shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

星影の小径 / ちあきなおみ

2010-02-05 | 昭和歌謡
 2010年のマイブーム第1号はちあきなおみさんである。その勢いは2月に入っても止まらない。私にちあきさんを教えてくれた恩人の KG ちゃんにお礼として自家製コンピ CD-R 「昭和歌謡を唄う」、「名曲を唄う」の2枚を進呈したらめちゃくちゃ感激されてしまった。その翌日、満面の笑みを浮かべて “コレ聴きながら寝たら最高やわ!” というので早速自分でも試してみるとこれがもうタマラン心地良さ(^.^) ちあきさんの歌声は入眠剤としても効果テキメンだ。眠れない夜はぜひお試しあれ。
 更に KG ちゃんが言うには “ツタヤで買った iPodのパチモン(笑)用に買い替えたヘッドフォンで聴いたらめっちゃエエ音入っててん!もうパラダイスやわ。 shiotchも試してみ(^o^)丿” とのこと。恥ずかしながら私が使っていたのは10年以上前のウォークマンに付いていたスカみたいなオープンイヤー型イヤフォンだったので、パソコンで音楽を聴く機会が増えた私はアマゾンでちゃんとしたインナーイヤー型ヘッドホンを買って聴いてみた。おぉ、確かに全然違うわ(≧▽≦) 密閉型みたいなモンやから外部の音をほぼ完全にシャットアウトしで細かい音までしっかり聞こえるし、低音の量感も段違い。コレはホンマにエエ買い物をした。もう KG ちゃんには足を向けて寝れまへん。
 ということで今日はコロムビアか、ビクターか、はたまたテイチクか、どのちあきさんを聴いて寝ようかなぁと贅沢に悩む日々なのだが、十数枚買った彼女の CDの中で1枚だけ愛憎相半ばするというか、作品ごとの出来不出来の落差が激しすぎてアルバム単体としては聴く気になれない摩訶不思議な盤があった。それがこの「星影の小径」である。
 いきなりとんでもない紹介の仕方になってしまったが、選曲は戦前戦後の流行歌でどれも名曲ばかりで文句ナシだし、ちあきさんの歌唱が悪いワケがない。むしろ絶好調と言っていいかもしれないぐらいだ。しかも絶世の名唱「星影の小径」まで入っている。一体何が不満やねん、と言われそうだが、問題なのはすべてを台無しにしてしまう奇妙奇天烈なアレンジだ。特にムーンライダーズの武川某による③「港が見える丘」はアヴァンギャルドを通り越してキモイとしか言いようのないヒドイもの。私はこれまで様々なジャンルの数えきれないくらいの楽曲を聴いてきたが、吐き気を覚えるぐらい気色悪い思いをしたのは音楽仲間の先輩から無理やり聴かされたフリー・ジャズとコレぐらいのものだ。特に左チャンネルから聞こえ続ける “アウ~” という(恐らくアレンジャーの)キモイ声には虫唾が走る。こんなん聴いてたらブツブツ出るわ(>_<) ⑥「ハワイの夜」もこのオッサンの“ハァ~”という気持ち悪い溜め息やガチャガチャとうるさい楽器群がウザイことこの上ない(>_<) とにかくこのアホバカ・アレンジは万死に値するぐらいヒドイもので、ちあきさんの歌声が拷問に耐えているように響く。
 ③以外にも、このアルバムには奇天烈アレンジの曲が目立つ。例えば②「雨に咲く花」なんかも相当酷い。③が “アウ~” なら②は水滴が落ちる “ポヨン♪” という音が始めから終わりまで鳴り続けてちあきさんの歌声の邪魔をする。ナメてんのか!こっちは倉田某という別のアレンジャーなのだが、要するに自己満足のの押し付けであり、リスナーのことなど全く眼中にないようだ。こんな無能なアレンジャーを起用してプロデューサーは一体何がしたかったのだろう?名曲を破壊してまわってそんなに楽しいのだろうか?
 あんまりネガティヴなことばかり書いていると私の品性が疑われる(←もう遅いって...)ので、好きなトラックのことを書こう。全9曲中心底エエなぁ...と思えるのは①と④。どちらも出しゃばらない素直なアレンジだ。ちあきさんの歌唱が素晴らしいだけに、全曲こんな誠実な姿勢でアレンジされていたら大傑作に仕上がっただろうと思うと返す返すも残念でならない。特にアルバム・タイトル曲(←元々は③がタイトルだったがCM人気に便乗して①に変更され、最近また③に戻された...)の①「星影の小径」の多重コーラスの素晴らしさは鳥肌モノ。コレに関しては前にも書いたが、何度書いても書き足りないぐらい圧倒的に、超越的に、芸術的に素晴らしい、日本音楽史上屈指の名曲名唱だ!!! ④「上海帰りのリル」もめっちゃエエ感じ(^o^)丿 元々曲が良いのでアレンジさえ控え目ならばこの曲のように放っておいても名演が生まれるのだ。それにしてもちあきさんの表現力は凄まじい。もはや歌が上手いとか、そういうレベルではない。まさに心を震わす歌声だ。自分の中ではあの美空ひばりすら超えた孤高の存在になっている。
 岡晴夫が昭和21年にヒットさせた⑤「青春のパラダイス」の過激なカヴァーは賛否両論が分かれるところだろう。強烈なデジタル・ビートがビシバシ飛び交うこのサウンド、どっかで聞いたことあるなぁ...と思ったらジャム&ルイスがジャネット・ジャクソンの「コントロール」でやってた音作りだった(笑) 最初は “何じゃいコレは?” と思ったが、慣れてくるとコレが結構面白い。今では①④に次ぐお気に入りのトラックなのだが、穏健派のリスナーにはちょっとキツイかもしれない。
 ということで天使と悪魔が同居しているようなこのアルバム、興味のある方はまずネットで試聴してみるのがいいと思う。「星影...」と「上海...」は他のアルバム(Re-Master Voiceがオススメ!)にも入っているので、ちあきさんのコンプリート・コレクションを目指しているのでなければレンタルで十分だ。全曲「星影...」のイメージで購入すると、ひょっとすると盤をブチ割りたくなるかもしれない。

上海帰りのリル/ちあきなおみ


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