リンロン・ウイークの最終回は、この祭りを始めるきっかけになったジャズ・アルバム「ハミン・トゥ・マイセルフ」だ。90年代以降の彼女は自分のルーツ・ミュージックであるメキシコ音楽集をはじめ、フル・ラテン・アルバムや70's回帰カントリー・ロック盤、挙句の果てに子守唄アルバム(何とクイーンの「ウィー・ウィル・ロック・ユー」までもが換骨堕胎されてエンヤみたいなサウンドになってます...)まで作ってしまうという無軌道ぶり(笑)。もうやりたい放題という感じの姐さんだったが、2000年に出したクリスマス・アルバムを最後に30年近く在籍してきたエレクトラ/アサイラム・レーベルを離れ、移籍した先が何とヴァーヴ、ジャズの専門レーベルである。早速 “リンダ・ロンシュタット・ジャズ・プロジェクト” がスタートし、腕利きのジャズメンがバックを固めて制作されたのが、2004年にリリースされたこの「ハミン・トゥ・マイセルフ」なのだ。
リンロンとジャスと言うとすぐに思い浮かぶのが例のネルソン・リドル3部作だが、あの3枚が甘美なアレンジを施されたウィズ・ストリングス物だったのに対し、このアルバムは小編成のジャズ・コンボを従えた本格的なジャズ・アルバムだ。私もあの3枚は大好きだが、ウィズ・ストリングス物というのはたま~に聴くからエエのであって、四六時中あんなのばっかり聴いてたら頭がボケてしまう(笑) やっぱりジャズはスイングしなけりゃ意味がない。そして今回、そのスイングの根底を支えているのがクリスチャン・マクブライド(b)、ルイス・ナッシュ(ds)、そしてアレンジも担当しているアラン・ブロードベント(p)という、当代きってのリズム・セクションである。フリューゲルホーンは何とあのロイ・ハーグローヴだ。これはもうバリバリのジャズではないか!私ははやる心を抑えてトレイにディスクをセットした。
私はCDを聴く時、大抵は1曲目からではなく知っている曲、それも好きな曲から聴く。この盤もまず⑦「ブルー・プレリュード」の選曲ボタンを押した。哀愁のスタンダード・ナンバーとしては五指に入る名曲だ。イントロからいきなりクリスチャン・マクブライドのベースがブンブン唸る。太い指がまるで阿修羅のようにベースに絡みついていく様が目に見えるようだ。やがて “Let me cry, let me sigh...” とリンロンのヴォーカルが入り、ワン・コーラス歌った後、スルスルとブラッシュが滑り込んできてピアノが寄り添う...この一瞬のゾクゾク感がたまらない(≧▽≦) リンロンのリズムへの乗り方も完全にジャズ・ヴォーカルのそれだ。とても58歳とは思えない張りのある艶やかな歌声も相変わらず健在で、大好きな曲にまた一つ大好きなヴァージョンが加わったのが何よりも嬉しい(^o^)丿
ジュリー・ロンドンの決定的名唱で有名な③「クライ・ミー・ア・リヴァー」では抑制されたヴォーカルの中に細やかな感情を込めてじっくりと歌い切っており、聴き応え十分だ。えも言われぬ哀感を醸し出すセロがエエ仕事しとります。ルイス・ナッシュのブラッシュも相変わらず巧いなぁ...(^.^) コール・ポーターの⑤「ミス・オーティス・リグレッツ」ではセロに加えてヴィオラまでフィーチャーされているが、こっちはドラムレスでやや甘口の演奏に終始しているのが残念(>_<) 甘いスロー・バラッドだからこそナッシュの瀟洒なブラッシュで演奏をキリッと引き締めてほしかった。
⑥「アイ・フォール・イン・ラヴ・トゥー・イージリー」はリンロンにピッタリのバラッドで、情感豊かに迫るリンロン節が全開だ。ロイ・ハーグローヴのよく歌うフリューゲルホーン・ソロも絶品で、叙情味溢れるトラックになっている。古式ゆかしいスイング・リズムとリンロンの歌声が絶妙にマッチした④「ハミン・トゥ・マイセルフ」なんかまるでスイング時代のジャズ・シンガーの歌を聴いているようだ。クラリネット・ソロも彼女の名唱に彩りを添えており、さすがはアルバム・タイトルにもってくるだけのことはある素晴らしいトラックだと思う。スローから入って転調し、スインギーに歌い切る⑩「ゲット・アウト・オブ・タウン」も貫録十分だ。
