shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Singles / My Little Lover

2009-07-04 | J-Rock/Pop
 洋楽邦楽を問わず、最近のヒット曲には心にグッとくるものがない。邦楽はサザンが活動を休止してしまった今、心して聴くべきはB'zと竹内まりやだけになってしまった。洋楽に至ってはもう何もない。まぁ自分の感覚が今という時代に合わないだけなのだろうが、それにしても薄味というか、心に残るメロディーを持った曲が皆無に等しい。要するにどれを聴いてもみな同じに聞こえてしまうのだ。それに比べて60's~80'sの洋楽ポップスや昭和歌謡は一度聴いたら忘れられないようなメロディーの宝庫で、何十年経っても楽しく聴けるエバーグリーンな魅力を備えていた。今から考えると実に魅力的なメロディーやリズムに満ち溢れた素晴らしい時代にチャートを追いかけながら日々を過ごせて本当にラッキーだったと思う。
 このマイ・リトル・ラヴァーとの出会いはもう十年以上も前になるが、CS放送の音楽番組をつけっ放しにしながら何か他の事をしていた時のこと。判で押したように同じようなリズムやコード進行の曲が続く中、たまたま③「Hello Again ~昔からある場所~」がかかった。そのどこかで聞いたような懐かしさ溢れるサウンドに耳が吸い付き、一瞬にして心を奪われてしまったのだ。生粋のビートルズ・ファンである私にとって、ビートルズの新曲が望めない今、ビートルズの遺伝子を受け継いだミュージシャン達の生み出すビートリィなサウンドには抗しがたいモノがあり、この曲もまるでビートルズの「フリー・アズ・ア・バード」を初めて聴いた時と同じようなノスタルジックな感覚を呼び覚ましてくれた。鬼才プロデューサー小林武史の紡ぎ出すキャッチーなメロディー、ツボを心得たアレンジ、そして細部にまでマニアックな拘りを見せるサウンド・プロダクションの素晴らしさは言うまでもないが、この曲の持つ甘酸っぱい雰囲気を生んでいるのは紛れもなくリード・ヴォーカルakkoの歌声である。歌の上手さとか、そういった物差しでは測れない、ついつい惹き込まれてしまう不思議な魅力を湛えたヴォーカルだ。彼女が1人称で歌う “僕” がこの曲のテーマである少年性を見事に表出しており、誰の胸にもある懐かしい少年時代への憧憬を掻き立てる。とにかくこれはJ-Popsにもこんな素晴らしい楽曲があることを私に教えてくれた、メロディー良し、歌良し、演奏良しと三拍子揃った90年代J-Pops屈指の大名曲だ。
 その後もマイラバは、マイケル・ジャクソンの「ブラック・オア・ホワイト」みたいなリフを始めとする90's風デジタル・ビートでビートルズの「フライング」をコーティングしたようなサウンドの中に akkoの柔らかい歌声が溶け込んで生み出される不思議なグルーヴに心魅かれる④「ALICE」、ストロベリー・フィールズを彷徨うアンニュイなakkoの歌声と中~後期ビートルズの音世界を徹底的に再現したサウンドの絡みが郷愁を誘う⑤「NOW AND THEN ~失われた時を求めて~」、マーサ・ディヴィス率いるモーテルズの「サドンリー・ラスト・サマー」を想わせるような80'sポップ・エッセンスの濃縮還元サウンドがたまらない⑥「YES ~free flower~」と、クオリティーの高いシングルを連発、そのサウンドの隅々にまで小林武史の天才が如何なく発揮されている。
 ⑦「ANIMAL LIFE」は私が③と並んで気に入っているキラー・チューンで、彼らの言葉を借りれば “頭ん中が真っ白になるぐらいの分厚い爆音ギターによるグラム・ロック”。その “ギター版ウォール・オブ・サウンド” と言ってもいいサウンドにakkoの猫なで声がバッチリ合っていてマイラバの新しい魅力が全開だ。エンディングはビートルズ「ヘルプ」への愛だろう。尚、この曲のPVはクローン化したakkoが4人のバンドになるのだが、ロバート・パーマー「恋におぼれて」のパロディーみたいで面白かった。
 ブラスを大きくフィーチャーし、浅草サンバ・カーニバルに和太鼓が乱入して無法地帯と化したインターナショナル盆踊り大会(?)のようなノリで爆裂ドラムがガンガン盛り上げる骨太ポップ・チューン⑧「Shuffle」は生音とデジタルの巧妙な合わせ技。小林武史のポップ・センスここに極まれりといえる名曲名演だ。ダリル・ホール「ドリームタイム」とZARD「負けないで」を示談にしてマイラバが美味しいとこを全部持って行ったような⑨「空の下で」、原点回帰的なセルフ・カヴァー・モードで久々のビートリィなサウンドに涙ちょちょぎれる⑩「DESTINY」と、名曲名演のアメアラレとはこのことだ。
 このベスト・アルバム「シングルス」はそんなマイラバ全盛期のヒット曲満載の超お買い得盤(^o^)丿 現在は小林もグループを離れakkoのソロ・プロジェクトとして活動しているようだが、是非とも又ビートルズDNAを受け継いだプロデューサーと組んでその唯一無比の歌声で楽しませてほしいものだ。

Hello, Again ~昔からある場所~ My Little Lover