shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Rock 'n' Roll / John Lennon

2009-02-21 | John Lennon
 才能のことを英語で gift という。キリスト教の文化では、天賦の才能は神様からの贈り物ということだろう。では歌手にとっての「才能」とは何だろう?それはヴォイス・トレーニングetcで鍛えることの可能な歌唱力ではなく、先天的に生まれ持った「声」だと思う。星の数ほどいるヴォーカリスト達の中で、そのような「声」を持った天性の歌手といえる人は数えるほどしかいない。一声発すればその場の空気が一変して自分の色に染め上げてしまうような人達だ。
 ジョン・レノンはそんな数少ない“本物の”ヴォーカリストだった。「ツイスト・アンド・シャウト」も、「イット・ウォント・ビー・ロング」も、「マネー」も、「ロックンロール・ミュージック」も、みんなジョンのあの翳りのある太いシャウト・ヴォイスを得て新たな生命が吹き込まれ、生き生きと躍動し始めるのだ。ジョンの歌声を聴いた後では他のシンガーのヴァージョンが貧相に聞こえてしまう。ジョン・レノンのカヴァーをするということはベスト・ヴォーカリストと同じ俎上に乗って比較されるだけの覚悟が必要だし、ジョン・レノンによってカヴァーされるということは(それだけでも名誉なことだが...)オリジナルである自分の存在が消し飛ぶ危険性をはらんでいるというわけだ。それほどジョンの「声」の存在感は圧倒的なのである。
 そういう意味において、私にとっては「ジョンの声」+「ノリの良いロックンロール」=「最強」なのだ。だから私が常日頃愛聴しているジョンは、世評の高いソロ初期の「ジョンの魂」や「イマジン」よりも、ラウドなロッケンローが一杯詰まったこの「ロックンロール」なのだ。正直「ジョン・レノン=イマジンでキマリ!」みたいな世間の風潮にはウンザリする。ジョンを「愛と平和の使者」として神棚に祭り上げるのはもう止めてくれ。ビートルズといえば、ジョン・レノンといえば何よりもまずロックンロールではなかったか! 平和運動は他の人間にも出来るが、あんな凄いロックンロールを歌えるのはこの地球上にジョンをおいて他にいない。
 ついついコーフンしてしまったが、この盤には初期ビートルズもレパートリーにしていたような炎のロックンロールが満載なのである。しかも別居中に製作されたこともあってこの盤には私の苦手な「ヨーコの影」が微塵もない。つまり「ジョン&ヨーコの」アルバムではなく唯一の「ジョン・レノンの」アルバムということで、もういいことずくめの1枚なのだ。
 いきなり「ウェ~♪」からロック・シンガーとしてワン&オンリーの存在感を示す①「ビー・バップ・ア・ルーラ」、艶っぽい歌唱でオリジナルのベン・E・キングの存在を完全に消し去った②「スタンド・バイ・ミー」、リトル・リチャードの2曲をメドレーにして豪快に料理した③「リップ・イット・アップ~レディ・テディ」、「カム・トゥゲザー」の出自を自ら示した④「ユー・キャント・キャッチ・ミー」、まるで自分の曲であるかのように生き生きとした歌いっぷりでがむしゃらに突っ走る⑧「スリッピン・アンド・スライディン」、バディー・ホリーのしゃっくり唱法をそのまま真似てみせた⑨「ペギー・スー」、強烈なグルーヴ感に圧倒される⑪「ボニー・モロニー」、3人のビートルたちへのメッセージに涙ちょちょぎれる⑰「ジャスト・ビコーズ」...どこを切っても会心のロックンロールが飛び出してくる。
 ジャケットに映るのはハンブルグのスター・クラブ前でポーズを取る若き日のジョン・レノン。「ジョンの魂」は今も昔も「ロックンロール」なのである。

John Lennon Slippin' And Slidin' 1975 The Hit Factory NYC

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2 コメント

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スタンド・バイ・ミー (権ゾウ)
2009-02-21 03:06:52
shiotchさん、・・>艶っぽい歌唱でオリジナルのベン・E・キングの存在を完全に消し去った②「スタンド・バイ・ミー」・・・、< これ激しく賛成!!
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ジョンの「スタンド・バイ・ミー」 (shiotch7)
2009-02-21 14:43:25
権ゾウさん、ご賛同いただきありがとうございます♪

この曲、ジョンが歌うことによって
「無数のオールディーズ曲のうちの一つ」から
「永久不変のビートル・スタンダード」へと
生まれ変わったように思います。
新たに「ジョン・レノンの曲」として。
それにしてもこのジョンの歌声...
たまりませんねぇ!
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