shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Glad All Over Again / Dave Clark Five

2009-02-01 | Oldies (50's & 60's)
 今から十数年前に東京へジャズのレコード買い付けに出かけた時のこと、吉祥寺の「ディスク・オーツカ」でエサ箱を漁っていると突然ラウドで骨太なドラムの乱打が聞こえてきた。おぉ、これはもしや... と思ってレジの NOW PLAYING を見るとそこにはこの「グラッド・オール・オーバー・アゲイン」のCDが...(゜o゜) もういてもたってもいられずに「こ、これ下さいッ!」... CD1枚買うのに何をコーフンしてんねん、とレジの兄ちゃんに怪訝そうな顔をされたのを覚えている。当時の私はまだアマゾンもHMVオンラインも知らずに足を使って欲しい盤を探す原始的な猟盤スタイルで、しかもデイヴ・クラーク・ファイヴは版権の問題で復刻CDが出回っておらずFMでエアチェックした数曲のテープ音源で我慢していたので、これは本当に嬉しかった。帰りの新幹線の中で早く聴きたくてウズウズしながらCD解説を読み耽ったっけ。
 彼らはビートルズが巻き起こしたいわゆる「ブリティッシュ・インヴェイジョン」の波に乗ってブレイクしたバンドで、当時のブリティッシュ・ビート・グループとしてはサックスやオルガンを含む編成が非常にユニークだった。彼らの魅力は一にも二にもそのごっついサウンドにあり、細かいテクニック云々よりもとにかく力強いビートとノリを重視し、パワーと勢いで押し切ってしまう潔い姿勢はロックンロールそのもので、巨大な音の塊りが押し寄せてくるその様はまるでラオウの天将奔烈、北斗剛掌波のような凄まじさ。ベースに加えてワイルドなキック・ドラムとサックスが一致団結してサウンドの低音部分に厚みを与え、しっかりと腰の座ったサウンドを構築しているのだからもうコワイモノなしだ。①「グラッド・オール・オーバー」のイントロの衝撃、②「ドゥー・ユー・ラヴ・ミー」のはちきれんばかりのエネルギー、③「ビッツ&ピーセズ」のスネア連打が生み出すプリミティヴなパワー、④「キャント・ユー・シー・ザット・シーズ・マイン」のスピード感溢れるグルーヴィーなノリ、⑤「ドント・レット・ミー・ダウン」(ビートルズのとは同名異曲)の疾走感と、怒涛の攻撃とはまさにこのことだ。そしてあのキッスも嬉々としてカヴァーしていた⑦「エニウェイ・ユー・ウォント・イット」... これこそまさに究極のDC5サウンドではないか。この音の厚み、逆巻くエコー... まるでフィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドをロックンロール・スタイルのコンボ演奏で何倍にもパワーアップして再現したかのようなサウンド・プロダクションだ。更に指パッチンが楽しい⑧「キャッチ・アス・イフ・ユー・キャン」、レノン=マッカートニー・レベルの名曲⑩「ビコーズ」、ポップな作風で彼ら唯一の全米№1になった⑫「オーバー・アンド・オーバー」と、名曲名演の波状攻撃はまだまだ続く。⑰「トライ・トゥー・ハード」は初期のヒット曲群のノリはそのままに、荒削りだった部分を洗練させたようなめちゃくちゃカッコイイ曲。こういうのを隠れ名曲というのだろう。彼らもホリーズやハーマンズ・ハーミッツと同様にシングル盤中心のバンドだったため60年代後半のニュー・ロックの時代に対応することが出来ず結局70年に解散してしまったが、ステイタス・クォーの「アニヴァーサリー・ワルツ」の元ネタと思われる⑲「グッド・オールド・ロックンロール」、初期のサディスティック・ミカ・バンドを思い起こさせる⑳「ヒア・カムズ・サマー」など、後進のバンドへの影響の大きさがよくわかる。これはラウドなロックンロールを武器に60年代を駆け抜けたデイヴ・クラーク・ファイヴの魅力がギッシリ詰まった躍動感溢れるアルバムだ。

Dave Clark Five - Anyway You Want It (Shindig) 1964