ピンクを基調としたジャケット(レーベルもピンク色!)に写るリンロンは年齢を感じさせない美しさ。その容姿といい、声量といい、まったく衰える気配がないのが凄い。これは還暦を間近に控えますます元気な歌姫リンロンが作り上げた本格的なジャズ・ヴォーカル・アルバムだ。そういう意味で、ジャズ好きのリンロン・マニアとしてはこたえられない1枚なのだ。
ハミン・トゥ・マイセルフ
アイ・フォール・イン・ラヴ・トゥー・イージリー
リンロンとジャスと言うとすぐに思い浮かぶのが例のネルソン・リドル3部作だが、あの3枚が甘美なアレンジを施されたウィズ・ストリングス物だったのに対し、このアルバムは小編成のジャズ・コンボを従えた本格的なジャズ・アルバムだ。私もあの3枚は大好きだが、ウィズ・ストリングス物というのはたま~に聴くからエエのであって、四六時中あんなのばっかり聴いてたら頭がボケてしまう(笑) やっぱりジャズはスイングしなけりゃ意味がない。そして今回、そのスイングの根底を支えているのがクリスチャン・マクブライド(b)、ルイス・ナッシュ(ds)、そしてアレンジも担当しているアラン・ブロードベント(p)という、当代きってのリズム・セクションである。フリューゲルホーンは何とあのロイ・ハーグローヴだ。これはもうバリバリのジャズではないか!私ははやる心を抑えてトレイにディスクをセットした。
私はCDを聴く時、大抵は1曲目からではなく知っている曲、それも好きな曲から聴く。この盤もまず⑦「ブルー・プレリュード」の選曲ボタンを押した。哀愁のスタンダード・ナンバーとしては五指に入る名曲だ。イントロからいきなりクリスチャン・マクブライドのベースがブンブン唸る。太い指がまるで阿修羅のようにベースに絡みついていく様が目に見えるようだ。やがて “Let me cry, let me sigh...” とリンロンのヴォーカルが入り、ワン・コーラス歌った後、スルスルとブラッシュが滑り込んできてピアノが寄り添う...この一瞬のゾクゾク感がたまらない(≧▽≦) リンロンのリズムへの乗り方も完全にジャズ・ヴォーカルのそれだ。とても58歳とは思えない張りのある艶やかな歌声も相変わらず健在で、大好きな曲にまた一つ大好きなヴァージョンが加わったのが何よりも嬉しい(^o^)丿
ジュリー・ロンドンの決定的名唱で有名な③「クライ・ミー・ア・リヴァー」では抑制されたヴォーカルの中に細やかな感情を込めてじっくりと歌い切っており、聴き応え十分だ。えも言われぬ哀感を醸し出すセロがエエ仕事しとります。ルイス・ナッシュのブラッシュも相変わらず巧いなぁ...(^.^) コール・ポーターの⑤「ミス・オーティス・リグレッツ」ではセロに加えてヴィオラまでフィーチャーされているが、こっちはドラムレスでやや甘口の演奏に終始しているのが残念(>_<) 甘いスロー・バラッドだからこそナッシュの瀟洒なブラッシュで演奏をキリッと引き締めてほしかった。
⑥「アイ・フォール・イン・ラヴ・トゥー・イージリー」はリンロンにピッタリのバラッドで、情感豊かに迫るリンロン節が全開だ。ロイ・ハーグローヴのよく歌うフリューゲルホーン・ソロも絶品で、叙情味溢れるトラックになっている。古式ゆかしいスイング・リズムとリンロンの歌声が絶妙にマッチした④「ハミン・トゥ・マイセルフ」なんかまるでスイング時代のジャズ・シンガーの歌を聴いているようだ。クラリネット・ソロも彼女の名唱に彩りを添えており、さすがはアルバム・タイトルにもってくるだけのことはある素晴らしいトラックだと思う。スローから入って転調し、スインギーに歌い切る⑩「ゲット・アウト・オブ・タウン」も貫録十分だ。
ピンクを基調としたジャケット(レーベルもピンク色!)に写るリンロンは年齢を感じさせない美しさ。その容姿といい、声量といい、まったく衰える気配がないのが凄い。これは還暦を間近に控えますます元気な歌姫リンロンが作り上げた本格的なジャズ・ヴォーカル・アルバムだ。そういう意味で、ジャズ好きのリンロン・マニアとしてはこたえられない1枚なのだ。
ハミン・トゥ・マイセルフ
アイ・フォール・イン・ラヴ・トゥー・イージリー