shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

You Are My Lucky Star / Petula Clark

2009-02-17 | Oldies (50's & 60's)
 ぺトゥラ・クラークというと日本では「恋のダウンタウン」のイメージが強い。いわずと知れた65年の全米№1ヒットである。確かに悪い曲ではないが、私に言わせればアレはあくまで平均点のぺトゥラ・クラークである。同時期の作品なら「ドント・スリープ・イン・ザ・サブウェイ」の方が優れていると思うし、「抱きしめたい」や「恋を抱きしめよう」「ヒア・ゼア・アンド・エヴリウェア」といった秀逸なビートルズ・カヴァーをはじめ、他にももっと凄いのはいくらでもゴロゴロしている。しかし残念ながらそれらは日本ではほとんど知られていない。
 彼女のキャリアは案外古くてレコード・デビューは49年、何と78回転SP盤だった。彼女が世界的にヒットを飛ばしてブレイクするのはプロデューサーにトニー・ハッチを迎え、ワーナー・ブラザーズに移籍した64年以降のことだが、私が好きなのはジャズのスタンダードを積極的に取り上げていた50年代後半のニクサ・レーベル時代、そしてフランス語でリトル・ペギー・マーチやニール・セダカ、ビートルズetc のカヴァーを吹きこんでいた60年代初めのヴォーグ・レーベル時代なのだ。そんな中で私がベストと信ずるのが30~40年代のハリウッド映画の主題歌を歌ったファースト・アルバム「ユー・アー・マイ・ラッキー・スター」である。この盤のことはジャズ批評77号の「女性シンガー大百科」で坂田一生氏が絶賛されていたのを見て初めて知った。それまでは私も「ぺトゥラ=ダウンタウン」と思い込んでいたので正直???だったが、「若き日のドリス・デイやジョニー・ソマーズなどにも通ずるそのオチャメでセンチな隣の女の子といった感じのチャーミングな歌声」なんて言われた日にゃあ無関心でいられるわけがない。趣味嗜好が自分と似通っている氏の言葉を信じてUSアマゾンで買ってみたら、コレが大正解\(^o^)/ 何という瑞々しい歌声だろう!特に気に入ったのがスモール・コンボをバックにしたノリノリの③「ジング・ウェント・ザ・ストリング・オブ・マイ・ハート」や⑩「イッツ・ザ・ナチュラル・シング・トゥ・ドゥ」で、瀟洒なブラッシュを中心にピアノ、ヴァイブ、ギターが生み出す軽快なサウンドに乗って弾けるようにスイングするペトゥラが最高だ。ビッグ・バンドをバックに気持ち良さそうにスイングする⑧「スラミング・オン・パーク・アヴェニュー」やタイトル曲⑫「ユー・アー・マイ・ラッキー・スター」は40年代のバンド・シンガーを彷彿とさせるような貫禄で見事なグルーヴ感を醸し出していてウキウキした気分にさせてくれる。ストリングス・オーケストラをバックに切々と歌うスロー・バラッドでは②「ソニー・ボーイ」や⑨「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」etcのソフト&メロウな感覚、④「アローン」や「グッドナイト・マイ・ラヴ」で聴かせるしっとり感と、イギリスのトップ女性ヴォーカリストとしての実力を遺憾なく発揮している。それと、C5 Records の復刻CDには⑤「アイ・ヤイ・ヤイ・ヤイ・ヤイ」の別テイク⑬がボーナス・トラックとして入っており、そちらの方が遥かに出来が良いという坂田氏のご指摘に私も激しく同意したい。一般大衆向けによりアップテンポなアレンジに変えて再録音したのだろうか?まぁ何にせよ、このようなテイク違いを聴き比べて楽しめるというのもこのCDのオイシイところ。女性ヴォーカル・ファンはあるうちにゲットしましょう。

Petula Clark - don't sleep in the subway