したバリバリの昭和歌謡で、哀愁舞い散るメロディー展開がたまらない。大人の色気をさりげなく匂わせるちあきさんの歌声に萌えてしまうし、ベースがブンブン唸る60年代GSの残り香漂うバックのサウンドにも涙ちょちょぎれる。ちあきさんのキャリアの中で絵に描いたような昭和歌謡と言えばこの初期の2曲に尽きるだろう。
 アパレルメーカーのキャンペーン・ソング③「モア・モア・ラヴ」は②の哀愁を控えめにして代わりに華やかさをプラスしたようなナンバーで、 “モアモア♪” というバック・コーラスが耳に残る。やはり “ひとり GS 路線” は変わっていない。③の2週間後(!)に発売された④「四つのお願い」はちあきさんが本格的にブレイクするきっかけになった記念碑的な曲で、 “ひとつ... ふたつ...♪” という数え唄スタイルが大衆にウケたのだという。それまでとは打って変わったコミカルお色気路線の始まりだ。続く⑤「X+Y=LOVE」でも “X、それは...、Y、それは...♪” と制作サイドが④の二匹目のドジョウを狙ったのはミエミエだが、曲の面白さとちあきさんの歌唱力のおかげもあって連続ヒットする。
 しかしコミカルなイメージが定着するのを嫌ったのか、ここで路線変更が行われる。続く⑥「別れたあとで」はムード歌謡の白眉というべき3拍子のナンバーで、大人の雰囲気をムンムンさせたちあきさんの細やかな感情表現が絶品だ。私はこの⑥が大好きなのだが、世間は④⑤みたいな曲を期待していたらしく売り上げが伸び悩んだせいで、⑦「無駄な抵抗やめましょう」では再びコミカル路線に軌道修正。結局、猫の目のようにコロコロ変わる路線変更が凶と出て、彼女は暗中模索の時代に突入する。要するに器用貧乏というか、歌が上手すぎてどんなタイプの楽曲でも簡単に歌いこなしてしまうという、何ともまぁ贅沢な悩みなのだが、私が思うにコロムビア時代のちあきさんというのは彼女の立ち位置をしっかり決めずに路線変更を繰り返した製作サイドの迷走ぶりに振り回されているような、そんな感じがする。まぁ今となってはそのおかげで我々ファンは色々なタイプの曲を歌うちあきさんを楽しめるのだが...
 デビュー曲以来ず~っとコンスタントに15万枚以上を売り上げていたちあきさんだが、⑦で初めて10万枚を割り、ヒット歌手としては「喝采」で奇跡的なカムバックを果たすまで第1期低迷期に突入してしまう。しかしこの時期の楽曲の出来は決して悪くない。私的にはむしろ大好きな作品が多い。⑧「私という女」はデビュー以来作曲を担当してきた鈴木淳氏最後の作品で、マイナー調の旋律が心の琴線をビンビン刺激する。この曲の良さは日本人にしかワカランやろなぁ...と思えるようなバリバリ昭和歌謡路線復活が嬉しい。⑨「しのび逢う恋」はハマクラこと浜口庫之助作曲の、一聴地味ながらそこかしこに様々なエッセンスが盛り込まれたナンバーだったが大衆には受け入れられず、売り上げはついに3万枚にまで落ち込んでしまう。今の耳で聴くと器楽アレンジetc 当時の日本の歌謡曲のレベルの高さがわかる音作りだと思う。
 ⑩「今日で終って」は⑥の発展形のような曲想の3拍子のナンバーで、人の心のヒダまで描写するかのようなちあきさんの微妙な感情表現に息をのむ。特に “しないでね~♪” 3連発がたまらない(≧▽≦) ⑪「恋した女」では美空ひばりを彷彿とさせるべらんめえ調で歌うちあきさんがめちゃくちゃカッコイイ!この⑩⑪は阿久悠&彩木雅夫コンビの作品で、ヒットこそしなかったが、まさに “大人のための歌謡曲” という感じで私の感性のスウィート・スポットを直撃する。⑫「禁じられた恋の島」はこの後彼女に大いなる栄光をもたらすことになる吉田旺&中村泰士コンビと組んだ初作で、売り上げは芳しくなかったが、その反省を踏まえ捲土重来を期して作られたのが日本歌謡史上に燦然と輝く起死回生の一発⑬「喝采」だった。 (つづく)

↓デビュー・アルバムより... 彼女の語りも楽しめます(^.^)
雨に濡れた慕情~朝がくるまえに    ちあきなおみ


別れたあとで

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2 コメント

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Unknown (ナカタ)
2010-02-13 00:51:17
shiotch7さん

こんばんは。

今週初めから風邪をひき、ネットを閲覧していなかったのですが、今日ちあきさんの「しんぐるこれくしょん」を聴きながら(途中で「ルージュ」をリピートして)ブログ記事を書いていて、shiotch7さんのブログを覗いてみたら、なんと!奇遇にもshiotch7さんの「shiotch7の魂の鉄砲水、ちあきなおみ徹底レビュー」が繰り広げられているではありませんか!!!!

凄いですよshiotch7さん。

>要するに器用貧乏というか、歌が上手すぎてどんなタイプの楽曲でも簡単に歌いこなしてしまうという

まさに、そう。日本一。

>今の耳で聴くと器楽アレンジetc 当時の日本の歌謡曲のレベルの高さがわかる音作りだと思う

これが、初期のちあきさんを、もうワンレベル上げている要素ですよね。

とにかくshiotch7さんのブログに出会えたことに感謝します。
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こちらこそ... (shiotch7)
2010-02-13 18:13:37
ナカタさん、こんばんは♪
お風邪の方、どうやら復活されたみたいでよかったです。
病は気から、って言いますが、
ちあきさんの癒し効果抜群の歌声を聴けば
病気の治りも速いでしょ?(笑)

私の方こそ、こうやってちあきさん仲間(?)ができて嬉しいです。
そうそう、CDやLPでは飽き足らず、
ついにこんなモン↓まで買っちゃいました。
http://www.book-navi.com/book/syoseki/chiaki.html
この本の腰巻コピーがすべてを語っています;
俺たちには、まだまだ「ちあきなおみ」が足りない!...
至言ですね。
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