shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

涙の工務店 / 浪花可憐

2009-07-16 | Cover Songs
 今の時代、レコードなどというモノは完全に趣味の範疇に属するもので、音楽に拘りのない一般ピープルからすれば全く無価値な存在である。私も「このデジタル時代にレコードに何千円も払うなんてアホちゃう?」と面と向かって言われたことがある。まぁ何千円どころか何万円も払ってレコードを買いまくった私なんかその人からすれば大アホ(笑)なのだろうが、要するにそんな骨董品みたいな物を一部のコレクターが大枚叩いて買い求める、そういう特殊な世界なのだ。だから中古レコード価格の相場はそういったコレクター市場における “需要と供給の原理” で決まると言っていい。この場合の需要というのはその盤の人気度を指し、供給というのは稀少性を指す。レコードの場合は更にここにコンディションという重要なファクターが絡んでくるのだが、一昔前まではこれら3要素で価格相場が大体決まっており、中古レコード店の間でも暗黙の相場みたいなものが存在していたように思う。
 しかし21世紀に入ってインターネットが普及し、誰もがネットオークションを利用して販売価格を自由に設定出来るようになるともう中古盤の相場なんてあってないようなもので、呆れるようなぼったくり価格を設定するセラーが現れたり、逆に金の力にモノを言わせて落札するビダーが出てきたりで、もうムチャクチャである。昨日取り上げたソニー・クラークの「クール・ストラッティン」のオリジナルLPなんか先月のヤフオク落札価格が25万円!!! CDなら1,200円なのにね...(>_<) 私はラッキーなことにそのような無秩序状態に突入する直前に欲しい盤はほとんど手に入れてしまっていたのでよかったが、一歩間違えればオリジナル盤を諦めるか、それとも底無しの泥沼にハマリ込むかの二者択一を迫られていたことだろう。
 CDの場合、LPと違って歴史が浅いせいもあり、オリジナル盤云々という発想もなければコンディションの大差もない(少々の傷は研磨したらしまいやもんね...)ので価格が高騰することは滅多にないが、ヤフオクやアマゾン・マーケットプレイスを見ていると時々とんでもない値段が付いているものがある。80~90年代に数千枚プレスされ、すぐに廃盤になってそれっきり再発ナシという、いわゆる入手困難盤である。そのような盤は普通知名度が低く(だからプレス枚数が少ない...)、ほとんど売れなかった(だからすぐに廃盤になった...)ものが殆どなので需要も低いはずなのだが、何らかのきっかけで人気が出ると数少ないブツの争奪戦が始まってしまう。
 この「涙の工務店 / 浪花可憐」も “知る人ぞ知る” 的存在の超マイナー盤だった。96年発売でプレス枚数は約5,600枚、ほとんど売れずに在庫が残っていたようだ。それが2004年になって「トリビアの泉」で “カーペンターズの関西弁バージョンのCDがある” と取り上げられ、一夜にして完売してしまったらしい。トリビアという人気番組による宣伝効果、日本人の大好きなカーペンターズという素材、そんな由緒正しいカーペンターズをよりにもよって関西弁で歌うという斬新な発想(というかバカバカしさ...)、そしてMAXI SINGLE というお手頃価格も相まって一夜にして完売となったのだろう。実は私もこの番組を見てすぐにアマゾンで注文したおバカなミーハーの一人(笑)なのだが、翌日見ると在庫切れになっており、しかもアマゾンCD部門の売り上げで1位になっていた。その後何かの機会でたまたまこの盤のマーケットプレイスでの値段を見てビックリ... 何とレンタル落ちの分際で48,000円という恐るべきプレミア価格。アホや...(>_<)
 内容は①「世界のてっぺんで (Top Of The World)」、②「好きやった あんた (Superstar)」、③「郵便屋の兄ちゃん (Please Mr.Postman)」、④「あのエエ頃 もっかい (Yesterday Once More)」の全4曲。発想の原点は直訳ロックで有名な王様の「深紫伝説」あたりだろうと思うが、原詞の意味を汲み取った上で関西弁に訳しているのもワザありだし、私が何よりも感心したのはその関西弁を実に巧くメロディーに乗せているところ。特に②の出だしで “Long ago ~♪” をいきなり “むっちゃ前~♪” とやってるのにはワロタ(^o^)丿 浪花可憐という匿名性の高いこの女性ヴォーカリストは特に声がカレンに似ているというわけではないが、見事な訳詞のおかげもあってか、替え歌感覚で気持ち良さそうに歌っており、それがこの盤を更に親しみやすいものにしている。
 トリビアでは③を除く3曲が流れたが、私が一番気に入ってるのはその③で、バック・コーラスをも含めて細部に至るまで丁寧に作り込まれたサウンド・プロダクションが実にエエ感じ。ビートルズをパロッた王様の「カブトムシ外伝」ヴァージョンに迫る見事なカーペンターズ・パロディーだ。
 デビュー・シングル「涙の乗車券」にカーペンター(大工さん)を引っ掛けた「工務店」というのも楽しいし、浪花の可憐(カレン)という当て字のセンスも悪くない。もしも中古店で安く売られているのを見た、聞いた、買ったということになればそれなりに盛り上がれるというものだろう。しかし血眼になって探し回ったりネットオークションで大枚叩いて買うようなものでは決してないと思う。

トリビア - カーペンターズの関西弁バージョンのCDがある
コメント (8)