shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ブルー・プレリュード / モニカ・ゼタールンド

2010-02-16 | Standard Songs
 私は哀愁を感じさせるマイナー調のメロディーを持った曲に目がない。「ディア・オールド・ストックホルム」や「ゴールデン・イヤリングス」など、ジャズのスタンダード・ナンバーの中にはそのような哀調曲ゾーンがあり、アルバム中にその曲が入っているだけで買ってしまう。そんな哀調愛聴曲(?)の一つがこの「ブルー・プレリュード」である。
 この曲は有名なスタンダード・ソング「グッドバイ」の作者ゴードン・ジェンキンスが1932年に作曲した古い歌モノで、知名度が低いせいかあまり取り上げられることのない “知る人ぞ知る” 隠れ名曲。歌詞の内容は “愛は哀しみへの前奏曲” というブルーなムードに満ちた歌で、ブルージーなメロディー・ラインに涙ちょちょぎれる。この曲とのファースト・コンタクトはちょうどジャズを聴き始めた頃で、スウェーデンの№1ジャズ・シンガー、モニカ・ゼタールンドの歌うヴァージョンがラジオから流れてきたのを聴いて一目惚れならぬ一聴惚れしてしまった。しかし色々調べてみるとこの曲の入っているモニカのCDは既に廃盤になっておりどこを探しても見つからず凹んでいたが、数年後に高田馬場のディスク・ファンで1,000円で見つけ、大コーフンしたのを今でもよく覚えている。
 先日ちあきさんの「リサイタル」で偶然この曲の日本語ヴァージョンと邂逅した時は本当に驚いたが、よくよく考えてみれば下に挙げたシンガーはみな大好きな人ばかり。歌声が好きな歌手とは何故かその選曲の趣味までバッチリ合うというのが面白い。ということで今日は哀愁の名曲「ブルー・プレリュード」5連発です;

①Peggy Lee
 この曲が入ったアルバム「ビューティ・アンド・ザ・ビースト」は1959年のリリース当時はライヴ音源ということになっていたが、後になって実はスタジオ録音に拍手を被せたものだということが判明したいわくつきの盤。しかし名唱であることに変わりはない。ジョージ・シアリング・クインテットの瀟洒な演奏をバックにミディアム・テンポで淡々と歌いきるペギー・リーの何と粋なことか!
Peggy Lee - Blue Prelude


②Monica Zetterlund
 「ワルツ・フォー・デビィ」をモニカのオモテ名盤とすれば、この曲が入った「メイク・マイン・スウェディッシュ・スタイル」はまさに彼女の裏名盤。ビッグバンド系よりもスモール・コンボ系のジャズ・ヴォーカルが好きな私にとって座右の1枚と言えるほど気に入っている。クリスプなピアノトリオをバックにブルージーに迫るモニカがたまらなくカッコイイのだ(≧▽≦)
モニカ・ゼタールンド


③ちあきなおみ
 ちあきさんはジャズを歌おうがシャンソンを歌おうが、単に旋律をなぞって歌うのではなく、曲の髄を引き出して他の誰にも真似できないような “ちあき・わーるど” の中で表現し、まるで彼女のオリジナル曲であるかのような錯覚を抱かせるところが凄い。この「裏窓」もすぐには「ブルー・プレリュード」だとは気付かなかったほど “ちあきなおみの歌” に昇華されている。バックのヴィブラフォンが雰囲気抜群だ。
裏窓


④Zoot Sims
 スローテンポの女性ヴォーカルが主流のこの曲だが、意表をついたアップテンポで成功したのがコレ。70年代ズート・シムズの中では一二を争う名演だ。いつもは辛気臭いピアノを弾くジミー・ロウルズがここでは水を得た魚のようにスイングし、それに触発されたのかズートも負けずに歌心溢れるソロを連発する。インストの「ブルー・プレリュード」の白眉だろう。
ズートシムズ


⑤Linda Ronstadt
 まずはジャケットのリンロンに注目!とても58歳には見えない、まさにウィッチー・ウーマンの面目躍如たる美しさである。2004年にリリースされた「ハミン・トゥ・マイセルフ」はジャズのスタンダード集だが、一連のネルソン・リドル・オーケストラとの共演モノとは違い、本格的なジャズ・コンボをバックに歌っているのが嬉しい。そしてその凛とした歌声がまたコワイぐらいにキマッているのだから恐れ入る。大好きなリンロンが大好きな「ブルー・プレリュード」を歌う... これ以上何を望めというのだろう?
ブルー・プレリュード
コメント (2)